11話 初の魔物退治は以外に呆気ない
翌日、目が覚めて何時も通りの身支度を済ませる。歯ブラシに歯磨き粉、それと切れ味の良いナイフを持って洗面所へ。
ダンブラーに来て、正確にはこの町長宅でお世話になって一番嬉しいのは朝に鏡で身支度を整えられる事かもしれない。何せ今まで旅の途中では川が有ったら水を浴び、水面に映る自分を見てなんとか髭を剃るという生活だったのだ。
あの生活をすると現代社会がどれだけ恵まれていたのかが良く分かる。そして今、少なくとも落ち着いて朝の身支度が出来る事は非常に幸福なのかもしれない。
そんなアホみたいな事で幸福を感じつつ歯磨きを済ませて、いざ髭を剃ろうとした時……俺の脳に一縷の閃きが走る。
いや、そんなまさか……そう思う反面、コレが出来たら非常に便利だと思う。便利になるなら……試す価値はあるよな?
その考えとは超能力で髭を引き抜くという事……毎朝の髭の処理、その面倒が一瞬で片付くならば……革命じゃなかろうか。不安と期待を込めながら……鏡に映る自分の顎に生える髭へと視線をやり、集中する。
引き抜く……回転させて引き抜く。綺麗に……根こそぎ……、抜く。
自分で言うのも何だが、この時は物凄い集中力を見せたと思う。元来何かに集中しやすい性質だったし……まぁ集中している理由は髭の処理っつー何とも締まらない事だったが。
鏡の中の対象を見ながらやれるという感覚が湧いてくる。そして超能力のトリガーとなる一言を頭の中で唱える。
回転スタート
その瞬間。
「~~~~~~~っ!!!!!」
俺の顔にあった髭が全部吹き飛んだ。
吹き飛んだというか抜けて顔から離れた髭は俺の目の前で一つの塊になって回転している。
多少頬に違和感……というか髭を抜いた際の感覚と言ったら良いか……それが顔全体に……ちょっとピリピリしてるけど鏡を覗き込むと俺の顔に髭は一本足りとも生えていない。
びっくりする位綺麗に抜けてる。一先ず水で顔を洗ってから一呼吸。
更に鏡を覗き込んでじっと自分の顔を見る……コレなら角質とかもいけるんじゃね? 髭が大丈夫なら角質もワンチャンあるかも?
レッツトライ。
いけました。鼻の角質だけじゃなく、顔全体いけました。
すっげー! 超能力すっげーーーー! まじで!! 本気で便利だわこの能力!!
思わず鼻歌が出る程に便利な使い方を覚えてご機嫌で朝食をご馳走になる。本来なら昨日買った投擲武器の試運転とか考えてたけどそんなの後々。
機嫌の良い俺の様子が気になったのかマリアさんが俺に聞いてきた。
「ワタルさん、朝から随分機嫌が良いけど何か良い事あったの?」
「いやー、ホラ、例のアレ。アレの使い道を一つ覚えましてね? お陰で物凄く機嫌が良いんですよ」
「って言うと……昨日聞いてきた奴の使い勝手が良かったのかしら?」
「あー、そっちはまだ試してないんです、そういう方面じゃなくて別の使い道を見つけましてね」
「あら、そうなの?」
「ええ、そうですね。美容方面での使い道があったんですよ。上手くやればかなり便利ですよコレ」
それを聞いて次いで口を挟んだのはフリゴさん。
「美容……私もいい歳だから美容には気を使っているのだけど……何が美容方面での使い道があったのかしら?」
「んー、女性には余り関係無いかもしれませんよ?」
「というと?」
「ギフトつかって無駄毛とか髭の処理が出来るってだけですよ。後は肌の掃除? みたいな感じですね」
その瞬間、穏やかだった町長家の朝食風景が一遍、女性陣の空気が重いモノへと切り替わる。
「へぇ、それは……因みにどんな風に無駄毛の処理が出来るのかしら? 後お肌の掃除というのも気になるわぁ」
「簡単に言えば短い時間で一度に全部の無駄毛を抜く事が出来るってだけですよ。後は肌に溜まった老廃物の除去……まぁお肌の掃除をして綺麗にするってだけですね。
尤も、まだきちんと検証した訳じゃないんで他の人にも使えるかとか。使用の条件とか色々確かめないといけない事も山積みですけどね」
そもそも自分には使えたけど他人にも使える保障は無いし、触って無くても超能力が作用するのかが問題だ。
自分の髭だから……自分に生えてるから作用したのか。それとも対象に触れずとも超能力を使えるのか。
もし触れずに使う事が出来るとしてもどの位の範囲でなら可能なのか。目視が必要なのか、必要じゃないのか。
多分調べる事は一杯あるだろうけど、ある種のビジネスチャンスになるんじゃなかろうか。
まあ別に今すぐコレを進める必要も無いからギルドの仕事を優先してレベル上げをしたほうが合理的かな? スキルポイント欲しいし、MPとかも伸ばしときたいからなぁ。
「何にせよ暫くは物を使って検証して……ある程度概要が分かったら協力者探すって感じですけど、ギルドのお仕事もあるからソッチ優先しないといけないし。アレ? 結構忙しい?」
確認の為に口に出して指折り確認してみると色々と消化すべき事が多いな。急いでやる必要は無いけど検証ってさっさとやりたいんだよねぇ。今日の仕事終わったらギフトの検証するか。
ちょこちょこ世間話をしながら食事を終え、服を着替えて水道会社へ向かう。今日は予備として買った服、そして町長さんの使わなくなったおさがりの靴を履いて会社へ。……何せ俺の靴はまだ乾いてないから。
水道会社に到着。時間は集合時間の10分前位かな? 二日目だから迷う事も無くすんなりこれたぜ。昨日は迷う事折込済みでかなり速く来たけど今日は10分前だからそこまで待たなくても大丈夫かな。
「おはようございまーす」
「おう、又お前さんが一番乗りかい」
「昨日よりも大分ゆっくり来たんですけどねぇ」
「どうせ集まるのに時間が掛かるんだ。ちょっと話し相手でもしながら待ってろ。茶位なら出してやるからよ」
「ご馳走になりまーす」
暫く社長さんと話しながら受付で待つ。昨日の待機部屋だと人が来た時に分からないからねー。それにしても何で社長が受付やってるんだろ。
折角なので爺さんの趣味である魔物の研究についてちょっと聞いてみると、もうそりゃ凄い勢いで喋り出す。しかも止まらない。
俺としてはウーブレックの事をちょっと詳しく聞けたらいいな、位で振ってみた話題だったが、ウーブレックの観察で何がキツイとか新しい発見をした時の喜びとか。
それって観察者サイドの苦労やん。そう言わなかったのは自分が大人だったからだと思う。決して面倒だから喋らせ続けたって事ではない……多分。
兎も角、喋りたい事を只管喋らせ、それを聞きながら時折相槌をうっていると残りの人間が大体集まったようなので部屋へ。
因みに受け付け業務は途中で別の社員さんと交代してました……仕事より趣味を優先させれるってある意味すげぇよな。
爺さんとの会話を切り上げて待機部屋で待つこと10分程すると、昨日と同じ様に爺さんが社員二人連れて部屋へ入ってきた。
「先ずは昨日に引き続き仕事を引き受けてくれて感謝する。依頼書にも書いてあったと思うが君等にはウーブレックの処理を頼みたい。
やる事は簡単、昨日箱詰めしたウーブレックを荷車に乗せて指定の場所まで運び、運んだ先で処理をする。
因みに処理の仕方ってのは此方で用意した木の棒で叩くだけだ。叩く際に余りに強く叩くと酸が飛び散る、この酸に下手に触れると火傷した様に皮膚が爛れるから注意だ。
……後は一応あんた等が選ばれた選考基準も言っておくとだ。この部屋に居る7名、殆どがギルド側から頼まれて依頼を出した」
爺さんの言葉に俺等は全員クエスチョンマークを頭に浮かべた。
「早い話が、ギルド側からお前さん等は『レベルが低いからレベルを安全に上げる機会を与えてくれ』と言われたから選んだって訳だ。勿論ソレを言われたのはこの場に居る全員じゃないが、少なくともその中でマトモと思える奴を選考しといた。
この機会をどう捉えて行動するのかはお前さん等次第だが、折角なら有効活用出来る事を祈っとるよ。それじゃあ残りの説明は任せたぞ」
そう言うと爺さんは部屋を出て行き、残った二人の社員が説明の続きを始めた。
午前中の内に荷車へ箱詰めされたウーブレックを全て乗せてダンブラーを出発。町から1時間程の場所で箱を下ろして中身を取り出し、1匹ずつ棍棒で潰すという作業を繰り返し。早ければ大体2~3時間で終わるらしい。
元々はこの作業を全て水道会社だけで行っていたのだが、ある程度のレベルまで行くとそれ以上は中々上がらないらしく。だったらギルドに依頼して労働者全体のレベルの底上げをしたほうが良いという結論になり、ギルドに依頼を出すようになったんだとか。
お陰でダンブラーの町は高レベルの労働者は少ないものの、低レベル層が薄く全体の労働力が高いというちょっと変わった町として有名らしい。
後で聞いた話だが、こういった労働者にある程度の旨みのある仕事ってのはギルドに依頼をする際、町から補助金が出て報酬の一部を負担しているのだと言う。
上手い事経済を回してるんだなぁ等と考えながらいざ、荷運びの仕事。中庭に止めてある馬車の荷台に、昨日箱詰めして地下水道から持って上がったウーブレック入りの木箱を積んでいく。
どうにか一人で持ち上げて荷馬車へ乗せる。それを横目に残りの6人はひょいひょいと箱を詰んで行く。
ステータスの筋力の値をもうちょっと振ろう……そう思ってしまうのは仕方ない事だと思う。
午前中90分程を使って積み込みが終わり、少し早いが昼の休憩に入った。昼飯をどうするかと考えつつ、迷子になるとマズイと思いスキルの『マップ精製』を使う。
消費コストはMP9とちょっとお高いが効果範囲内の知ってる建物等は注目すると情報が噴出しで出たりする。更に言えば追加のMPを支払うと実際の地図として手元に残るのがこのスキルの凄い所だろう。
早速マップを見ながら辺りをうろつく。と言っても最終目標は昨日の食堂でその道中の露天や店を冷やかしつつ情報収集をするだけだ。
食堂に向かいながら周りを見ていると、妙な物があった。気になって足を止めてソレを見る。
気になったのは指輪。普段アクセサリーなんざしないし興味もあんまり無いが何故か目に留まったのでしげしげと見る。
色的に……鉄(?)の指輪に細かい彫りが施され黒に塗りつぶしてある。そこに白い金属が絡まる様に這わせてあり、見た目は一見地味だがちょっと格好良い。
値札なんて付いていないので幾らか聞こうと思って顔を上げると、売り子さんの何と怪しい事か。気が付いていなかったが地面にゴザの様な物を敷き、赤い綺麗な布に指輪を並べ、売り子さんはボロのローブを目深に被っている。
思わず言葉に詰まったが居心地が悪いので一先ず値段を聞いてみる。
「えっと、この指輪ってお幾らですか?」
すると目の前のローブを着た人は懐から紙を出してこちらに見せてきた。そこには『7000W』の文字。
これ一つで昨日買った投げ物より高いのかと思ったが指輪とか装飾品ってそんな物かとも思った。後目の前の人物の紙を持つ手が包帯だらけだったのも相まって『やっぱりいりません』とは言い出せず、ついその指輪を買ってしまった。
手痛い出費をしたもののデザイン自体は嫌いじゃないので取り合えず左手の人差し指に嵌めておく。気持ちを切り替えて食堂へ入りお昼を注文する。
この日は日替わり定食を大盛りで頼んだ。スパゲッティーが出てくるとは思わなかったが上にかけられたソースが非常に少しピリ辛で美味しかった。
お昼から戻ると早速馬車へ乗り込みダンブラーを出発する。食事を終えた時間が結構ギリギリだったのでダッシュで戻った俺は息切れしながら荷馬車の隅っこでうな垂れながら休憩を取る事に。
そうやって俯きながら息を整えてると肌が黒くガタイの良い男性に声を掛けられた。確か昨日同じ班で動いていた人だと思う。
「よう、大丈夫か? 大分きつそうだけど」
「はぁ……はぁ、っはあー。大丈夫ですよ、単純に体力が無いんで休んでりゃ直ぐ復活しますから」
「そっか、悪いな。変な事聞いて」
「? いいえ、構いませんよ」
「……お前、良い奴だな。俺はドゥーブ、お前は?」
「ワタルです。宜しく、ドゥーブさん」
「じゃあドゥーブさんは子供の頃にダンブラーに?」
「あぁ、俺がまだ8歳の頃だったから……もう15年だな。元居た村はもう廃村になっちまってるが、それでも生まれ故郷だからなぁ。偶にご先祖の墓参りついでに里帰りさ」
「はー、しかし凄いなぁ。23でもう結婚して子供も居るのかぁ」
「おいおい、ワタルだって直ぐ結婚できるだろ。ちょっと変わった肌の色してるけど顔立ちも悪く無いし、それだけ若けりゃ言い寄ってくる女位居るだろ」
「いやぁ、俺こうみえても32なんですよ」
「……はぁ? え? 本気で言ってるのか?」
「そうですよ。32歳の独身。恋人無し」
ドゥーブ絶句。俺が32ってそんなにオカシイ? まぁちょっと若返ってるっぽいけどソコまで急激な変化は無いはずなんだけどなぁ。
「こいつは参った。まさか年上とはねぇ、生意気な口を利いちまった。申し訳無い」
「へ? あぁ、気にしなくてもいいですよ? 仕事仲間で一々敬語って変でしょ。立場の違いがある訳でも無いし」
「そっか……ありがとなぁ、俺敬語が苦手でよぉ。普通の仕事じゃ中々そうも行かないから結構苦労してさ。まぁ敬語使わなきゃいけねぇってのも分かるんだけどな」
「世の中そんなモンでしょ、思ったとおりには中々ならないでしょ。俺だって今世話になってる所から自立したいけどお金が無いから簡単には行かないし……大変ですわ」
試しにドゥーブに一人暮らしの時の生活費を聞いてみたが中々にかかる。その中でも一番高いのはいざと言う時の治療費だった。
「真面目な話だけどよ。労働者の中でもギルドをメインにやる奴ってのは多かれ少なかれ危険がある。勿論ソレ込みでの報酬だが正直割りに合わない訳よ。
何せ薬を買うにしろ医者にかかるにしろ金がかかる。最近はギルド経由なら割引が効くとかあるけどさ。それでもやっぱり高い訳さ。
そうだな、いざって時の為に10万はあったほうがいい。勿論これは最低限の値段な?
簡単な毒の治療でも最低1万はかかるし、怪我だと10万でも足りない事なんてザラだ。だから大体俺等みたいな奴は月に10万W位は貯金してる。
それを考えると……そうさなぁ、月に28万は最低でも稼ぎたいよな」
「28万……結構しますね」
「最低限それくらいだな。怪我をしないって前提なら15万もありゃ多少遊んでも普通に暮らせるけどよ、流石に身体を張る仕事だとそういった事も考えないといけねぇしな」
やはり中々に厳しい。ファンタジーな世界なら割と馬鹿やっても何とかなるってイメージだったが、世の中そんなに甘くは無いらしい。
「世の中金なのかねー」
「そりゃ金だろ。ワタルだって金が必要だから働いてるんだろ?」
「何かこう……上手い設け話が欲しいわ」
「ははは、そんなんあったら俺がやってるっつーの」
今日の依頼が25000Wで二日間で50000W。稼ぎだけ見れば割と簡単そうだけど色々諸経費が掛かって手持ちは今8000W。
怪我の危険性を考えるとやっぱもうちょい稼ぎたいよな……でも新人でもこれだけ稼げるってのは危険手当込みこみなんだろうなぁ。
「ま、後はレベル上げてスキル取れたらラッキーって所だな。覚えたスキルによっちゃ新しい仕事に就けるかもしれねぇし、地道にやってりゃスキル無しでも働けるしよ」
「そうなんですか? 何かスキル無いと出来ないってイメージがありますけど」
「そりゃ有ったら楽だけどよ、無くても出来るぜ? 必要に迫られりゃ人間誰しもやってやれない事はないさ」
こっちの世界も意外と向こうと変わらないんだなぁ。魔法ってのが有る分向こうと全然違うとか思ってたけどそんな事も無いし。
暫くドゥーブと話ていると周りの人からも話しかけられ、色々と喋ってみた。皆若いが地に足を付けて仕事頑張ってる。更に半分が嫁さん持ちだったわ……知らない間にリア充に囲まれていたのか。
相変わらず実年齢を言って驚かれたりしながらも荷車は進み、1時間位進んだ所で止まった。下りてみると木が開墾されて小屋が立っている。
荷車を運転していた水道会社の人に聞くと、どうやら此処でウーブレックの処理をするらしい。何やら社員さんが小屋の人と少しやり取りをしてから事前の打ち合わせ通りに作業を開始する。
箱詰めされたウーブレックを降ろして蓋を取る。すると昨日見た時より幾分小さくなったウーブレックが居る。
ある程度荷卸が終わった状態で今度は棒を渡された。装飾が施され先端に小ぶりの玉が設置されている。説明じゃこの玉に少量の魔力を流すんだっけか。
早速渡された木の棒を手に取り魔力を流してみる。まるで冷たい金属製品を触った時の様な、自分から熱が抜け出るような感覚の後、先端に取り付けられた玉と棒に施された装飾がぼんやりと光る。
ソレをウーブレックにゆっくり突き立てると、まるで生クリームに突っ込む様に簡単に入る。昨日の作業と比べると全然違う。簡単に棒を突っ込む事が出来る。
昨日との違いは棒を突っ込むとウーブレックが溶けるって事か。棒を突きたてられたウーブレックは身体がドロドロと溶け出しあっという間に全て溶けてしまった。……地面に強烈な刺激臭を残して。
すいません、正直なめてました。ウーブレックの溶解液(?)ってこんなに強いのかよ。目と鼻が痛い。匂いだけなのにコレって相当だぞ。
口元を押さえながら少し下がって周りを見ると皆似たような状況だった。と思ってたら一人失敗した人が居ました。ドゥーブぇ……。
どうやら潰す際にちょっと力が強かったらしく太ももに少しだけ引っ掛かった溶解液で服が溶け、皮膚が爛れている。直ぐ様薬を使ってたが大丈夫だろうか。後で聞いてみよう。
一人の犠牲者によってその危険性を再確認した俺は、先ほど以上の緊張を持って作業に当たる。ゴム手袋と長靴は支給されてるが太ももとか胴体は守られてないからなぁ。
ちまちまとウーブレックを潰す事3時間。途中で休憩を取ったりもしたが、どうにか全てのウーブレックを潰す事が出来た。その所為でこの辺りの地面一帯にウーブレックの溶解液が散らばってるんだが。
因みにドゥーブは火傷の後、暫く休憩していたがある程度したら精力的に作業をこなしていた。何でも怪我したぶん経験値で元を取るんだとか……何ともバイタリティに溢れた奴だ。
無事にウーブレックの処理が終わり後片付けをして荷車へ乗る。ウーブレックの処理依頼だけならここで終わりだが、確かこの後町に戻ってから追加依頼の原因調査に行くから今の内に休んでおこう。それとドゥーブの様子を見とくか。
「ドゥーブさん、足大丈夫か?」
「ん? ああ、ワタル。多少痛いが、まあソレ位だな。水道会社の人間に薬貰えたし、ちゃんと手当てしてりゃ2週間位で治るそうだ」
「2週間かぁ……長いな」
「2週間は痛いが……それでも身体が資本だからな。ま、仕方が無いさ。傷が治るまでは大人しく町中の仕事だけにしとくさ」
ドゥーブは暫く嫁さんにどやされると凹んでたが暫く話すと寝てしまった。周りの人間も殆ど寝てる。レベル低いと体力も低いのかなー。や、俺もレベル低いんだけどさ。
そういや俺はレベル上がったのかな? 試しにメニューを開いてみるとレベルの表記が『6』から『8』へ上がっている。
早速ステータスを弄っておこう……昨日の作業で思ったのは力が無さ過ぎてしんどかった。周りの動きを見ると皆軽々と木箱を運んでいたから多少は筋力の値を増やすか。
後は平均的に振り分けて……これでいいかな。
レベル:6⇒8
体力25 ⇒25
精神5 ⇒10
筋力10 ⇒15
頑強10 ⇒10
器用8 ⇒10
速度20 ⇒20
知識5 ⇒10
幸運5 ⇒8
これで良し。後はスキルポイントが10Pか。こっちに関しては色々と効果が大きいから後で考えればいいかな?
何にせよちょっと疲れた。炎天下の元で身体動かすとどうしても汗をかくし体力も減る。原因調査をやる前にシャワーって借りれるんだろうか。そんな事を考えながら外を眺めていると何時の間にか眠りついていた。