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松井ランド  作者: 針音
3/4

松井ランド その3

前回までのあらすじ。


大人気アトラクションとなった松井ランド。

その人気ゆえに教師にバレるかも…何か対策を考えねば!


松井君「ロッカーに細工すんのめんどいから匂い変えね?」

オーナーの発言により議会は分断の危機だったが、

皆も細工は面倒なのか議会は収束に向かい、

なんとか新しい匂いの生成をするということとなった。


しかし困った中学生。

今さら匂いの質を変えるなんて可能だろうか?

現在の匂いをパラメータにしてみると腐臭10だ。(10がMAX)

最早カビの要素なんてゼロ。


ここからオーナーは「華やかさ」を入れたいと言うのだ。

「華やかさ」ってなんだよ!

ふざけんな馬ヅラ!


しかしオーナーの意志は固いようだ。

とは言うものの「華やかさ」とは何なのだろうか?

世界一大きい花と言われるラフレシアとスマトラオオコンニャクも、酷い匂いを放つと言う。

その匂いから「死体花」と呼ばれる程だ。

しかしオーナーは見た目の「華やかさ」ではないと言う。

この馬ヅラ、草食のくせに人を食ったような態度だ。


頭を抱える首脳陣にオーナーが動いた。

「私がやる」と…


彼は踵を返し教室を後にした。

戻ってきた彼の持っていたものは洗剤だった。


「これで中和をする」


そう言うと倉庫から持ち出したであろう様々な洗剤を投入していったのだ。

それにしてもこの馬ヅラ、ノリノリである。


よく見ると洗剤じゃない怪しい瓶もある。

明らかに理科室から持ってきた瓶だ。

しかも激酸性。

どこが中和なんだ。馬ヅラ。

やっぱりコイツに付いてきたのが間違いだった。


ここで理解した。

コイツはこれがやりたかっただけなのだと。




そうして生まれたのは腐臭8薬品3よくわからないもの5の給食だったモノだった。

匂いはなぜか前より強烈になった。

いろんなモノが混ざりに混ざって科学変化を起こしたかもしれない。

ヘタしたら匂いを嗅ぐ行為すら危険かもしれない。

どこが減速してんだ。


「我々はとんでもないモノを創り出してしまった」


普段なら、「なぁに教授、全てはこれからですよ」と返している私も同意だった。

これはヤバすぎる。


しかし松井ランドはこの日から莫大な集客数を記録する。

さすがに匂いが強烈なのでロッカー内部の隙間が埋まるように西川君の剣道着を利用した。

西川君には内緒で拝借したので彼は後にマジ泣きすることとなる。


しばらく全米でナンバーワンヒットを飛ばした松井ランドは思わぬ形で終わりを迎えることとなった。


盗難事件だった。

全校集会での校長の話によると、

夜中に何者かが学校に忍び込み、理科室から薬品を盗ったのだという。

因みに薬品の場所にキャッツカードは刺さってなかったらしいので、あの三姉妹の仕業ではない。

かなり危ない薬品だった為に管理がしっかりされていて発覚したようだ。


なんて酷いことをするんだ。

変な事に使われたら大変だ。


私は怒りに打ち震えた。

打ち震えて馬ヅラを見た。

事情を知る者達も馬ヅラを見てた。


これはヤバい。

噴きそうなのを堪える。


みんな同じ顔してた。

馬ヅラも同じ顔してた。


そこは誰も噴き出すことなくなんとか切り抜けたが、ここからが問題だ。

みんなのテーマパーク松井ランドの危機なのだ。


しかしなぜ「夜中」だったのか…

我々の犯行時間は午後の自習時間だったのだ。

これには諸説あるのだが、

学校側が夜中だと思ったのは、前日の戸締りが不十分だったらしい。

この頃はセコムなんて防犯システムは入ってない。

せいぜい職員室に誰かが居る程度だ。

しかし、もし馬ヅラがこれを見越して戸締りせずに帰ったのだとしたらなかなかの猛者だ。

これが事実なら彼のニックネームを「馬ヅラ」から「ロバ」にランクアップするのもいいだろう。


問題は事件だ。

これまでも松井ランドの営業の特性上、異臭騒ぎはあった。

当時は「地下鉄サリン事件」が起きたのと同時期。

異臭には皆敏感なのだ。


事件となっては、いかに小規模なテーマパークもとい学校とはいえ警察が動く可能性もある。

娯楽施設は事故を起こしてはならない。


しかし馬ヅラ、


「まだいける。俺達は疑われてない」


それは違う。

確かに学校側には疑われていないようだが、全クラスのほとんどの男子にはバレている。

いや、他の学年にも松井ランドの存在は知られているだろう。

むしろあの時にバレなかったのが不思議なくらいだ。


「今回は理科室の薬品だろ?そこから松井ランドには結びつかないって」


一理ある。

わざわざ盗み出した薬品を珍妙な匂いを出す目的で使うなんて夢にも思わない。

ついでにその珍妙な匂いが学校の観光地になってるなんて結びつくハズもない。

現にあのとき馬ヅラを見ていたのは中和(?)の事実を知るクラスの数人だった。

これは中学生の発想がない大人達にはわからないハズだ。


なんて推理だ。

これからはちゃんと学級委員、いや、教授と呼ばせて頂こう。


なんて言うと思ったかロバ!


実は先日、今まで関心を寄せずに、私達を汚い物でも見るような目で見ていた女子が、

とうとう松井ランドの存在をそのままの意味で嗅ぎ付け、処分を言い渡されていたのだ。


「それ捨ててきてよ」


忌々しい女テ部(女子テニス部)め。

冗談じゃない。

もはや松井ランドは学校の名物であり観光地なのだ。

この伝統は来年、さ来年と、未来永劫この教室を使う後輩達に受け継いで頂きたい。


と言うと、


「私の後輩が困るんだけど」


と強く言われ、卒業までの間に処分することを約束されていたのだ。

すいませんオーナー。私が至らないばかりに。


しかし頃合だったのだ。

卒業まであと一ヶ月。

充分楽しめたではないか。


そうロバを説得し、

長らくみんなに愛された松井ランドは廃業へと追い込まれたのだった。


しかし、我々経営陣には最後の仕事が残っている。

松井ランドを解体せずに卒業しては株主の皆様に顔向けできないのだ。




つづく。

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