第零章「始まりの戦場」
上官の一言で隊員全員が巨大なモニターのあるブリーフィングルームに集められた。
「さて、ゴースト隊の諸君。国境に展開する警備隊が突破されそうなんだが、どうする?」
「どうするもこうするも、救援に向かわないとダメでしょう?!」
やせ気味の眼鏡をかけた上官があまりにも適当な質問を投げかけたので、思わず全力でつっこんでしまった。
「正解だ。では状況を説明しよう。味方部隊の両翼に敵の大部隊があてられていて、中央が手薄だ。現在そこを攻められている。目的は言うまでも無く国境地帯の制圧だ」
机に埋め込まれているモニターに敵味方の状況が描写されている。
「でだ、坂本お前ならどうする?」
坂本と呼ばれた俺は迷わずに地図上にマーカーを入れていく。
「中央の部隊を叩きます。両翼に展開する敵部隊は、恐らく陽動です。本命は間違いなく中央の突破となるでしょう。更に増援が送られる可能性があります。逆に言えば、ここさえ押さえてしまえば敵の目的は阻止出来るかと」
「模範解答だ。ただ、こちらは試験段階中の人型兵器がたったの十機だぞ? やれるか?」
人型兵器開発者でパイロットの一人が無邪気な顔で笑っている。
「当たり前です。僕の子ですよ? 人型だからこそやれるんですよ」
対照的に苦笑いをしながら上官は頭をかいた。
「よし。それじゃゴースト隊行ってこい! がんばれよ」
「「了解!」」
隊長である俺は隊員のみんなを連れて、戦車を人型に改造したような二つ目の全長4mの人型兵器に搭乗し、初めての戦場に赴いた。
「こちらゴースト1作戦区域に到達。敵戦車部隊を確認。数は二百」
「中央に展開する味方部隊は既に壊滅状態です。一台も突破させないでください」
現状、味方部隊は自分が指揮する新型十機による一中隊のみ。
「スカイアイより全機へ、人型兵器マップスの実力を世界に見せつけてこい」
「了解。ゴースト1、攻撃を開始します」
上空800mを時速700kmで敵戦車部隊に近づき、私は装備された40mm口径のアサルトライフルの射程内に入った敵戦車をロックオンする。
放たれた弾丸は戦車の装甲をいとも簡単に貫き、赤い炎をあげて爆散させた。
「まさかたったの五発で沈めるなんてねぇ……元戦車乗りとしてはぞっとするわ」
ゴースト4が呆れたような声で感想を述べる。
「驚くのはまだ早いんじゃないか? 一人のノルマは二十台だぞ? 俺様が四十台は落とすけどな!」
「その通りだ。全機攻撃開始! 気を抜くなよみんな!」
ゴースト3の宣言から私の合図で一斉攻撃が始まり、最初の戦車20台に銃弾の雨を降らせて、わずか二分で片づけてしまった。
「ゴースト全機、敵戦闘ヘリと戦闘機がそちらに十機ずつ向かっています。迎撃してください」
「了解。全機迎え撃つぞ」
「「了解」」
敵航空戦力からミサイルが発射され合計六十発ほどがこちらに向けて飛んできた。こちらも前進しながらフレアを射出し、ミサイルの誘導を狂わせて回避する。
「このまま前進してヘリを叩き切る! 全機俺に続け!」
「お、熱いねぇ隊長!」
機体を回転させながらガトリングを回避して、ヘリの下に回り込みダガーで機体を二つに切り裂く。
味方機と共にヘリを次々に落とし、続けてライフルで航空機を撃ち落していく。
「ふっ、さすがは僕の子。航空兵器も相手じゃないね」
自分の兵器を自慢していて警戒をといたせいか、開発者兼パイロットのゴースト5が歩兵からの携行ミサイルに気付いていなかった。
「ゴースト5! 油断するな!」
声をかけた頃には直撃を貰っていたが、煙が晴れると中からはほぼ無傷の状態でまるで何事も無かったかのようにたたずんでいた。
「だから言ったでしょ? マップスは最高の兵器だよ。ほらほら早く敵を片づけよう」
撃墜スコア戦車三十四台、戦闘ヘリ十三機、戦闘機五機。
こんな信じられないような撃墜スコアが俺の初陣だった。
そのうちパイロット時代の外伝が作れたらなーと思って、走りで書いてみました。