3話 ステータスに悩む
次の町へ向かいながら手荷物を確認すると、マントに食事と水、向かいの店で受け取った方の荷物には剣が1本ナイフ2本とそれ等を引っ掛けるベルトが入っていた。
一旦立ち止まってマントとベルトを身に付けて武器を下げて、それから荷物を一纏めにして肩に担ぐ。勿論ガリバーさんから預かった手紙と像も忘れずに。
前世で見れば完全に中二病患者だが恐らくこの世界じゃ普通なんだろう……普通だと良いなぁ。
気分を新たに歩き始めて暫く、そういえばステータスの変更をしていない事に気がついた。何やかんやで忘れていた。
「しっかしコレどうするかね……ゲームなら大体特化タイプを選ぶけど……自分の身に降りかかる事だしなぁ。やっぱバランス型って奴か?」
そう思ってステータスタブを弄ってると幾つか気づいた事がある。まず表示されてる自分のアバターがマントや剣を装備してる。これってリアルにリンクしてるって事だろうか?
更にスキルタブの横に新しく『称号』のタブが出来てる。タッチして開いてみると一つだけ何か書かれてる。何々?
称号:チキンハート
戦場から逃げ出した者に送られる称号
逃走行為限定で速度にボーナス(移動速度50%)
「確かに逃げたけどさ……」
釈然としないがタブをステータスに戻す。昔やってたゲームならスキル構成とか考えてからステータスを決めてたけど何か色々仕掛けがしてある気がする。
あの女神様の事だから無いとは言い切れないのが怖い所だ……等と思っていると、メニューから『ポーン』というポップな音が聞こえてきた。
何事かと目線をやるとメニューウィンドウの左上に緑色の噴出しに白字で『1』という数字が小さく表示されている。何となくそれを押してみるとメール機能だろうか、文章が浮かび上がってきた。
『やっほー、アンタを転生させた麗しい女神様よ。敬いなさい!!!!
ま、それはさておき。
アンタ何で戦場から逃げてるの? 折角の経験値獲得ボーナスじゃない!!
人をヤルのが一番手っ取り早いからサービスでソコに送ったのに意味が無いでしょ!!!!!!
あれだけサービスしろって言っておいてコレな訳?? 良い? 折角のサービスを蹴ったのはアンタなんだからコレ以降はサービスは無しよ!
それから死んでも目標達成までは何回でもやり直しさせるからね?
あぁ、その際ちょっとだけ魂の経験を削るから。何でもノーリスクじゃないのよ!
ともあれ、早目に目標達成する事!期限は無いからまぁ多少のんびり……そうね、1000年位は猶予を上げるから頑張りなさい。
私って超優しい!!!!!
じゃ、後はよろしく!
ps.それだけ時間かけて駄目ならアンタを元の世界に生き返らせて、尚且つ子供とその母親10人の縁を結ぶわ。
ついでに最後に付き合ってた人とその子供も合わせると12人? 無駄にソッチの才能あるわねー。』
「なんじゃそりゃーーーーーーー!!!!!!」
行き成り戦場にでたのはテメーの仕業かい! しかもソレがサービスって無茶だろゴラァ!!
レベル1!! 俺のレベル1じゃん! しっかりメニューにもそう書いてあるじゃねーか!
レベル1で本物の兵隊とガチ殺し合いとか無理だろがダボがぁ!!
女神の無駄なサービス精神に対してブチキレながらも、追伸部分には怖くて考える事すら放棄してしまったのはご愛嬌だろうか。
暫く女神への愚痴をぶつぶつと呟きながら進んでいると、少し先の俺の腰程の高さのある草むらが風も無いのに揺れた。その事に気を取られ足を止めると、草むらの揺れが暫く収まり……いきなり草むらの揺れが此方を回り込む様に動き始めた。
「は? ちょっ!! 何々!?」
思わず身構えるが剣等は抜かない。というより武器を使う行為を行った事が無い為そこまで頭が回らないのだ。左右に動いていた揺れがやがて止まったと思うと、一瞬置いてから此方へ突っ込んでくる。
ガァア!!
草むらから飛び出してきたのは全身が赤茶けた毛に覆われた一見すると犬の様な生き物、サイズは中型犬程だろうか? だが犬とは違い眉間に目玉が一つ追加されている。
尤も、そんな事は事が終わった後で気が付いた事で、襲われている最中は気にしている余裕も無かった。
「うぉわぁ!!!!」
行き成り草むらから飛び出してきたかと思えば一気に飛び跳ねて顔目掛けての跳躍。その事に驚いて思わず尻餅をついたお陰で初撃は避けられたが直ぐ様ズボンの左足首辺りに噛み付いてくる。
そしてそのままズボンを噛み千切らんとばかりに頭を左右に振りだす。この時ズボンごと足首を噛まれなかったのは幸運だった。
「ちょっ! ちょっと! コラ!! 離せ!!!!」
咄嗟に右足で犬の頭を蹴るが全く離す素振りが無い。寧ろ更なる殺意を込めて此方を睨んでくる。正に野犬。
この時になって俺は何時かのニュースで野犬に襲われた人が食い殺されたという事件を思い出し、身震いをした。
「ひぃ!」
何とも情けない声を上げながら腰の剣を抜く。両刃で刃渡りは40センチ位、所謂ショートソードに分類される剣。
それを足に噛み付いた犬に向けて振るう。
危険を察知したのか、今までの態度が嘘の様に足を離して距離を取る。ココに来て全身から嫌な汗が吹き出る。
呼吸が浅くなり喉が張り付く。使ったことの無い剣という代物をどう扱って良いか分からずに、柄を両手でギュっと握り締める。
この時、もしこの場に他の第三者が居たら物凄く情けない自分が映っていただろう。何せ尻餅をついた大男がショートソードを握って後ろに逃げようと足で地面を蹴っているのだから。
それに対する犬畜生は俺の情けない姿を見てどう思ったのか。恐らく食えると思ったのだろう。そのまま勢いを付けて俺へと飛び掛ってきた。
だがソレが災い……俺からしたら幸いな事に、俺は怖くて剣を前へ出してやろうとしたが、いざって時は身体が思うように動かないもので後ろへ倒れこんでしまった。
勢い良く俺へ飛び掛ってきた犬は結果として振り上げた形になった剣が腹に刺さり、俺の体の上にその血と臓物をぶちまける事で事切れた。
もっとも剣が刺さって直ぐに絶命する訳ではないので、剣が刺さって暫くは前足の爪で俺の腕を引っかき、口に生えた牙で俺の頭を噛み砕かんと迫って来たので、上半身は犬の涎、腰の辺りは犬の血でベトベト、腕には引っかき傷が幾つも増えて血が流れている。
「いっつつつ」
痛い、臭い、汚いと、本気で凹むが足を止めると又似たような犬に襲われないとも限らない。死体をそのままに一先ず歩き出した。
テンション駄々下がりのまま、再度ステータスを開いてみる。俺のステータスはALL1。つまり低ステータスだろうが戦えるというのが計らずとも証明された。
逆を言えばどれだけ高いステータスだろうと負ける可能性があるという事にもなる。ここに書かれているのをそのまま信じるって訳にも行かないだろうが一つの目安にはなるかもしれない。
「一応……レベルは2に上がったか。あんな怖い思いしてレベル上げるのか? 生産とかでレベル上がんねぇかな……割とマジで」
両腕に出来た引っかき傷を確認しつつステータスも見る。基礎能力の右側に書かれた様々な項目を見ていると、本気でこれで勝てたのが信じられない。
生命力11
精神力11
技力11
攻撃力5
守備力5
魔法攻撃力5
魔法防御力5
命中5
魔法命中5
回避5
攻撃速度2
移動速度5
ゲームなら雑魚の一言で片付けられてしまう様なステータスだ。ヘッダーメニューに表示されているポイントを確認すると、今の所持してるステータスポイントが40……レベル1に比べると10増えてるって事はレベル毎に増えるのは10ポイントか。
ついでにスキルポイントも見ると5ポイントある、こっちはレベル毎に5ポイントか。割と貰える方か?
この先ALL1で戦うなんて縛りプレイはやりたくないが、確定ボタンを押すまでは自由に振りなおせるから取りあえずバランス良く振り分けてみよう。
一先ずこんな風に振り分けてみる。
生命8
精神8
筋力8
頑強5
器用5
速度5
知識5
幸運4
そしてその結果としてこうなった。
生命力87
精神力84
技力86
攻撃力41
守備力26
魔法攻撃力27
魔法防御力25
命中27
魔法命中27
回避25
攻撃速度2
移動速度26
「うん……ステータス振る前がどれだけ雑魚か際立つ……つーか、俺良くあの犬に勝てたな」
ビックリするぐらい自分のステータスが低かったのに冷や汗が流れる。
しかしどうしよう。コレで確定しちまうか? だが守備力が低い……かといって他を削るのはちょっと怖い。
悩ましいな。うーーん。
今回主人公のステータスが表示されましたが、どの様なステータスに設定していくかは決まっていません。そこでこの小説を読んでいただいている方に質問ですが、皆さんはキャラクターを育成する時はどんなタイプにするでしょうか?
下記活動報告に記入していただけると幸いです。
※必ずしもご意見が反映される訳では無い事をご了承下さい。
※締め切りは6/26の24時とさせていただきます。
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