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6話 初仕事はスライム?

「これで海星 渉(かいせい わたる)って読むんだ」

「変わった名前ねぇ」


ミューズさんとバインバイン姉さんの反応は「ふぅ~ん」といった物で余りスタンダードな名前じゃないっぽい。ま、いいんだけどね。

所でバインバインなお姉さん、お名前聞いても良いですか?


「え? あたしの名前? マリアよ」

「マリアさんですか、何か随分と姉妹で違うっすね」

「血は繋がってるけどものの見事に似なかったからね~、私は父さん似でミューズは母さん似なの」

「私も身長が後10センチは欲しいんですけどね。姉さん10センチ、いや、5センチで良いからくれない?」

「胸じゃなくて?」

「もぐぞ」


何やら急に姉妹漫才が始まってしまった。そんな二人のやり取りを見つつ記入用紙の項目を埋めていく。大体書き終えた所で漫才は止まったようだ。

取りあえず記入を終えた用紙をマリアさんに渡して確認して貰いながらミューズさんに話しかける。


「ミューズさんのお母さんって背が低いんですか?」

「ううん。どっちかといえば背は高い方かなー、家族で私が一番小さいのよ」

「一番小さいのはムースでしょ」


ムース? と首をかしげて居るとマリアさんが笑いながら教えてくれた。どうやら末っ子の名前らしく今年で10歳になるんだとか。


「流石にムースと比べる事はしないわよ」

「あらぁ? でもアノ子ももう直ぐ成長期でしょ? アンタ抜かれるんじゃない? 色々と」


世間話をしながらも手を動かす事を止めない辺り、マリアさんは優秀なのだろう。持つべき物を持ってる人間は違うという事か。さすがバインバイン。

とかアホな事考えながら周りの人間を観察してみる。普通に人間だったり、獣っぽい人も居れば、肌が緑の人とか植物生えてる人、肌が岩みたいな人も居て千差万別ってこういう事だろうなーとか思ったり。

当然男も女も居るし、色んな体系や系統の人が居るわけで。中にはめっちゃ綺麗とかかわいい系の女性も……そしてソレに反応してしまう我が息子。

オカシイ。俺ってこんなに性欲強かったっけ? 若返ったからある程度性欲が戻って来たというのは分かるがそれにしても、こうまで節操なしに反応はして無かった、と思いたい。

ここで俺の頭に電流が走る。


例のスキルを使えば勃起を悟られないのでは!? 初対面の人に勃起を悟られるのは非常に恥ずかしい。故に! アレを使うしか有るまいよ!!


直ぐにメニューを開いて特殊スキルタブを呼び出す。取得するのは、そう、『スキル:三本目の足』だ。

ネタとも思えるスキルだがある意味で究極のスキル。男の自尊心はナニの大きさに比例すると学会(?)でも証明されている!ならば自信が無いシャイボーイもこいつで一気にタフガイになれるって寸法だ!

大丈夫、昔の人も言っていた!『この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ』

今! この時が正に踏み出す瞬間!

残りのスキルポイントを注げるだけ注いで確定ボタンをタップ!

するとスキルの使い方が頭に流れ込んでくる。


『スキル:三本目の足10/10』

ナニの大きさや動きを調整することが可能

大きさ変更、振動、ダブル、感覚強化、触手化、変幻自在

消費精神力:30

※レベルによって可能な動作が増える


精々大きさが変更出来るだけと思っていたら思いの外えげつないスキルだった。あまりの事に一瞬固まってしまうが、それでも息子は暴れっぱなしなのでさっそくスキルを使う。

その瞬間、ずんずんとナニが縮んでいくのが分かる。ついズボンのポケットに手を突っ込んで確認してしまったのも仕方が無いのだが、恐らく小学生どころか赤ん坊サイズまで小さくなっていた。

こうなると小指サイズなので流石に気づかれる事も無い。

まあスキルポイントが勿体無かったのではと俺の理性が囁いてくるがこういうノリというか直感って割と大事なので気にしない事にした。そうこうしている内にマリアさんの作業が終わってカードを見せられる。


「良い? コレが身分証にもなるギルドカードね。一応国営だから途端に効力を失うなんて事は無いけど、他国へ移ってカードを使用するならその国というか地域でギルドに提出して中身の追記してもらう必要があるから注意してね」


受け取ってみると手の平に収まるサイズで金属っぽく硬い。表には名前、裏にはマークが入ってる。

カードを物珍しく眺めているとミューズさんが自分のカードを取り出して扱い方を説明してくれた。


「ワタルは登録しただけだからカードの表に名前しか出ないけど、ココ、カードの端に凹みがあるでしょ。この部分に血を垂らすと能力値が見れるようになるのよ」

「能力値なんて他人に見せるモノじゃないから自分の家とかでやってね。中には気にしないって人も居るけど……ワタルも今やってく?」


マリアさんが何か「飲んでく?」みたいな感じで聞いてくるのでつい「あっ、はい」と答えてしまった。そして渡されたのがアイスピックと思える代物。

目を開いて見返すとジェスチャーで手の平をぶっ刺す仕草をする二人。マジか。

取りあえず指先をちょろっと切って血を垂らして見るがカードに変化が無い。するとミューズさんが「何やってるの」と言って俺からアイスピックを奪い取ると俺の右手を貫いた。


「わ゛-----!!??」

「うるさっ!!」


ミューズさんから突っ込み入るがそれ処じゃない。右手にはアイスピックが貫通して血がだばだば出てる。脳の処理が追いついて無いのか痛みが無いのは幸いだが突然の事にパニックになってる。


「っちょ、血がダバダバ出てるんですけど!?」

「分かったから、ホラ、カードに吸わせる」

「何でそんなに冷静?!」


あまりの出来事に混乱した俺は取りあえず右手首を握って止血を試みようとする。そんな俺を他所に左手に持ったカードを取られて窪みをアイスピックの先に持ってくるミューズさん。

血がダバダバと掛かり、カード全体が真っ赤になる頃、カードがぼんやりと光った。すると「出来た出来た」と、簡単な作業が終わった~というノリで右手に刺さったアイスピックを無造作に掴んで引き抜く。


「ホアァ!?」

「だからうるさいって」

「ワタル君、右手ちゃんと見てみたら?」

「へぇ?」


マリアさんに言われて右手を改めて見ると傷が無い。だが確かに右手の甲には血の後が残ってる。

手の平と甲を何度も見直しながら口をポカンと開けていると二人が一斉に吹き出し、笑い始めた。


「「ぷっ、くはっ、あははははは!!!!!」」


何故に笑い出したのかさっぱりだが自分が笑われているのだけは分かった。ちょっとイラついてジト目で二人を見ていると笑いを抑えて説明してくれた。

どうやらさっきのアイスピックの様な代物は名前を『血抜きの桐』と言い、名前の通り出血効果がエンチャントされた武器らしい。さらにソコへ回復効果と痛覚軽減のエンチャントを付けてギルドでステータス登録をする人へ貸し出すんだとか。

先に言ってほしい。因みにギルドによってどんなモノを使ってるかは様々で、場所によっては長剣にエンチャントがされていて。何も知らない新人がビックリするらしい。

ある種の通過儀礼みたいになってるんだとか……趣味悪過ぎだろ。因みにこの時後ろの方で俺が声を上げるか上げないかで賭け事をしていた人が居たんだとか。こんちくしょう。


一頻り笑いの種にされた所でギルドの本格的な利用方法を教えて貰った。簡単な縦割りの組織かと思っていたらそんな事は無く、複合組織だった。

テンプレ的に色んなジャンル、例えば冒険ギルドとか商人ギルドなんて風に別れているのかと思っていたらそうではなく、所謂『職業』毎にギルドが乱立されてるらしい。

医者ギルドに鍛冶ギルド、料理ギルド、大工ギルド、剣士ギルド、傭兵ギルドといった具合に。最後の二つなんて何が違うのかよく判らないが兎も角ギルドって奴は多種多様。

でもってそのギルドを取り纏めてるのが此処、『総合ギルド窓口』

ギルド自体は各種ギルド自体が運営してるが、総合ギルドを国営にする事で国が各ギルドと連携を取りいざって時は色々と動かすんだとか。細かい所は兎も角これで割りと上手く回ってるのだろう事は何となく分かる。


「ふーん、国営かぁ……就職率高そうやね」

「そこそこかな。後は種族枠があるからソコに入れると割とすんなり職に就けたりもするわねー」

「何か色々あるんやね」


そう言いながら色々と教えてくれる。ギルド間の所謂外へ出ない依頼を受け渡すのもギルド職員の仕事だそうで、国からの要請で薬の価格を抑えてほしいという依頼が薬品ギルドへ渡ると、薬品ギルドから農業ギルドへ依頼を渡して薬草の栽培量を増産して貰ったり、逆に在庫が飽和気味になると生産量を減らして価格の調整をしたり。

興味本位で商人ギルドとかあるかと聞くと無いらしい。非公式にはあるらしいが徒党を組まれると国としては邪魔だから公式には組ませない。

非公式は何故許されているかと聞けばその位は許さないと面倒になるんだと。やっぱ何処の世界でも利権争いはあるもんだ。世知辛い。

そうなってくるとファンタジーお約束の薬草集めの依頼とか無いのかと聞くとそんな事は無かった。ギルドに所属していない職人も居れば珍しい薬草を求める依頼もある。まあ殆どが珍しい薬草を探す依頼らしい。

後は取り扱いが難しい物や、生える場所が特殊な為に栽培が難しい物だとか。中には襲ってくる植物を倒して手に入れなければならない物まで。

情報量の多さにちょっとポカンとなりながら、話をしていると「やってみる?」とマリアさんに持ちかけられた。


「確かに金は稼ぎたいなー。でも素人でも出来るモノなの?」

「登録したばっかりの人に回せる仕事も勿論あるわよ。と言っても町中の仕事でやる事がハッキリしてる物限定ね」


そう言って見せられる手の平より一回り程大きい紙。手にとって見てみるとどうやら掃除の仕事らしい。


「水道の一部が詰まってて見に行ったら『ウーブレック』が溜まってたのよ。まあ、最低限の処置はしたらしいけど根本的な解決にならないから人手を集めて退治しちゃおうってなってね」

「んー? ウーブレックって何です?」

「あら? 知らない? ウーブレック。緑のドロドロした奴でマジックユーザーの格好の餌食」


それってもしかしてスライム?

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