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いつもと変わらない、すがすがしい朝だ。数十分前に止めたアラームのことを考えながらそう思う。すぐに制服を着替えて、朝食を食べる。両親は出勤時間が早いため、すでに出かけている。
「おはよう……」
急いで靴を履いているときに、弟が起きてきた。今家をでても遅刻ギリギリなのに、さすが私の弟だ。
通学路には、この時間なのに同じ中学校の生徒が多くいた。テスト期間中だというのにこの意識の低さ。同じ学校に通っている身として学習環境に不安を覚える。
大通りの交差点に出ると、道の向こう側で手を振っている生徒がいる。小学校からの幼馴染だ。私と同じ遅刻ギリギリの常連なのになぜか成績は良い。たぶん裏でこそこそ勉強してるに違いない。裏切り者め。手を振り返し、急いで点滅する信号を渡ろうとすると、幼馴染は血相を変えて、私の左側を指さした。
……
あたりは真夜中のように暗い。少なくとも通学路ではない。何かの列に並んでいて、なぜか並ばなければならないということはわかる。わけがわからないが恐怖はなく、いつになく穏やかな気持ちだ。
周りは何も喋らない。少しずつ列は進んでいく。やがて列の先に明るい市役所のようなビルが見えてきた。ここが目的地のようだ。明かりのおかげで並んでいる人の顔も見える。ほとんどが老人でしかも外国人だ。みんな、穏やかな顔でひたすら歩みを進めている。
やがて建物にはいると、中には銀行のようにいくつかの受付窓口がある。事務員は体格のいい大男ばかりだが、赤かったり青かったり顔色が優れない。並んでいた人たちは待合の椅子に座って順番を待っていた。
入り口の機械で整理券を受け取り、自分も空いている席に座る。整理券には数字だけが書かれている。1と0が1、2、3、4……
「おめでとうございます。あなたは1000憶人目のお客様です。」
後ろからの突然の言葉に驚き振り向くと、赤ら顔の事務員が立っていた。
「あなたは今朝交通事故で亡くなられて、こちらの世界中の死者が通る…ええっと、あなたの文化だと……そう、閻魔大王の宮殿に死後の手続きにいらっしゃいました。」
なるほど、私は死んでいたのか。もっと驚くべきなのだろうが、純粋に「そうか」と思うだけだ。そういうことも含めて死んでいるということだろう。ただ、キリがいい番号だからと言って何がめでたいのだろう。
「記念すべきお客様であるあなたには、特典としてなんでも願いをかなえる権利が与えられます。望みのものがなんでも手に入りますよ」
周りの客から優しい拍手が起こった。私は笑みを返す。
「あなたの場合は、ええっと……特に大きな罪は犯していないので、手続きが進めば天国といわれる場所に行き、そこで平穏に過ごす予定となっています。まあ、そんな状況でさらに望みをと言われても答えに窮すると思いますが、なにぶん上司が今朝数字を見て思い付いたイベントなので……まったく、ただでさえ超過勤務も多いのに、その上変な仕事増やして……」
後半の愚痴はさておき、平穏な天国か。確かに今の穏やかな気持ちは心地がいい。たぶん、生きてるうちなら悟りといわれる状態なのかもしれない。この気持ちで見ると、今まで悩んでいたことも自分の中の小さな思い込みに過ぎなかったと気づき少し笑えて来る。最後にこのように笑えるならば、もっと色々挑戦してもよかったかもしれない。ああ、そうか、それなら願いは一つだけだ。
「え、生き返りたいんですか?せっかく天国にいけるのに?まいったな、どういう手続きをすればいいんだろう。すでに体は事故で損傷してるから回復すると整合性が……事故にあう前に時間を巻き戻す?」
狼狽するほど想定外の答えだろうか。誰でもそう答えるように感じるが。ただ、望みを聞かれなければ、生き返りたいと自分から主張することもなかっただろう。それほど、今は満ち足りた穏やかな気持ちなのだ。つまり、生き返りたいと自己主張する死者はそんなにいないのかもしれない。
「あれ、そうするとこのお客様は1000憶人目じゃなくなるのかな?閻魔様なら時間の巻き戻しくらいできそうだけど、その辺の詳しいこと考えずにとりあえずやっちゃうところあるからな……ちょっと、上司に確認してきますので、そこで待っててください。」
男は小走りで事務室に戻っていった。
・・・
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いつもと変わらないすがすがしい朝だ。ただ、アラームが鳴るのはまだ数十分も先だ。いつもなら二度寝としゃれこむところだが、妙に目が冴えてしまっている。しょうがない、少し早めに学校に行って自習でもするか。
服を着替えて、リビングに出る。先に起きていた両親は珍しそうに私の顔を見ながら朝食の準備をしてくれた。
いつもよりかなり早めの時間なのに、通学路は同じ中学校の生徒がちらほらいる。うちの中学は意外と真面目な生徒もいるんだなと感心する。
結局、早めに教室についたものの、すでに友人が何人か来ており、くだらない雑談をしていたら始業の時間になってしまっていた。だが、先生は教室に来ていない。それに、幼馴染のあいつはまだ顔を見せてない。
やがて、遅れてきた教室に入ってきた先生からは、あいつが交通事故にあったことが伝えられた。
……
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いつもと変わらないすがすがしい朝だ。ただ、アラームが鳴るのはまだ数十分も先だ。いつもなら二度寝としゃれこむところだが、妙に目が冴えてしまっている。しょうがない、少し早めに学校に行って自習でもするか。
服を着替えて、リビングに出る。先に起きていた両親は珍しそうに私の顔を見ながら朝食の準備をしてくれた。
いつもよりかなり早めの時間なのに、通学路は同じ中学校の生徒がやたらと多い。うちの中学にこんなにたくさん真面目な生徒いるなんて。自分も真面目に勉強をしなければいけない焦りが出てきた。
大通りの交差点に出ると、道の向こう側でこちらに手を振っている生徒がいる。小学校からの幼馴染だ。いつもは遅刻ギリギリの常連なのに、テスト期間中はこんなに早起きするなんて。成績がいいのも当然だ。この裏切り者め。
早めに着いた教室にはクラスメイトがほぼ勢ぞろいしていた。今まで成績が悪い理由をあまり考えないようにしていたが、自分の努力不足を明確に見せられているようで、すごく焦る。
結局、焦燥感に駆られ、始業前どころか朝のホームルームもそっちのけで自習してたが、職員室からの呼び出しで中断することとなった。
呼び出された理由は母親から職員室に電話が来ていたからだ。そして私は母から弟の事故のことを聞かされた。
……
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いつもと変わらないすがすがしい朝だ。ただ、アラームが鳴るのはまだ数十分も先だ。いつもなら二度寝としゃれこむところだが、妙に目が冴えてしまっている。しょうがない、少し早めに学校に行って自習でもするか。
服を着替えて、リビングに出る。先に起きていた両親は珍しそうに私の顔を見ながら朝食の準備をしてくれた。
「おはよう……」
久々に落ち着いて朝食を食べていると、弟が起きてきた。テスト期間中とは言えこんな時間に起きる奴だったのか?本当に私の弟か?
……
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「おめでとうございます。あなたは1000憶人目のお客様です。」