7話 お泊りですか
PVが300 ユニークが100を超えました。
引き続きこの小説を宜しくお願いします。
7/11 試験的に挿絵を入れてみました。
7/13 市長⇒町長に変更
マリアさんの薦めでウーブレック退治を引き受けたが依頼は明日の午前中に水道会社に集合だそうで時間が空く。一先ず滞在する為に宿をとマリアさんに聞いてみると実家が宿をやってるから案内してくれるとの申し出。
お言葉に甘える事にしてマリアさんの退社時間まで依頼のボードを眺めたり、掲示板を見て情報収集をする事にした。
『薬草採取をして欲しい』
中央通りのザックス店で出す「水かみ薬」の材料を獲ってきて欲しい
材料は水中や水辺に群生している水中花
量は最低10本1束から20束まで受付
料金応相談
『メタルローチ退治』
メタルローチが出る季節になった
倉庫がメタルローチに荒らされる前に退治して欲しい
料金は30000W、又は相応の武具にて支払い
『バイオプラント退治』
実験栽培区画に何時の間にかバイオプラントが生えてきた
貴重なサンプルが取り込まれる前に退治して欲しい
※急募、仕事の出来によって追加報酬有り
『研究補助』
マジックアイテム作成の補助全般を頼みたい
知性値が40前後あればOK
アイデアによって追加報酬あり
※拘束期間1ヶ月予定、その間住居提供
『引越し手伝い』
荷物の梱包、運搬の手伝いをお願いします
ダンブラー内での作業になります
料金9000W
『ゴミ片付け』
新しく購入した土地のゴミを片付けてくれ
家を建てる土地を購入したら勝手にゴミを捨てる奴が居て工事を始められない
一気に掃除をして家を建てる為に協力してほしい
料金15000W
「色々あるんだな……」
雑用から専門的な仕事まで色々と張り出されてる。ソレを受けれるかどうかは受付で判断されるって事らしいけど……中には種族限定の依頼なんかもあって面白い。
でも実際にソレ等を受けるとなると色々とスキルを取らないと厳しそうだ。薬草の採取系なんかだと薬草学のスキルがあれば出来ないって事も無さそうだし……。
「生産系のスキル取るのもありかな……」
独り言をつぶやきながら粗方掲示板に張られた依頼を見終える。時計を見るとマリアさんの仕事が終わるまでまだ時間が掛かるので、壁際のベンチに座って受けた依頼の詳細が書かれた用紙を見ながら確認する。
『ウーブレック掃除、又は退治』
依頼主:水道会社スイム
今週に入り町の一角から水が出ないと報告があり、調べた所
掃除用に放っていたウーブレックが大量発生している事が判明
旧水路を使用して何とか対応しているが一刻も早く水路を復旧させたい
また退治後にルートの確認及び、原因の確認を行う為
作業を行った中から数名程、追加の依頼を出す場合があります
料金25000W 追加依頼料金15000W
※マジックユーザー且つ、水路に傷を付けないでウーブレックを退治出来る方優遇
※掃除、退治の作業は能力により検討します
※マジックユーザーで無い方へ道具の貸し出しを行います
※追加依頼の場合は別途料金の支払いがあります
初心者が受けれる仕事、料金が他に比べて割と良いって事は重労働なんだろうな。出来れば楽に稼ぎたいと思うけど今はそうも言ってられないので地道に仕事をこなして信頼を得よう。
出来ればウーブレックってのがどんなモノなのかも知っておきたいけど……マリアさん知ってるかな? 受付に他の人が並んでない……時間もあるしちょっと聞くか。
「マリアさん、ちょっといいです?」
「ん? どうしたの」
「ウーブレックに関して知りたいんですけど、どっかにそういう資料とかあります?」
「そうね、ミューズなら知ってるかな? 二階の資料課に居るからそっちに行ってみてくれる?」
マリアさんにお礼を言ってから二階へ。階段を上がり、教えて貰った先に受付があったのでマリアさんにウーブレックの事をミューズさんに聞くよう言われたと伝えると、受付の人がミューズさんを呼んでくれた。
「仕事中にすんません」
「別に良いよ。これも仕事だし」
ミューズさんに連れられて別室へ移動する。中に入ると図書館の様な紙とインクの匂いが微かにする部屋。テーブルに案内されて暫く待つと一冊の本を抱えてミューズさんが戻って来た。
「お待たせ。コレ、生物図鑑ね」
そうやって見せてくれたのはA4サイズの図鑑。まぁ図鑑といっても厚さはあんまり無いので普通の本と言われても納得してしまう位のモノ。
いざその本を開いてみると、事のほか生き物に対して詳細に書かれている。どんな場所に住むのか、攻撃性はあるのか、何を食べるか、どんな習性を持つのか、得られる物は何か。
実はこの図鑑はギルドのお手製図鑑らしい。ギルド利用者が仕事の報告をする際に聞き取りをして信憑性の高い情報を精査して記入してるらしい。
何というかもうちょっと大雑把な組織と思い込んでたけど意外と細かい所にも気を使ってるらしい。町中見た時にも思ったけど意外と現代とそこまで変わらないのかもしれない。
この辺りが国営って事なのだろうかと関心しながら、ウーブレックに関して記入されているページを探す。
「えっと、目次だと……ウ、ウ、ウー……あいうえお順とかじゃないのか……」
「製品化する時はその辺りもちゃんと編集するけど、今もって来たコレは編集前の物だからねー」
「製品化って……まあ生物図鑑とか割と好きだから分かるけど買う人居るんだ」
「物好きな人って意外と居るからね。それにある意味生の意見というか情報だから早々外れがない分、学者さんとか買う人多いよ」
何か妙に納得してしまった。そうやっている内にウーブレックのページを見つけた。モノクロだが挿絵もあるのか。何々?
『ウーブレック』
緑色した半固形物の生き物。一見するとブヨブヨした塊で生物かどうか怪しいとされていたが、近年学者により生き物である事が確認された。
この事により長年魔法生物とされていたモノを見直す切っ掛けともなっている。 ※この件に関しては別途記述する事
性格は温厚で水辺での発見が多く、日陰に居る事が多い。気がつかづに踏みつけて反撃に合い、その所為で当初は攻撃性が高いと誤認されていたが先に発見してしまえば問題ない事から攻撃性は低いと認識が改められた。
但しウーブレックは単体ではなく群れで行動するので一度攻撃されると群れで襲ってくるので注意が必要。
移動速度は遅く、ゆっくりとした緩慢な動きだが壁に張り付いたり、木に登ったりするので頭上にも注意する事。
※過去の事例として日差しの強い日に木の日陰で休んでいる際に頭上からウーブレックが降ってきた為に上を向くと木にびっしりとウーブレックが張り付いているという事があった。
一見すると内臓等が何も無い半透明の物質だが、内臓や口等がある事が判明。明確にソレ等を見分けるのは難しく、長年観察している人でもよく間違える。
体表はぬるぬるした粘膜で覆われており、掴もうにもぬめりで中々掴む事が出来ない上に粘膜の作用で素手で触るとかぶれる。
ウーブレックの食事に関しては基本草食で水中の「藻」や水辺に生える草を主食としていて、食べる物によって若干の色の違いと匂いが変わる事が判明。
群れによって体表に表れる模様が違い、縄張りに入った別のウーブレックに対して非常に好戦的。
討伐方法は非常に簡単で鈍器等で叩けば潰せるものの、潰れたウーブレックは酸性の液体を出すので地面の上で潰すのが一般的。
また、魔法に弱いという特性があり、魔法で処理すると完全に溶ける事が確認されている為、マジックユーザーが居る場合は処理を任せるのが良い。
何故魔法で処理すると酸性の体液を出さずに溶けるという現象に帰結するかは現在研究が行われている。同様にマジックアイテムを使用しても同じ現象に帰結すると報告を受けている。
挿絵を見る感じクラゲとナメクジの合いの子って感じに見える。挿絵を指差しながらミューズさんに聞いてみた。
「何かクラゲから足を無くしたっぽい見た目だな」
「あー、昔の人はウーブレックをクラゲの親戚とか思ってた時期があったよ」
「へぇ、この『体表の粘液に触るとかぶれる』って奴。対策してから集合場所に行ったほうが良いよね?」
ゴム手袋とかあれば良いけど……ゴムってあるのか?
「そこは大丈夫かな。ウーブレック退治の依頼って何度かあってね、水道会社の方で防水手袋を用意してくれてるから」
「そうなんだ」
「ウーブレック自体を水道の掃除に利用してるからね。ある意味ウーブレックの対処方のプロだよ、あそこの会社」
そんなプロが退治の手伝いを依頼するってどんな状況? と眉根を寄せているとミューズさんが笑って答えてくれた。
「多分単純に人手が足りないんだよ、意外に重労働だからね。それにあそこに勤めてる人でマジックユーザーは居なかったからソレも有るんじゃないかな」
成る程と思い頭の中でメモを取っておく。
「じゃあ特にコレと言って準備は必要無いんですかね?」
「そうだと思うよ。大体必要な物は向こうの会社で用意してあるし、あえて言うなら汚れても平気な服かな」
「服……」
GパンにTシャツ、スニーカーとガリバーさんに貰ったマント……。こりゃ服を買うべきか。
暫くミューズさんとあーだこーだと話していたら仕事が片付いてない事を思い出して戻って行った。本は見終わったら受付に戻してといわれたので引き続き図鑑を見て行く。
何度か読み直して思ったのは『魔法』がキーワードになっている事。恐らくこの世界には魔法が有る。
だが俺のスキルの中に魔法に関する記述は無い……何故だろう?
メニューを呼び出してスキル欄を確認するがやはりソコには魔法に関係するようなスキルが無い。これは俺が魔法を使えないって事を意味してるんだろうか?
まあ今の状態で既にかなり優遇されているって話なのでこれ以上を求めるのは止めて置こう。しかし困った。
此処ダンブラーに来るまでの道中で生き物を殺す事でレベルが上がる事を確認してる。そしてレベルが上がると自分の能力を一気に上げる事が出来る。
故に出来ればウーブレックの処理を行いたいが、今回の仕事を受けた他の人間の中にマジックユーザーが居たらその人に処理は全部持っていかれる可能性がある。
どうにか出来ないかと図鑑を隅々まで見直し、頭を捻っていると肩を叩かれた。びっくりして振り返るとマリアさんとミューズさんが揃って立っている。
「あれ? 二人共……」
「ワタル君、もう時間過ぎてるわよー」
マリアさんが壁にある時計を指差しして見せると、時計の表示は言われていた時間を10分程過ぎていた。
「うわっ、すいません。本読んで考え事してたら時間過ぎてました」
「あれからずっと本読んでたんですか?」
「明日の仕事で使う知識だし、それにこの本とミューズさんのお陰で最低でも汚れて良い服を買わなきゃいけないって事も分かりましたから」
「へぇ、服買うんだ」
「多分汚れますし。まあ此処に来るまでに手に入れた予備の服もあるから最悪そっち使えば良いんですけどね」
そう言って背負い袋に入っていた服を取り出して見せる。
「普通の服ね」
「普通の服ですねー」
「そりゃ服ですし」
何故か二人に呆れられてしまった。ここまでどうやって来たのかと言われて歩いてきたと答えるとますます変な顔をされた。何か変な事を言っただろうか?
少し話してみるとどうやら大変非常識な事らしい。ガリバーさんの所から此処ダンブラーの間を考えれば何度か生き物に襲われるので武器防具が必須なのに俺は防具を所持していない。一人旅なのにだ。
成る程、言われてみれば確かに防具を持って無いのはおかしい。そういう点も含めて衛兵に捕まったのかもしれないと少し反省すると同時に過去の自分に忠告してやりたくなった。
何故お前は防具を買わないのかと。まあRPG脳が囁いてしまったのが原因なのだ。
きっとこの田舎で買うより人が多い町で買ったほうが良いものがある。そしてお金が心とも無いので無駄な出費は控えようと。
アホだ。
金をけちって命を危険に晒しているのだから。今更だが冷静に考えるとかなり無茶苦茶だ。何せ普通の服+ショートソードで複数の野犬を殺したりしてるから頭おかしいと言われても文句言えないかも。
「せめて最低限の防具は必要か」
「だったら家にいこうよ、父さんの昔使ってた奴とか確かあったと思うし、ねぇミューズ?」
「あー、お父さんの昔の奴とか着れそうだね」
曰く、彼女らの父親は昔大分やんちゃしていたらしく色んな物をコレクションしてるんだとか。その中でも昔の物をやたら大事に取っているが何時か人に渡すと豪語している。
「えっと、ソレは渡す人が決まってるとかそういうパターンじゃないの?」
「それは無いかなー、父さんって割りとそこら辺ノリで決める人だから」
「ですねー。お父さんって快楽主義的な所あるから」
その場の勢いというか、やっぱどっかでケチりたいのか。一先ず予備の服を買ってから彼女たち姉妹の家へ。
連れて来られたのは町の中でも一等地と思える場所に建った豪華な建物。つーか普通にでけぇ。ナニコレ。
驚いた顔してると彼女たちは普通に中へ入っていくので続いて俺も入る。扉を潜ると数人のメイドと執事が出迎えた。
もしかして二人って良い所のお嬢さんなのと横に居る執事さんにこっそり聞くと、暫く間を置いてから答えてくれた。
「お二人は此処『ダンブラー』の町長を任されているディブラー様のご息女でございます」
……何ソレ、聞いてないんだけど。