表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

プールサイド

作者: 津田善哉

 甲高く鳴り響くホイッスルと激しく水面を叩く音にふと気付いた。僕はプールサイドに立っていた。周りを見渡すと且つての級友の面々がプールに向かって声援を飛ばしている。二十五メートルプールを折り返し、五十メートルを泳ぎ切った者がプールサイドへと上がっていく。二十五メートル向こうのプールサイドには女子たちが座ってこちらを見ており、いまは水泳の授業中で、私は列に並んでいる。教師が(名前は思い出せない。)ストップウォッチを片手にホイッスルを吹くと、飛び込み台から一斉に六名が飛び込んだ。僕は前に詰めた。後ろ姿で誰かは分からないが、(顔を見れば誰か分かっただろうか。)前にまだ一名いる。 


 これは夢か、在りし日の記憶として頭の片隅にでも残っていたのだろうか。それともこれは現実で、この日この時に水泳の授業であった過去へとタイムリープしたのか。もしくは、全ては(学校を卒業したこと、今の生活のこと)白昼夢であり、私は水泳の順番待ちをしていたのだろうか。


 背中を小突かれる。周りを見渡すと、いつの間にか前の者は泳ぎ終わっており、スタート台には既に五名が準備していた。緊張しているのかという野次が、大人とも子供とも言えない、変声期特有の不思議な声で聞こえた。向こうで女子たちの笑っている(そしてヒソヒソ話の)顔が見えた。赤面し、急いで飛び込み台へと上がる。心の準備も整わないまま、ホイッスルの音が響いた。僕は飛び込んだ。水面に腹をバシンッと打ち付けた。


 衝撃で息が詰まる。夢であればここで目が醒める頃合いだろう。それともこれがタイムリープのスイッチとなり、もといた時間へと戻るのか。もしくは水底を蹴って、水面から顔を上げると、正面に憐憫の眼差しを見つけ、背後にあの声変わりのしていない、笑い声を聞くのだろうか。


 衝撃で息が詰まった。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ