14.後日談
ここは、イルソーレ王子の執務室。
何やらいつもに比べて騒がしいようです。
…失礼しました。
私は爺やこと、専属執事のボルゾイでございます。
「イルソーレ様、先程の事を説明していただきましょうか?
演技とはいえ、やり過ぎです。」
何やらカトリーヌ様は御立腹のようでイルソーレ様に詰め寄っておられます。
しかし何やらイルソーレ様は御満悦とでもいうかのように御機嫌であられるようです。
それでは機嫌を逆撫でするだけではありませんか。
この爺やの教育が行き届いていなかったようです。
「周りが騒いでいるのを見るとまだ半信半疑のようだったのでな。
やるなら徹底的にやらねば。」
何処か愉しげな顔をして、言い訳している王子。
開き直っておられる。
そこまですると嫌われてしまいます。
「確かに王子の婚約者は印象付けられましたが、あそこまで徹底的にやると冗談だと言い切れなくなります。」
「いや、婚約者で押し通すぞ。」
「もう契約は終了しておりますが。」
「別に期限は指定していなかっただろう?」
「う、それを言われると反論できない。」
カトリーヌ様はぐっと言葉に詰まっておられる。
ここまで王子に食いつく方も珍しいですが、贔屓目に見ても見目麗しいイルソーレ様にあのような態度で返すとは。
責任ある立場に置かれずっと聡明に振舞っておられたが、カトリーヌ様に出会われてから子どもの頃の無邪気さが表れるようになられた。
気を張り続けられていて些か心配ではありましたが、ホッと致しました。
「ちょっと何されているんですか。」
「婚約者に相応しい態度をとっているのだが。」
焦った声を出されるカトリーヌ様。
何やら意地悪そうに見上げるイルソーレ様。
物想いにふけっている間にイルソーレ様が手をとって、手の甲に口付けをされているようだ。
「そのすぐにキスする癖をやめてくれませんか。
パーティの時にも頬にキスして。
いい年ですから、やっていいこととやってはいけないこと位分かりますよね。」
「あまりにも美味しそうだったんでな。」
「…私は食べ物ではありません。」
…やることが子どもじみていて嫌がられますぞ。
後でみっちり、女性のエスコートの仕方について指導しなくては。
この爺や、老いぼれてもイルソーレ様に仕えさせて頂きます。
必ずや、イルソーレ様を立派な王にしてみせますぞ。
お読みいただき、ありがとうございます。
登場人物を増やしたくて、王子専属執事を出してみました。