接触
創造主のユーラムと壊神族の天たちが、接触した
┝かつて、この世界は、神が見棄てる前は、とても繁栄していた。
いつくもの國に別れていた人類は、一つの巨大国家を形成し、人類の繁栄に、力を尽くしていた。
【人類は、繁栄し続ける。】
そう誰もが考えていた。
しかし。
ある日、人類は、越えてはならぬ一線を越えた。
【神を越えてしまおう。】
人類は、神を越えようとしたのだ。
それから、だった。
神が世界を見棄てたのは。
神の怒りに触れた人類は、神が落とした大いなる災いにより、世界を破壊された。
その時に、大地に巨大な裂け目が、出来た。
その巨大な裂け目の名は。
【怒りの谷】
神の怒りに触れたことに気付いた人類が、自分達の愚かさに気付き、その名を付けたという。
┝【怒りの谷】は、天と怪のお気に入りの【狩り場】だ。
何故ならば、この地に【紛神】が、出没するからである。
そして、今日も【紛神】が数多く出没していた。
「おーおー♪また、たくさん【紛い物】がいるねぇ〜」
谷の上から、谷底にいる数多くの【紛神】を見ていた怪が、そう呟いた。
「ここまで多いのは、久々だな。ま、そんなことは、関係ないか。ーーーいくぞ、怪」
「オーケーだよ♪とうっ!」
怪が待ちきれずに、谷底に向かい、飛び降りた。
そんな怪に「あ!待てよ!?」と、慌てて飛び降りた。
二人は、谷の壁をうまく使い、谷底に着地してた。
谷底にいた、数多くの【紛神】が、突然、谷底に来た二人に、目を向けた。
「ーーーー【紛い物】が……消えろ。」
天の愛銃【神殺し】が、火を吹き、近くにいた【紛神】の頭が、吹き飛んだ。
『ギュルゥグ!?』
仲間が、やられたことに、他の【紛神】が、驚愕の声を上げる。
その次の瞬間、別の【紛神】の頭に、弓矢が突き刺さる。
『ギュアアアア!?』
「大当りだね〜♪」
怪が、【空裂き】の弓矢が当たったことに、思わず喜びの声を上げた。
「調子良いじゃないか!怪!!」
「そんな天もね♪さぁさぁ!この調子でいこう〜いこう〜♪」
天と怪は、とても良いコンビネーションで、次々に、【紛神】を倒していく。
┝「……ん?何や?」
【怒りの谷】に、視察にしに来た、【五人の創造主】の一人、ユーラムは、突然の銃声と、【神】の悲鳴に、反応した。
「まさか、あの【壊神族】の奴等が来たんか?」
首に掛けていた双眼鏡を使い、銃声のあった方角を見た。
「ちっ……こんな時に、来やがったか。あの様子だと、すぐに、こっちに来るようやな……だが。」
【神】を倒す二人の壊神族の少女を見て、彼女は不敵に笑った。
「………ふふふ。【これ】をエーデルワイスから、借りてきて良かったわ。」
自分の側に置いていた木製の箱を、叩く。
「蛮族……目にもの見せてやろう。ふふふ…」
┝「せりゃあっ!!」
天の掛け声と共に、神殺しの刀を振りかぶり、ザシュっ!と手近の【紛神】を、斬り倒した。
斬られた紛神は、断末魔を上げて、その体を横たえた。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…なんか、いつもより数が多いな…」
「はぁ…はぁ…はぁ…確かに、多いね…」
さすがの、天と怪も、息を上げていた。
あまりにも、紛神が多いのである。
「ひとまず……殺るしかなーーーーっ!?」
「うわっと!?」
二人が、次の紛神を倒そうとしたその瞬間に、二人は、咄嗟にその場を避ける。そして、そのすぐ後に、先ほどまで二人がいた場所を、幾つもの銃弾が穿った。
「な、なんだ!?」
「なんなのよ!?」
突然のことに、二人は、思わず驚きの声をあげた。
そして。
「ふーん…今のを避けるとはぁ、すごいやつやのぅ、われぇ」
倒された紛神の上から、金髪の少女が現れた。
「誰だ!?」
「あぁん?ウチは、ユーラムや。ぬしら蛮族が、敵視する【創造主】や。」
「なん…だと!?」
天は、驚い?ユーラムは、そう言い放ち、手に持っていた【物】、【ガトリング砲・改】を、二人に向けて放った。
「な、なによ、その化け物!?」
「ふふん!化け物やないわ!!これは【ガトリング砲・改】ていう武器や!」
怪の質問に、ユーラムは、思わず答える。
「ガトリング砲…改!?」
「そうや!!銃身10本!弾丸10000発のベルト式!!しかも、自動銃身冷却装置がついていて、銃身が溶けることもない!まさに最強の武器や!」
ユーラムは、【ガトリング砲・改】の性能を、得意気に話し、二人に向けて、更にガトリング砲・改を撃ち続ける。
テンションが高くなっていた。
所謂、トリガーハッピーになっている。
それが。
いけなかった。
「そうか……ならーーーー銃身を斬るだけさ。」
「は?」
ザキンっ
と、金属が斬れるような音がしたと、思うと、【ガトリング砲・改】の銃身が、擦れ落ちた。
「な!?ば、バカな!?ーーーーはっ!?」ユーラムは、ガトリング砲・改の銃身が擦れたことに、気を取られていた。
銃身が斬られたということは、銃身が短くなる。
と言うことは、銃自体が暴発する。
普段のユーラムならば、簡単に解るはずだった。
だが。
今のユーラムは、ガトリング砲・改の発砲の快楽で、トリガーハッピーになっていた。
それが。
彼女の失敗だった。
「ぐわぁっ!?」
銃身が擦れ落ちた瞬間に、ガトリング砲・改が暴発し、その暴発による爆発にユーラムは、巻き込まれた。「っっ……っ!ぐ…」
爆発の衝撃で吹き飛ばされたユーラムは、右目を抑えて、踞った。
「……目がぁっ…っ!?」
チャキッと音と共に、ユーラムの、首筋に、天の【神殺し】が当てられた。
「ぐっ……っ…」
「ーーー【創造主】の一人だと言ったな?」
「……われぇ…!ちょっとは空気を詠めやっ…ぐっ!!」
「私は、お前が【創造主】の一人、というのが真実か知りたいんだ。答えろ。」「……ぐっ!!言うか、ボケェ!!」
どがっ!!
と痛みを堪え、ユーラムは、天を突き放した。隙をつかれた天は、「うぉっ!?」とよろめいた。
「…おんどれらっ!許さへんからなぁ!!覚えとけや!!」
そう言うと、ユーラムは携帯型煙幕弾を爆発させた。
二人は、予想していなかった煙幕に、思わず怯んだ。その隙に、ユーラムは、隠していた、旧時代の遺産【自動車】に乗り、エンジンを掛ける。
「……次に会ったら、殺しちゃる…覚悟しときやっ!」
そう吐き捨てると、ユーラムは、自動車でその場から、逃げ去った。
「……なんだったんだ?アイツは…」
「さぁ?…まぁ、いいじゃん。帰ろ、天。」
「そうだな。帰るか。」
嵐のように過ぎ去った、謎の少女ユーラムに、半ば、首を傾げながら、天達は、怒りの谷を去っていった。
┝「んで〜?アタシが貸したガトリング砲・改を壊されて、挙げ句には、右目を失ったてわけ?」
右目を眼帯で隠したユーラムを前に、エーデルワイスは、呆れたように、そう言った。
あれから、創造主本拠地に戻ったユーラムは、医務室に行った。
だが、右目は、完全に潰れていた。
ガトリング砲・改の破片が、右目に直撃したのである。
「そう言うなや……あの時、ウチはトリガーハッピーになってたんよ。それで思考が鈍ってしまったんや…」
「トリガーハッピーに?うーん……まぁ、解る。アタシもなったもん、トリガーハッピーに。しかし、ガトリング砲・改は壊さないで、て言ったよね?あれ貴重な試作品の一つだったのに…」
エーデルワイスは、大きく溜め息をついた。
彼女の言う通り、ガトリング砲・改は、試作品五個と完成品一個。つまり、計六個しか完成していないのだ。
「すまへん……しかし、ガトリング砲・改の銃身を一太刀で斬るとは思ってなかったわ……」
「アタシ特性のダイアモンドコーティング使用だったのにねぇ……銃身の改良だねぃ。アタシは、これで失礼するよ〜。」
ガトリング砲・改の銃身改良の為に、エーデルワイスは、ユーラムに軽く手を降ると、ユーラムの部屋を出ていった。
「…………トリガーハッピーにならんようせなあかんなぁ…うん…」
自室のベッドの上で、そう思わずユーラムは、呟いた。
┝自分のラボに戻ったエーデルワイスは、直ぐ様、自室に保管していた資料を漁った。
理由は、ユーラムを襲撃した少女達について調べる為である。
『ダイアモンドコーティングを破壊した武器を持つ者……あのダイアモンドコーティングは、あらゆる武器の攻撃を跳ね返す…言わば、強化装甲。まさかとは思うけど……あ、あった。』資料の入った棚から、ひとつの分厚い資料を取り出し、ペラペラと、ページをめくっていく。
そして、あるページで手を止めた。
「ダイアモンドコーティングを破壊する武器……やはり【村正】なのか……?」エーデルワイスが、手を止めたページには、ある武器についての詳細が記されていた。
その武器の名は。
【妖刀《村正》】
太古より、恐ろしいほどの切れ味を持つ、呪われた刀と畏怖されている。
「……これならば、アタシのダイアモンドコーティングを破壊することが可能だけど……【村正】は、もうないはず……ふん。まぁ、いいか。今は、ダイアモンドコーティングの再強化が先だねぇ〜」
パタン、と資料を閉じ、元の場所に戻す。
「まだアタシは、動かないほうがいいね〜」
エーデルワイスは、ダイアモンドコーティングの再強化の為のアイデアを、考え始めた。
あくまでも【創造主】の為に。
【了】
今回は少し短いです