踏み出す一歩
当然そんな生活も永遠に続く訳では無い。ルークとシュロスは学校を卒業した後、流れるように寮制の士官学校へ入学。訓練兵として鍛錬を積むこととなった。
「……じゃあ、行ってらっしゃい」
孤児院に残ることになったエラは、寂しさと悲しさと悔しさを一緒くたにして、それをぐちゃぐちゃにしたような面持ちで2人を送り出した。それもそうだ。彼らは今まで3人で暮らしてきて、離れた事などなかったからだ。ましてや、死地に向かう為の訓練をしに行くなど以ての外である。戦場に行く人間をどうして笑顔で送り出すことが出来ようか。
2人も当然それは分かっていたが、エラに要らぬ気苦労をさせたくなかったので、笑顔で手を振って孤児院を出たのだった。
「なんか悪いことしたな」
「エラのことか?」
士官学校へと向かう汽動車の中で、昼御飯の弁当を開きながらルークが口を開くと、シュロスは缶コーヒーを飲みながら聞き返す。
「まあ……。あの調子じゃあ追っかけて来ることはなさそうだけどな」
「そこだけが唯一の救いってトコか。アイツまで戦場みたいな血生臭い場所に行くこたねーわ」
2人はため息を着きながら孤児院の方角を振り返る。既に車窓からその影すらも見えないほどには遠く離れていた。でもさ、とルークは顔を上げる。
「どーせこうなることは決まってただろ? アイツもそれくらいの覚悟はできてたと思いたいな」
「そりゃそーだけどよ。俺としてはまだ心配なわけなんだわ」
「いやまぁ……。それを言われちゃ僕もそうなんだけどな……」
なんとか気を回したルークの一言をシュロスは頭からたたきつぶす。こいつはデリカシーというものはとっくに捨ててきたような男なのである。ルークはまたもため息をつく。
「やめようやめようこんな話。しんみりしてくる」
「しんみりするのは正解だと思うけどな」
「うるせーよ」
2人はその後はなんとなく冗談を言い合いながら弁当を食べた。
さて、ここで2人が向かった士官学校の補足も挟んでおこう。まず、ここで言う士官学校は、それほどまでに厳しい施設ではない。たしかに兵として階級や集団生活というものも存在はするが、テクタニアは年功や縦社会という概念が非常に薄い。逆に魔術の国であるマギリオは、経験則、訓練歴などが全てにおいて物を言うため、年功序列はとても色濃く浸透している。話をテクタニアに戻すと、個人や組織の「実力」そのもので社会を形作った国、というのが、言ってしまえばテクタニアの全てなのである。才能と年を重視するのがマギリオ、実力と努力を重視するのがテクタニアという考え方で問題ない。
要は何が言いたいかと言うと、テクタニアのほとんどの士官学校では「実地において優秀か」のみが判断される。人的資源の少ない国の中で、兵としての人材管理が薄いともとれるが、「無能な働き者」が上に立つことを避けた結果とも言える。合理的といえば合理的である。あるいは、人がいないからこそこのような方式を執る、とも言えるか。こちらもマギリオは逆であり、その人間そのものの血を見ることはあれど、その血を上手く扱えるかはその個人次第である。魔術要素の質が低下した現代では、昔からの経験が力になると考えられているわけなのだ。つまり、年をとった者に無能はほぼいないとする考え方である。それもそれで間違ってはいないだろう。こればかりは国の成因の違いであるからが正しいとは一概には言えないものだ。
そろそろ話を2人に戻そう。
2人の目的はもちろん成績優秀者である。成績優秀者──年によって人数は違うが、それに選ばれた者は入軍時にある程度の地位が確約される。もちろん並大抵の努力で得られる名声ではない。しかし、やるからには目指さなければならない目標として、彼らはこの成績優秀者を設定したのだ。
はーいどうもお久しぶりですー!
いやー、間空きすぎましたね!ごめんね!サボってました!(ド直球)(カス)
これから再発防止に努めますが多分またやらかします!!(宣言)