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理系男子の恋心  作者: 鈴木ユウスケ
第1章
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第8話 僕の家で

4月4日

 僕も美沙さんもまだ自宅にいる。この日初めて美沙さんから電話があった。誕生日を聞かれた。明日家に来ないかと誘うと、すぐに「うん、行く」と言ってくれた。


4月5日

 ローカル線の最寄り駅まで迎えに行った。美沙さんの家の最寄り駅から、駅の数でいうとわずか3駅だが、距離にすると7kmぐらいある。女の子が自転車で来るには少し遠い。彼女は、僕に会うとすぐに、「初めてこの駅で降りた」と言った。


 僕が家を出るとき、母さんが僕の部屋へ上がる階段を掃除していた。前もって、今日女の子が遊びに来ると言っておいたからだ。その階段を上がり、僕の部屋へ入る。8畳の部屋には、ピンクのカーペットが敷き詰めてあった。入って右側が全面窓になており、勉強机が窓際に置いてあった。左側にセミダブルのベッドと背の低い本棚、ベッドの奥には箪笥と押入れがあった。中央には小さなガラステーブルが申し訳なさそうに座っていた。


 本棚の上には、コーヒーメーカーとラジカセが並べて置いてあった。ラジカセの再生ボタンを押すと、ボズ・スキャッグスのナンバーが流れだした。お気に入りのアルバム「シルク ディグリーズ」。最初に「ウィ アー オール アローン」が流れるように、美沙さんを迎えに行く前にセットしておいた。


 彼女は僕の机を見つけるや、

「私もこういうの欲しかった」

と、叫んだ。

それは、使うときに天板を引き倒して広げ、使わないときに天板を持ち上げて机に蓋をしてしまう構造の机だった。姉からのおさがりだったが、僕も気に入っていた。


 僕の家の周りには民家がなく、机の横の窓からは保育園が見えた。うちの方が一段高いこともあって、保育園の全体が見渡せた。母さんが運んでくれたお茶を小さなガラステーブルの上に置き、90度の角度になる位置に座った。これから始まる一人暮らしのことは二人にとって最大の関心事だから、いろいろと話をした。当然ふたりとも一人暮らしは初めてだ。僕は料理も何もかも初めてだが、それは美沙さんもほぼ同じだった。受験勉強という錦の御旗の前では、すべての家事は免除されていた。


 山崎が櫻川さんとデートしたことを話したら、美沙さんはなんだか嬉しそうだった。中学からのクラスメイトのチャレンジを称えたかったのかもしれなかった。


 美沙さんは、せっかく家に来たのだから、電話で済むような話ではなく、一緒にいないとできないことをしようと言い出した。しかし、こういう時に使えるアイテムが僕にはなかった。美沙さんは、本棚に並んでいる本に向かって、左から右へと視線を走らせた。星占いの本が気に止まったらしい。

「高広君、星占い好きなの?」

「それ、姉貴に借りた本。好きというわけじゃないけど、自分に関係するところは見たよ。」


「高広君は何座なの?」

「昨日電話で僕の誕生日聞いたよね?さそり座。さそり座のA型だよ。」

「さそり座のA型って、どんな性格なの?」

本を手にとって、さそり座のページを開く。

「ミステリアスな魅力があり、異性の関心を引くが、独占欲が強く、一度裏切った相手は許さない恐ろしさも合わせ持つ、だって」

「本当なの?」

「ミステリアスってのは分からないけど、まあまあ、当たってると思うよ」

「怖い。私、山羊座のB型。山羊座のB型はなんて書いてあるの?」

「熱しやすく冷めやすい。自分の感性で行動するマイペース型。しかし、人から頼られると断れず、その人のために頑張ろうとする、だそうだ。当たってる?」

「だいたい当たってるけど、最後のは違うな」

「普通星占いって、女の子はみんな好きなんじゃないの?」

「私は、全然興味なかったな」

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