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アルフレッド・ゼイナー


「─────以上が、彼女の検査結果の全てになります」


城の上層部中央にある総帥室で、一人の騎士が総帥に画面の大きな電子端末を手渡した。

総帥は背もたれから背を離すと、目から眼鏡を少し離してその画面に目をやる。


「……唾液ひとつでここまで分かるとは、恐ろしい世の中になったのう」


総帥は呑気に呟いた。


「ヘレナ・レノロイズが使ったサンプルの情報を深く掘り下げただけです。彼女が唾液のみでここまでの情報を得たかは分かりません。……まぁ、唾液だけでも不可能ではありませんが」


騎士は後ろ手に組んだまま表情一つ変えずに、総帥の呟きに答える。


「……致合率90.11%……、まさか地球(エラーテ)から聖法師(アレス)が見つかるとはのう」


「これは重大な問題です。彼女が聖法師となれば、良くも悪くも我々に多大な影響をもたらしかねない。それを知っていたからこそ彼女は闇法師(ゼレル)に狙われたのでしょう」


「それには、聖法師にしたくない理由があるのじゃろうな。それも、遠く離れた地球(エラーテ)までわざわざ出向くほどに。……彼女が聖法師になったとして、どんな影響があると思うかの?」


端末を机に置き、椅子に深く座り直す総帥。騎士はというと、後ろ手直立の姿勢を全く変えない。


「総帥の仰る通り、聖法師の種の段階でそこまで始末に執着するとなると、聖法師になった瞬間奴等は血相抱えて彼女を殺そうとするでしょう。そうなるとその脅威から守るために我々も警戒を強めなければなりません」


そもそも、と騎士の話は見解は続く。


「聖法師にしたくないという時点で、彼女は闇法師を脅かすような聖法師に成りうる可能性を秘めているわけです。普通の聖法師ではなく、我々聖法騎士のようにただ単に力があるわけでもない、特異な聖法師に」


「否が応でも彼女を聖法師(アレス)にするべきではないと?」


「我々が、彼女の聖法師化を阻止する体制を取れば、闇法師も狙わなくなるかと」


うーむ、と唸って総帥は顔を沈めた。


「しかし、どうやって聖法師化を防ぐのじゃ。ランディールの話ではもうそれらしい力を発揮したのじゃろう。それも無意識下となれば、もう孵化しかけていると思うが」


「制法錠を生涯にわたって嵌めるか、まだ研究段階ですが抗聖法剤を投与するか───」


「現実的ではないのう」


総帥は一言でそれらを否定した。

しかし騎士も食い下がらない。


「しかし、このまま放っておけば彼女は確実に聖法師と化します。多少強引にでもそれは阻止しなければ、危険な目に遭うのは彼女自身です」


「あの娘自身が聖法師化を望めば止める事は不可能じゃ。一晩経ただけで明日には聖法師になっている可能性だってある。どういう対処を取るにしても、時間はほとんどないしのう」


「皆の意見を聞くには時間がかかります。全ては総帥に一任されているかと」


総帥は騎士に向けていた視線を机の上の端末に移す。表情は厳しく、眼鏡の奥の銀色の目が鋭く光る。


「……どうなされますか?」


「もう少し後で、と思っていたが、明日にはこの話をする。聖法師にするか否かはあの娘の意志次第で決めるとしよう」


「もし彼女が聖法師を望んだ時は……」


「その時は皆で尽力して彼女を守る他あるまい」


騎士は小さく息を吐いて、分かりましたと頭を垂れた。



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