17:語らい
二日後、ひげづらの男と、浜で再会した。空は相変わらず曇っていたが、雨が降る様子は無い、明るい空だったので、浜に落ちている大きな平べったい石の上に二人で座った。そして、海を見つめながら、言葉を交わす。……
あの音楽は、本当に心を透き通らせてくれる。大きな太陽の輝き、或いは清浄なる風、それともこの海の温かく美しい青だ。大海原の波に身を任せてたゆたう、全てが自由になったような心地の良さがある。何度も、何度も涙を流して、そのたびに生きている実感……心地の良い実感を呼び起こしてくれる。幼い頃の純粋な心だ。このピアノの音に、出会えて本当に……嬉しい
もはや、この場には、再生するための機械や媒体はいらない。波の音が、風の音が、ピアノのメロディにあり、リズムであり、ハーモニーとなった。
自然へと帰る。一個の人間を、動物へと、解体し、組み直されていく。身体の原子一つ一つの活性を感じ取る。そして、涙……滲み出る。悲しいのか? 辛いのか? 本当の自分へと戻っていくはずなのに……どうして涙が出るのか。
歓喜!
喜びの! 安息の!
そう、信ずる