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12話 原因発見

肩を揺すられ起こされる。どうやら何時の間にか寝てたらしい。

結構ガタガタと揺れてたはずだが……疲れてると人間って案外眠れるもんだな。

荷車から下りて周りを見ると既にダンブラーに戻ってきていた。そのまま社員さんの案内で会社の中へ。

午前中に説明のあった会議室で受注表にそれぞれ書き込みをして貰って一旦解散。追加依頼のある人間はそのままこの場所に残る事になるらしい。

で、残ったのは俺ともう一人。線の細い少年だった。

西洋って感じではない、どちらかといえば中東辺りに居そうなイケメン。アジア系のイケメン? そんな感じ。

髪はブラウン寄りの黒で肌はちょっと焼けてる感じで彫りも深い。でもイケメンって感じより可愛い系。女の子にもてそうな感がある。

ここは一つ同じ依頼を受ける者同士、コミュニケーションを図るか。


「えっと、君も追加依頼を受けるって感じかな?」

「はい、貴方もですか?」

「うん、そうだよ。俺はワタルって言います。君は?」

「僕はシュウメイって言います。宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しく」


自己紹介してシュウメイ君の事を聞いたり自分の事を話したりで時間を潰す。どうやら彼はダンブラー生まれらしい、ただ両親が南の方から移り住んできたという。

彼の両親が幸い手に職を持つ人らしく、薬品をギルドで作って販売しているらしい。彼も後々はその技術を学んで医療ギルドに所属するのが将来の夢だとか。

しっかりしてるなぁと思いながら話を続けていると社長の爺さんが社員を連れて部屋へ入ってきた。


「午前中はお疲れ様。二人共説明が終わったら一旦30分程休憩取ってから地下水道へ移動するからね。

 それから二人が選ばれた理由を双方共に伝えていたほうがいざと言う時に混乱しないだろうから教えておきたいけど……。

 一応二人それぞれ個別に理由を伝えて、それを伝えて問題ないなら双方にお互いの理由を教えるって事で構わないかな?」


何でここまで慎重になるか不思議に思ったが、日本でいうなら所謂個人情報に当たると思えば納得した。会社が個人情報流出とかしたら会社の信用駄々落ちだからな。

自分は構わないと伝えると俺が選ばれた理由はやっぱりギフトが関係していたようで、いざって時にはウーブレックを対処して欲しいとの事だった。

多少不安はあるけれど、専用の武器も用意してるから、まあ大丈夫かな。席に戻りシュウメイ君の方が終わるのを待っていたら彼も席に戻って来た。


「さて、ありがたい事に二人とも了解を貰えたので話すと、ワタル君、君には何か起こった際にウーブレックの対処をお願いしたい。

 何故彼が選ばれたのかという理由は、彼が『ギフト持ち』であり、ソレがウーブレックに対して有用だからだ。

 次にシュウメイ君の方だが、君には探索、そして原因究明の手伝いをお願いしたい。これは彼が『鑑定スキル』を持っているからであり、その効果を考えれば理解出来るだろう」


おぉ……ある意味有名な鑑定スキル。や、この世界でどうかは分からんけどレアっぽいぞ。


「効果ってどんなのか聞いても?」

「ん? 知らんのか?」

「持って無いモノの事は知らないよ」

「そんなもんか……そうじゃな、ここは本人に説明して貰った方がええかの?」

「え、僕ですか?」


シュウメイ君の説明によると、たとえ自分が覚えていないモノでも目に映るモノの情報を引き出すスキルらしい。擬態なども見破るらしいが対抗するスキルを使用されるとそのスキル抵抗を突破しないと見破れないんだとか。

でも良いな、鑑定。便利そう。そんな感想を口に出すと意外とそうでもないという答えが返って来た。

この鑑定スキル、固定でMP消費が5。更にリキャストタイムが3分と地味に長い。さらに言えばスキル抵抗を突破するには高いステータスが要求されるので十全に力を発揮するには中々厳しいらしい。

その分スキル自体のレベルを上げるとスキル抵抗値が底上げされたり、リキャストタイムが短くなったり、より深い情報を得られたりと恩恵もあるのでどこまで鍛えるか次第と言われた。

因みにシュウメイ君の鑑定スキルはレベル3。レベル最大が10と考えればまだまだ伸びる余地はあるな。


「でもさ、後7って事はレベルを2上げたら10になるんだろ?」

「? いえ、もし10にするなら後7上げないといけないですよ? それに最短で7ですけど流石に他のスキルも取りたいので鑑定に全部注ぐのはちょっと……」


……あれ? もしかしてレベル1毎にスキルポイントが5P手に入るのって俺だけ?




あの後話しを終えて30分の休憩を貰った。スキルポイントに関しては気になるのでメニューを開く。

自分のレベルと今まで取ったスキルのレベルを計算すると……間違い無く1レベル毎に5P手に入ってる。ここは一つホウレンソウを試してみるか。




という訳で女神に対してメールを送ろうと思う。メニューからメールのアイコンをタップして呼び出し、返信機能でメールを書く。


『女神さんお疲れ様ー……書いといてなんやけど女神って疲れるのか? まあいいか。

 とりあえずお疲れ様って事で。それは兎も角、聞きたい事があってこうやってメール書いてるんだけどさ、俺のスキルポイントどうなってるの?

 こっちの人はレベル1に対して1ポイントしか貰えてないっぽいけど俺はレベル1毎に5P貰えてるんだけど。

 若しかしてバグ? 修正して取得ポイントが差っぴかれるって事はないよな?

 後出来ればEPSの使用条件とか教えてくれると嬉しいなーって思ったり。』


ザックリだけどこんなもんか。メールを送信して1分も経たずに返事が返ってきた。早いなぉぃ。


『乙乙! そりゃ女神様でも疲れますとも! 仕事の何と多い事か!

 いっそ一度変わってあげようか? 私の大変さを知れるよ?

 それは兎も角、スキルポイントに関してだったね。それは簡単、君に対しては優遇してるのよ。

 君風に言えば成長係数を弄って1レベル上がる毎に他キャラクターの3~5レベル分強くなる成長能力になってる訳。

 本音を言えば最初から『強くてニューゲーム』が私の好みなんだけど、それをヤルと本来の目的であるワクチンとしての役割が行えそうになかったし……あっちを立てればこっちが立たずって奴ね。

 まあそんな感じだから、成長チートを是非とも楽しんで。でも出来るだけ他の人に言い触らさない様にね? 死なれても困るから。(死んだら死んだで無理矢理生き返らせるんだけどさ)

 後、EPSに関して、今の所は作用した物に対して一定時間回転運動をさせながら操作する事が出来る能力って感じ。

 コレに関しては君の成長具合で変わってくるし、やろうと思えば色んな使い方出来るから……でもまさか毛抜きに使うとは私も思ってなかったわ。


 そんじゃ、質問の答えとしてはこんな感じかな。気をつけて順調に強くなって頂戴ね。

 後、出来るだけ早目に子供作るように』


何かかなり軽いな。変に重たい文章で来るよりは全然良いんだけどさ。

それにしても一定時間か……ポケットに入れてあった武器……前世で言う所のチャクラムを指に引っ掛けて取り出す。そのまま回転スタート。

指の位置を中心に指先でチャクラムが回転を始める。回転を始めて10分経つが一向に止まる気配は無い。結構な時間を回転し続けられるらしい。

そういや昨日ウーブレックを引き剥がす作業をしている間も結局1度しか再回転させなかったから持続時間は割りとあるんだと思う。


何だかんだと時間が過ぎてサイド会議室に集まる。集まった人間は合計7名。

俺、シュウメイ、社長の爺さん、社員4名。一応何か疑問点があれば質問するように言われたがきっと俺が質問するような事はないだろう。

早速会議室を出て移動を開始する……が、向かった先は会社の中の別の部屋。中庭の小屋じゃないのか?


「あれは新しい方の地下水道じゃな。あっちも調査をするが先に調査に入るのは旧地下水道。まあ、新旧と言っても構造にそこまで大きな違いは無い。

 あるのは地上からの深さとその大きさか」


どうやら旧地下水道というのは新しい水道と比べて比較的深い場所に通っており、細かいメンテナンスをしなくてもいい様に非常に頑丈に作られている。

その分どうしても移動に時間がかかり中々に管理が大変なんだとか。そういった不便さや管理のしづらさを考慮して作られたのが昨日潜った新地下水道。

念のために旧地下水道を簡単に点検した後で新地下水道の調査に入るらしい。


大体体感で一時間位だろうか、暗い地下水道を進む。人が二人並ぶとギュウギュウな足場を手持ちのライトで照らしながら只管歩く。

因みにこのライトは水道会社から貸し出されたマジックアイテムだが……これならヘッドライトでも作ったほうがいいのではないだろうか。後で爺さんに進言しとこう。

それはさて置き。只管歩いたが特に何事も無く終わった。つまり旧地下水道にはウーブレックが繁殖してない事になる。

勿論管理されているウーブレックは居るのだが此方に関しては全てナンバリングされた固体のみで、水道会社が把握している数と変わらないらしい。


一度旧地下水道から引き上げて休憩に入る。爺さんと社員さんたちは地下で確認した情報を頼りに小会議を行うらしい。その間に俺とショウメイ君は休憩だ。


「やっぱ中々にキツイねぇ。しかも暗い狭い湿気も多いで汗もかく。今すぐ風呂に入りたいや」

「あー、いいですねーお風呂。でも今入ったらもう何もしたくなくなりません?」

「否定できねぇな、そういやシュウメイ君はMPとか大丈夫なの? ちょこちょこ使ってたよね、鑑定」


確か10回以上使ってるので消費が5なら多分MPは50以上使ってる計算になる。


「それは大丈夫ですよ。幸いといって良いか分かりませんが自分の両親ともマジックユーザーだからなのか、僕自身も精神力高いのでMPも相応に多いんです。

 なので今の目標はそれを活かせる魔法スキルを取る事なんですけどね」


成る程、やっぱ両親の能力とかも子供が引き継いだりするのか。それを考えると女神が俺に子供を作れって言ってるのはそういう事も含まれるんだろうか。

考察しながら休憩を取り、休憩が終わり又7人集まる。今度は中庭の小屋から新地下水道へ。

地下水道を社員さんのライトを目印にしながら進む。しかしアレだな……異世界来ても何か小さくまとまってしまった感あるな

この町に来るまでの移動には大分苦労したが来てからは町長さんの所に世話になって日雇い労働して……あれ? 元の生活より酷くなってない?

少なくとも元々はちゃんと就職してたし、安定した給料と住居があり、生活に潤いも娯楽もあった。

何で俺ってこんな所に居るんだっけ? 考え出したら段々凹んでくる。一応死んだからとは聞いたけど死因とかも聞いてないし、何だかなぁ。


勝手に一人で凹みながら社員さんの後に続いていると前を歩く人の足が止まったのでソレに習って俺も止まる。


「どうしました」


ちょくちょくウーブレックを見つけて歩く速度を落したりもしたけど完全に足が止まったのは地下に潜ってからは初だ。

するとジェスチャーで喋るなと口に指を立てて押し付ける。こーいう所は世界を超えても同じなのかとアホな事思いながらライトで指し示された先を見ると……そこには巨大なウーブレック。


ナンダアレ。デッカ。


いやいや、デカイにも程があるだろう。普通のウーブレックが大体両手で抱える程度なのに、ライトに照らされた先に見える奴は高さ3メートル、横は5メートル位か? とにかくデカイ。

思わず口を開けてポカンとしてしまったが、その間にシュウメイ君は鑑定を終わらせたようだ。


「アレ、間違いなくウーブレックです。でも頭にクイーンって付いてます……後、亜種とも」

「クイーンウーブレックの亜種じゃと? 想定外じゃ……この間見回った時にはあんなのは居なかったはずじゃが……よりによってクイーンの亜種かい。

 考察は後じゃ。皆、ゆっくりと静かに下がるぞ。刺激せんようにな」


社長の緊張した声に全員が身体を強張らせる。ゆっくりと静かに下がりある程度戻った所で社長から声がかかる。


「もう良かろう。ふぅ、しかし肝が冷えたわぃ。何でこんな所でクイーンの亜種が発生したか知りたい所じゃが……。

 何よりもあのクイーンをどうにかしないとの……今の面子だと少々手に余る。色々と厄介な特性があるからの。一先ず一旦戻ろう」


社長の指示の元、一旦水道会社まで戻る。そのまま会議室まで通り、全員盛大なため息を吐いた。何でここまで悲壮感漂う感じになってるのか全然分からん。


「さて、理由はどうあれ地下水道にクイーンウーブレックの亜種が居た。どうしてあんな場所であんなものが発生したのか、原因を突き止めたいという気持ちは大いにある。

 ……が、それは後回し。何よりも先に対処をせねばならん。だがアレはランクDのカテゴリに入るモンスター、故にワタル君とシュウメイ君への依頼は中途半端ではあるが達成とさせて貰おう」


そう言うと社長は俺とシュウメイ君の受注表にサインをして渡してきた。シュウメイ君が受注表を受け取る際に社長に質問を投げかけた。


「ランクDのモンスターって事はギルドクラスが最低でもCのグループが対処に当たるって事ですよね?」

「そうじゃのぅ、ランクC……人数は最低でも6名。可能なら解毒の魔法がある事が望ましいかの。

 なんせ亜種じゃから下手にランク通りに受け止めると手痛い攻撃を食らうからの」


何か全然わからんので素直に聞いてみた。


「モンスターにもランクってあるんだな」

「まあの。因みにウーブレックはランクGカテゴリ。大人一人でも対処が可能とされとる。尤もウーブレック単体での評価で、コレが群れになるとFランク扱いになる。

 ランクFだと数人のグループで事に当たるレベルじゃな」

「モンスターランクEになると戦闘慣れした人が数人で戦うレベルで、Dだと基本10人規模でやりあう相手です」


社長とシュウメイ君の説明に冷や汗が流れる。この世界のモンスターってそんなに強いの?


「因みにあのクイーンってのは何がそんなに厄介なんです?」

「うむ、普通のクイーンならその増殖力が一番の曲者で、攻撃した端から分裂して普通のウーブレックが生まれてくる。

 これはマジックユーザーがやっても同じでな、一度バラしてからじゃないと魔法でも消滅しないから面倒なんじゃ」

「じゃあ、あの亜種の方は?」

「亜種はその巨体じゃのぅ、生来の増殖力は無くなり分裂もしない。代わりにその巨体で飛び掛られると下手すればそのまま圧死。

 運よく助かっても下敷きにされ、飲み込まれて生きたまま溶かされる。ついでに毒の状態異常付きじゃ」


えげつねぇ。社長の説明に思わず眉根を寄せてしまう。

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