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鋼鉄の指揮官(ハガネノシキカン)  作者: 黒縁眼鏡
第一部ヤポネ動乱編
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第三章「陽動」

第三章「陽動」



司令塔に着くと既にオペレーターが模擬戦の準備を完了していた。

 作戦区域の地図を映し出した大型モニターを確認すると両部隊とも位置についていた。準備の最終確認をとろう。

 長い艶やかな黒髪を縛ってポニーテールにしているオペレーターの橘に連絡を入れてもらう。

「本部よりガンドッグ全機へ。こちらオペレーターの橘です。みなさん準備は良いです?」

「ガンドッグ1レディ。いつでもいける」

「ガンドッグ2レディ。待ちくたびれましたよ」

「ガンドッグ3レディ。余裕です」

「ガンドッグ4レディ。良いとこ見せちゃうぜ?」

「ガンドッグ5レディ。問題無い」

 それぞれ個性の出る応答だ。この組合せで良くうまくできているのが面白い。次は候補生の確認をとってもらう。

「本部よりアームズ全機。こちらオペレーターの橘です。整備班より全員マップスに搭乗済みと連絡が来ています。間違いないですか?」

「「アフマーティブ」」

 候補生全機から通信が入った。こちらも準備完了だ。後は私が模擬戦開始の号令をかければ始まりだ。指揮官用の机のマイクをオンにして、声をはる。

「ガンドッグ全機。アームズ全機。これより、実戦型模擬戦を開始する。各員の健闘を祈る。ミッションスタート!」

「「イエッサー!」」

 全機からいい返事が返ってきた。やる気があって実に頼もしい。

 モニターを見るとそれぞれが動き出していたので、橘にガンドッグに課したハンデの連絡と実行をしてもらう。

「本部よりガンドッグ全機へ。これから先はジャミング地帯です。こちらからのレーダーを始めとする通信バックアップが行えません。注意してください」

「ガンドッグ1。ラジャー」

「橘ちゃーん、ジャミング施設なんかとっととぶっ壊すから待っててねー。あ、でも先に頑張ってとか言ってほしいな」

 ガンドッグ4の軽口に橘は表情一つ変えないで受け流した。

「ガンドッグ4。作戦中です。私語はつつしんでください」

 かわいい顔して実にクールな対応だ。

ガンドッグ4はお構いなしにそんなとこが素敵とまだ減らず口を叩いていた。

「通信を遮断します。頑張って下さい。応援してます」

 橘の操作により、こちら側からの通信は入らず、向こう側からの通信は入っている状態になっているので、歓喜の声がこちらにダダ漏れになっていた。

「くぅぅ、橘ちゃん可愛い! マジ可愛い!」

 ガンドック4の興奮ぶりにおのおの突っ込みを入れてるのが聞こえて思わず苦笑いをする。

「作戦中ですよ。まったくどうしてあなたはこうも頭の中が空っぽなのか。そもそもですね。あなた一人に向けて言った訳ではないでしょう」

 とやたら理屈ぽくつっこむ女性の声はガンドッグ2。

「バカ。本部には通信丸聞こえ。今頃笑われてる」

 と抑揚のない女性の声でつっこむのがガンドッグ3。

「問題無い。いつものことだ」

 と冷静で低い男性の声はガンドッグ5。

「お前ら仲が良いのは結構だが、そろそろ真面目にやれ」

 と渋い男性の声を発する隊長のガンドッグ1が最後に締めるのが彼らの様式美だ。そんなつっこみの嵐の中ガンドック4がどれだけ橘が自分に親切にしてくれるかと抗議の声をあげている。

「君も苦労してそうだな。橘君」

 きょとんとした顔でこちらに振り向いている。思わず言ってしまったがしまった作戦中だった。

「いえ、それほどでもありませんよ。彼一人だけじゃないので慣れてますし。それにこの程度でやる気を出してもらえるなら安いものですよ。案外男ってちょろいですよ?」

 ニッコリ笑いながらとんでもないことを言い出した。今のを勘違いしている連中が聞いていたら大変かわいそうなことになりそうだ。

 今はこれ以上余計なことは言わないように仕事に戻ってもらおう。というか計算でやっていたのか、誰が結ばれるかはしらないが頑張れ。

「そうか。その人心の扱い方については非常に興味深い話題だが、お喋りはここまでにしておこう。アームズの方はどうなっている?」

 橘は自分の端末に向き直って報告する。

「ソードが残り三十秒で待機地点に到着。他のチームは既に目的地で待機、迷彩起動中です。ガンドッグが海岸に到着するのは大体五分後かと」

 作戦地図をこちらも確認する。思ったより早いな。アームズ各機のレーダーにも情報は転送してあるが、注意を促す。

「ビッグハットよりアームズ全機。敵部隊が接近中。レーダーで確認出来ているか?」

「「アフマーティブ」」

 よし、全員レーダーを見ている。次に最初に交戦するソード三機の様子を確認しよう。

「ビッグハットよりソード全機へ、敵部隊との推定交戦時間まで三分を切った。指定ポイントにダミーバルーンを射出し敵との交戦を始めろ」

「ソード1了解」「ソード2了解」「ソード3了解」

 山と山の間を挟んで東西にダミーを二機ずつ設置したことをモニターでこちらも確認をする。

「ソード1よりビッグハット。ダミーの設置が完了しました。これより敵陽動にあたります。」

「こちらビッグハット。ダミーの設置を確認した。陽動で撃破されるなよ。気をつけろ」

「「了解」」

 そして一分後、ついに海上10m、彼我の距離が6kmで双方が敵を補足した。「ガンドッグ」

「アームズ」

「「交戦開始エンゲージ!」」

 交戦開始の合図とともに、最初に発砲したのはアームズ側だった。距離は6km。通常アサルトライフルで当てられる距離ではないが、弾は当たらなくても良い。ただ注意をひきつけるための、射程外からの射撃だ。

 それに対して、ガンドッグの方も通信を聞く限りこの射撃に戸惑っている。

「この距離でアサルトライフル撃ってくるなんて、候補生達よっぽど緊張してんのか? この距離はロングレンジライフルでも割ときついぞ」

 背中のブーストを使って真っすぐ飛んでいた機動から、肩と腰と脚部についているサイドブーストを噴射し、大きく横に一回転する回避行動を取りながら曲芸飛行でガンドッグ4が少し小馬鹿にした口調で疑問を口にすると。

「油断するな。常識を無視した行動には裏があるかもしれん。全機周りに気をつけ、回避行動をとりながら前進。真っ直ぐ飛ぶなよ。距離による減衰があるとは言え当たると面倒だ。ガンドッグ5は、ロングレンジライフルで応戦しろ」

「ガンドッグ5ラジャー。スコープモードで狙撃する。視界が狭まるので何か情報があれば通信を頼む」

 隊長であるガンドッグ1は緊張がゆるまないようしっかり部隊の気を締めて反撃にうつってきた。

 距離がまだあいている状態とは言え、真っ直ぐ飛んだら当たる可能性があるのと、本命の攻撃がいつどこから来るか分からない状況だ。いきなり距離を詰めず回避を優先する彼の判断は正しい。

 こちらもソードに通信を入れる。

「ビッグハットよりソード全機へ。交戦開始を確認した。敵スナイパーの射程圏に入っている直撃を防ぐためにシールドを展開。シールドの隙間から牽制射撃を続けろ」

「「了解」」

 ガンドッグ5が狙いを定める間に、ソード三機は肩と腰についていた縦3m横2mの実体装甲をアサルトライフルの先端が隙間から出るように浮かして展開する。そしてその装甲の隙間から牽制射撃を続けた。

装甲を展開していたおかげでガンドッグ5が最初に撃った弾三発は防ぐことが出来た。

 ソードが防御体勢をとり、弾が防がれたことをガンドッグ5が早速報告する。

「ガンドッグ5よりガンドッグ1へ。敵、浮遊型装甲を展開し防御姿勢をとっている。距離は現在5km。射撃は当てられるが、防がれている」

「ガンドッグ1から各機。牽制射撃を加えながら距離を一気に詰める。フォーメーション(ハント)が可能な距離まで他方面から攻撃が無ければ、そのまま仕留めるぞ。全機高度を一旦上げるぞ」

「「了解」」

 ガンドッグ全機が上昇のために脚部・背部ブーストの出力を上げ一気に高度を100mほど上げた。

 防御体勢に入った相手を切り崩すには近距離からの多方面攻撃が有効と判断し接近を選択。さらに、恐らく近づいたタイミングで伏兵から攻撃があると考え、敵の位置がわかりやすい上空に高度を上げだのだろう。

 このタイミングで伏兵に気をつけているなら、そのまま利用させてもらうか。

「ビッグハットよりソード全機。浮遊装甲を展開しながら後退。敵との距離が2kmを切ったらシールドを解除し、全速力でダミー設置ポイントまで後退せよ」

「「ラジャー」」

 距離が4kmを切り、アタッカーであるガンドッグ2、3、4からのマップス専用に開発されたレールガン、通称レールライフルの射撃が始まった。

 今の所、ソード三機は機体を左右にふって回避行動をとりながら後退し、浮遊装甲で直撃を防いでいる。

 ガンドッグの方は全機が華麗にブーストを噴射し、縦横無尽に回避しながら、レールライフルを撃ち続ける。数発をぶつけながら、なかなか敵の撃墜が出来ないことにガンドック4がぼやき始めた。

「自分も乗ってて言うのはなんだけど、相手をするのが面倒というか、マップスってホント頑丈だな。戦車やらヘリならとっくに壊れてるだろ」

 ガンドッグ2が話題に乗っかり応答する。

「さすが、最高の現代兵器と言われているだけあって、簡単には落とせないですよ。ただでさえ、機動力が高くて捉えにくい上に装甲も堅い。しかもその装甲より頑丈な浮遊装甲を展開中ですし、そもそも浮遊装甲も頑丈じゃなかったらわざわざ武装として登録されていませんよ。それにですね」

 いつもの長話をされると面倒だと思ったのかガンドッグ3が制止をかけた。

「先輩長話はストップ。距離が3kmを切りました。残り1kmでハントの距離です」

 相変わらず戦闘中でも声に抑揚がない。しかし、回避行動と射撃をしながら余裕で会話するとは良くやるよ。

 対照的にソードは攻撃を受け続け余裕が無くなって来ている。

「橘。今のままのスピードだと何秒後に目標距離になる?」

 三秒ほどで答えを出してもらえた。

「三十秒後です」

 何とか持つだろう。続けざまの攻撃で混乱に陥らないように声をかける。

「ビッグハットよりソード全機へ。残り三十秒で敵との目標距離だ。もう少し耐えろ。浮遊装甲はそう簡単には破壊されない。今のまま上手く防ぎながら後退だ」

「「ラジャー」」

 まだ大丈夫。パニックにはなっていない田口軍曹は良い教育をしてくれている。徐々に距離が詰まり3kmを切ったところでガンドッグが速度を更に上げた。

「ガンドッグ1より、ガンドッグ全機へ。フォーメーション(ハント)」

「ガンドッグ2、お任せあれ」

「ガンドッグ3、仕掛けます」

「ガンドッグ4、待ってました!」

「ガンドッグ5、いつでもいける」

 ファイターのガンドッグ1を先頭に左右にアタッカーのガンドッグ2と3がつき、その後ろにガンドッグ4、そしてスナイパーのガンドッグ5が続く。

 ソードの三機は横一列に並んでいたが、ガンドッグ5がソード2に右手のロングレンジライフルをソード3には左手の粒子砲を連続で撃ち始めた。

 ソード2と3の意識を防御に集中させ、ソード1には残りの四機で集中攻撃を始める。

「今までのは手加減してたのか?!」

「ソード1ドジふむなよ!」

「後退まで後何秒?!」

 距離を見るとまだ2.5kmだが、通信から聞こえる候補生の緊迫した声と状況から、さすがにこれ以上近づかれると被弾する可能性があると判断した。

「ビッグハットよりソード全機へ。敵が本気になった。予定より早いが状況が悪い。こちらでポイントを指定する。全速で後退しろ」

「ソード1ラジャー。ロックアラート鳴りっぱなしで、生きた心地がしなかったですよ……」

 ソード三機は機体を反転させ、展開中の浮遊装甲を全て背面に取り付け背中、腰、脚部につけられている全てのブーストを噴射し、後退を始める。転身した際に多少の被弾があったようだが、浮遊装甲を全て背面に取り付けた結果直撃は免れた。

後はうまく後ろからの射撃を避けるだけだ。

 ただ、ガンドッグも簡単には逃すつもりは無いらしい。自らは真っ直ぐ飛行しながら相手には執拗な射撃で回避行動をとらせ、距離を詰めようとしている。同じ距離を進むにも真っ直ぐとジグザグや回転の回避行動が混じった進み方では明らかに真っ直ぐが早い。

 だが、ソードは足の早いファイターのみの編成に対し、ガンドッグは足の遅いスナイパーも混じっている。敵を追いかけるのに必死になるあまり味方を孤立させ、伏兵に奇襲される危険は犯せない。その結果、足の遅い機体にあわせた速度となったので、徐々に両者の距離が開いていく。ガンドッグ4が呆れて通信で叫んでいる。

「おいおいおい、突っ込んできたと思って、本気で攻撃し始めたら、本気で逃げだしたよ?! どういうことよ? やる気あんの?」

 ガンドッグ2がその発言に呆れて通信を返した。

「やる気がないのはあなたの頭よ。私達より少ない数で仕掛けて、距離が縮まったら後退ってどう考えても陽動でしょう。待ち伏せか後ろに既につかれているかのどちらかね」

「あぁ? 俺は常にやる気に満ちあふれてるよ! それにレーダーには敵影は映って無いぞ。熱源反応も今の所あの三機しか無いし挟まれてはいないだろ。大体、ルーキーにそんな小賢しいこと出来んのか?」

 ガンドッグ5が更に通信を割り込む。

「ガンドッグ4落ち着け。相手を過小評価しない方が良い。だが、今スコープでも後ろを確認しているが、確かに敵影は見えない。まだ挟まれてはいないようだ」

 そして、ガンドッグ3が続いた。

「となると、考えられるのは待ち伏せですか?」

 ガンドック3の発した確認に、最初に待ち伏せの可能性を提案したガンドッグ2が返事をする。

「いきなり海の下から飛び出して来るとか考えられるけど、陸地で待ち伏せというのも考えられるわね。何にせよバックアップが無いのは厄介よ。出来ることは良く周りを観察するのと突然敵が出てくることに対する心の準備くらいかしら」

 やれやれとため息混じりに説明を終えると、隊長のガンドッグ1がメンバーに指示を出した。

「ガンドッグ2の言う通り待ち伏せの可能性が非常に高い。敵が反転した瞬間には気をつけろ」

 とまず部隊に注意を促し、話を続ける。

「ただし、注意のし過ぎで速度が落ち、捕捉済みの敵を見失い、不意打ちでも受けようものなら話にならない。基本このままの速度で飛行し、補足可能距離を維持するために適宜速度を上げるぞ」

「「ラジャー」」

 良く敵を見て警戒してくる。良いチームだ。これは私の策略が見破られるかもしれないな。

 モニターに映るレーダーを見ていると、何とかレールライフルの射程圏から抜け出したソードは後少しでダミーのある海岸線に着くところであった。少し緊張感が切れたのか私語が聞こえる。

「おい、伊東。佐藤。さっきのすごかったな。ロックアラート鳴りっぱなしで、浮遊装甲が銃弾を受ける音がガンガン鳴ってさ。実弾だったら危なかった……」

 ソード1がコールネームではなく名前で呼んでいる。

 伊東と呼ばれたソード2が返事をする。

「コールネームじゃなくなってるぞ斎藤。ってこっちもか。俺もロックアラート鳴りっぱで、粒子砲撃たれてたから目の前が緑でいっぱいになってたよ。装甲間に隙間を作ったらやばかった」

 ソード3が会話に乗っかる。

「後退が早まって良かったね。もう少しあのままだったらやばかったよ。って、うわ!?ソード1の浮遊装甲がペイント弾の色で真っ赤になってる! って私のもか」

「あんだけ撃たれればなぁ……」

「私達、良く撃墜判定にならなかったよねぇ」

 ソード1が大きくため息をついたようだ。海岸線がもう目の前に迫って来ている。海岸線付近でもう一度敵を引きつけなければならないと思うとため息の一つでもしたくなったのだろうか。

 私は彼らの気を落ち着かせるために、お喋りを聞かなかった振りをしていたが、そろそろポイントなので、気をもう一度引き締めて貰うために指示を出す。

「ビッグハットよりソード全機へ。まだ誰も落ちていないな。ポイントは目の前だ。ここでもう一度敵を引きつける。気を引き締めろよ」

 了解と三人から応答が返ってきた。ここからが正念場だ。

ソード三機がポイントに到達し機体を反転させ、浮遊装甲を再度展開し敵を迎えた。

「ガンドッグ1より各機。敵が足を止め、こちらを向いている。恐らく罠だ。牽制射撃を加えながら左右に分かれて挟み込み、待ち伏せより早く敵を撃破するぞ。フォーメーション(クロー)」

 ガンドッグ1の合図でまとまって飛んでいた部隊が左右に分かれた。

 左にガンドッグ1と4、右に残りのガンドック2と3と5からの二方向から挟み撃ちをするようだ。

 このフォーメーションは左右どちらかに注意を逸らせ浮遊装甲をずらし、ずらした隙間に弾を打ち込む戦術に用いる物だ。

 この戦術は部隊の息が合えば合うほど防御を切り崩しやすくなる。ソード3機が防御で敵を引きつける予定だったのだが、非常に相性が悪い戦術だ。

 しかし、次の仕掛けのために今回はギリギリまで近づいて貰わなくては意味が無い。動きの速い回避起動では潜伏中の部隊が捕捉される危険や仕掛けの先に行かれてしまう恐れがある。

 そのためにもソード三機にはゆっくりと下がって貰わなければならない。

「ビッグハットよりソード全機へ。フォーメーション(タートル)、防御面に隙間を作るな」

 横一列の並びから、ソード一機を前面に残りの二機を三角形になるように背中合わせで密着させ、浮遊装甲を各機の前面に展開することによって前方180度を防ぐ陣形だ。

 距離が空いている間はミサイルと銃弾の雨をフレアと浮遊装甲で何とか防げていたが、距離が1kmを切った時、ガンドッグ3が他の隊員に通信を入れた。

「先輩、ガンドック5。ナイスアシスト」

 ソード2が初めてダメージ判定を伴う被弾をする。

 どうやら、ガンドック5から撃たれたロングレンジライフルを防いだのは良かったが、同時に撃たれていた垂直ミサイルに気付かず対応が遅れ、フレアではなく浮遊装甲を上に向けて防いだところ、空いてしまった隙間を撃たれたようだ。

「こちらソード2、左脚部に被弾した。損傷は軽微。って、あぶねっ!?」

「ソード2! ミサイル! また上からの垂直ミサイルだ! 気をつけろ!」

「右からもミサイルが来るよ! 私がなんとかする!」

 ソード3が装備していたフレアを射出し、ミサイルをそらしたのは良かったが、防戦一方だったせいもあり、フレアの残弾数が少ない。

 しかも、激しい弾幕を防ぐのに精一杯でなかなか反撃が出来ずにいるため、ガンドッグの攻撃を止めることも出来ない状態だ。

 しかし、両者の距離は1kmを切った。目標の500mまで後少しだ。

 500mまで近づけばガンドック小隊がソードの防御陣形をめくるため、更に接近して後ろに回りこもうとするはずだ。

「橘。ソードに後退のカウントダウンを頼む」

 了解です。橘が距離のカウントを始める。

 900……「後少しか。ソード2ソード3何とか持たせるぞ!」

 800……「ソード2フレア残数0! ミサイルはそっちに任せた!」

 700……「ソード3こちらもフレア残数0! こっちのフレア全部切れたんじゃないの?!」

 600……「ビッグハットよりソード全機! 後退用意!」

 500……「ソード全機後退してください」

「「ラジャー!」」

 合図とともにフラッシュグレネードを射出する。

 強烈な閃光で一時的に機体のカメラ機能を麻痺させる。

 その一瞬の隙をついてソード三機が全速で後退をする。

「二度も逃がすかよ!」

 ガンドッグ4が更に速度を上げて真っすぐソードを追いかけようとするが、

「ガンドック4! 先走り過ぎよ! 止まりなさい。隊長どうしますか?」

 ガンドッグ2がガンドック4の制止をかけながら、隊長の判断を待つ。

 ガンドック2の命令に対してガンドック4は文句を言いながらも制止している。良い判断だガンドック4。

「仕方ない。罠の可能性もあるが、追いかけるしかあるまい。後方に注意しながら行くぞ」

 隊長の判断が下され、ガンドック小隊は前進しながら左右に分かれていた部隊を合流させた。

 ガンドック小隊が合流した後、ガンドック5が数発狙撃を放ったが、ギリギリでソード三機が回避した。

 そして遂に策を仕込みに仕込んだポイントにガンドック小隊が到達する。


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