新たな物語
道路の騒音が耳に響く。それほど混んではいないが、頭に浮かんだアイデアを書き留めることに集中できない。私は手に持ったボールペンを忌々しそうに睨みつけた。
「クソッ!なんで動かないんだよ、このペン!おいアイデア、早く出てこいよ!」
私は叫びながら、自分の髪をぐしゃぐしゃにかき回した。
「うるさい、オッキー!」
十代の女の子が私の頭をポカッと叩き、私は黙り込んだ。結構いいパンチだ。「ご、ごめん…」私は縮こまった。
「あんたって人は…。今、日本にいるのよ。楽しまなきゃ損な旅行なのに、あんたは騒いでばかりで、自分の小説のことばっかり。」彼女は呆れたように額に手を当てた。「今はバスの中なの。乗ってるのは同じ学校の生徒15人だけだからいいけど、他の人がいたら迷惑よ。」
「仕方ないだろ、アルマ。さっきまでちゃんと景色も楽しんでたんだ。でも、今は執筆ノートに集中したくなったんだよ。」私はふかふかの座席に背中を預けた。
「放っておけよ、アルマ。オッキーはフィクションの熱狂的信者なんだ。夢が大きいのはいいことだろ?」前の座席の後ろから、一人の少年がひょっこり顔を出した。アリだ。
「それはそうだけど、アリ。友達として、ちゃんと現実も見せてあげなきゃ。創作のアイデアでオーバーシンキングして、そのままおかしくなっちゃうんじゃないかって心配なのよ。」アルマは通路を挟んだ反対側の自分の席に戻っていった。
「今は一生懸命勉強する時だよ、オッキー。日本に来るのは簡単じゃなかったんだ。選抜試験だって死ぬ気で頑張っただろ。」アリがカバンから何かを取り出した。「食うか?」ポテトチップスだ。「今はそういうのは控えてるんだ。誘ってくれてありがとう。」私は丁寧に断り、ため息をついた。
「えー、これ新発売の味なのに。」アリは残念そうに言いながら、バリバリとチップスを食べ始めた。
「まあ、損してるな。でもアルマの言う通りだよ。今は旅を楽しめって。アイデアなんて、観光してる時とか学校にいる時に勝手に降ってくるもんだよ。」
私はもう一度、今度はさっきより長くため息をついた。確かに二人の言う通りかもしれない。私は窓の外に目をやった。動く東京の街並みは、まるで生きている絵画のようだった。足早に歩く人々、昼間なのに点灯しているネオン看板、整然と走る自転車。これほど大きな街を実際に見たのは初めてだ。私の地元では、渋滞はもっと無秩序だった。でもここは、すべてが独自のルズムを持っている。
バスが減速し、銀杏の並木道が続く静かな通りへと曲がった。空気感が変わった。より清浄で、より整っている。そして、並木の間から、優雅な漢字が刻まれた大きな門が見えてきた。
「もうすぐ着くわ…」アルマが期待に満ちた表情で、ささやくように言った。
バスが静かに止まった。「プシュー」という独特の音を立ててドアが開く。引率の田中先生が前に立った。
「さあ、明けの星高校に到着しました。忘れ物のないように降りてください。荷物はバスの左側にまとめて。校長先生と、皆さんの担当の先生が迎えてくださいます。」
先生の明快な日本語に続いて、インドネシア側の先生が短い通訳を入れた。
一人ずつバスを降りる。東京の爽やかな朝の風が吹き抜け、湿った土と木の葉の香りを運んできた。私は深呼吸をして、急に速くなった鼓動を鎮めようとした。目の前には、近代的でありながらエレガントなデザインの3階建ての校舎がそびえ立っていた。ガラス窓が雲間から差し込む太陽の光を反射して輝いている。
「うわぁ…すげぇな…」隣でアリがスマホのカメラを構えながら呟いた。
「写真はまだダメよ、変な人だと思われるから。」アルマが釘を刺すが、彼女の目も驚きで輝いていた。
私たちは広くて静かなロビーへと案内された。磨き上げられた木の床に、私たちの靴音が響く。紺色の制服を着た日本の生徒たちが通り過ぎ、わずかな笑みを浮かべたり、好奇心を隠すようにチラリとこちらを見たりした。まるで新しい水槽に入れられた魚のような気分だ。儀式も、所作も、すべてが違う。
会議室での短い歓迎式の後(内容の半分は私の頭の上を通り過ぎていったが)、私たちは試験の結果に基づいて各クラスに分けられた。アルマ、アリとは別のクラスになった。私は2年C組だ。
担任の佐藤先生が教室のドアの前まで案内してくれた。「ここが君のクラスだよ、オッキー君。しっかり自己紹介してね。」先生はゆっくりとした易しい日本語で言い、ドアを開けた。
教室に入った瞬間、約30組の視線が一斉に私に向けられた。一瞬の沈黙。佐藤先生が私の転入について手短に説明する。私は手に汗を握りながら、深くお辞儀をした。
「ワタシは、オッキーです。インドネシアから、来ました。よろしくお願いします!」
たどたどしい日本語だったが、静まり返った教室に響き渡った。
すると、最前列の生徒が拍手を始めた。それに続いて他の生徒たちも。温かい笑顔が広がり、止まっていた息がようやく吐き出せた。思ったほど怖くないかもしれない…。
佐藤先生が後ろから2番目の、窓際の空席を指差した。「あそこに座ってください。」
私は物音を立てないように気をつけながら、通路を歩いた。列の間を通り過ぎる時、廊下側の隅に座っている一人の少女と目が合いそうになった。シルクのような銀髪、完璧に伸びた背筋、そして彼女から漂う静かなオーラ。彼女は私を見ていなかった。ただ、黒板を虚空を見つめるように見つめ、私が持ち込んだ喧騒から切り離されているようだった。でも、その瞬間、その姿が何よりも際立って見えた。
指定された席に座り、授業が始まった。バスの中で「スランプ」に陥っていた私の頭は、今や新しいもので満たされていた。速い授業のリズム、芸術のような黒板の漢字。そして、自分でも気づかないうちに、時折、隅の席のあの少女に視線を向けていた。
明けの星高校での初日が始まった。どういうわけか、さっきまで呪っていたカバンの中のボールペンを取り出すことなんて、すっかり忘れていた。




