愛されギフトが、欲しかった。
「エルダ、私の代わりに皇帝陛下に嫁いでね」
「正気ですか、ロアナ姉様。陛下を欺くなど……」
「別に欺いたりしないわ。あんたの能力で、陛下の呪いを吸い取って頂戴。解呪された暁には、私があんたと入れ替わって皇妃になる。ね、問題ないでしょ?」
悪びれもせず、双子の姉はそう笑った。
この国の民は、ギフトと呼ばれる特別な能力を持って生まれてくる。
私のギフトは呪いの吸収。
姉が持つギフトは、魅了。
魅了を受けた人間は、例外なくロアナの意に従う。
けれど彼女と同じ遺伝子を持つ私に、魅了は効かない。
ロアナはそんな私を、目障りに思ったらしい。私の心を折るため、家族に明確な姉妹格差を要求した。
自分には広い部屋に、ふかふかベッド、温かな食事、綺麗なドレス。
私には狭い物置、ごわごわの布、冷たい残飯、合わないお古。
皆それが異常だと気づかない。
私以外、誰も。
いっそ彼女の魅了で私の思考も奪ってくれてたら。
そしたらこの違いに、涙することもなかっただろうに。
(──解呪なんかより、愛されるギフトが良かった)
皇帝を謀る杜撰な計画は、しかし周囲黙認で実行され、私はロアナとして呪われ皇帝に嫁いだ。
皇帝の呪われ具合は、凄まじいものだった。
国を守った彼の先祖が、悪神から受けた代々の呪い。
醜く歪んだ肌の痛みで、夜は眠れず苦しみ叫ぶ。
それでも昼は政務をこなし、民のため心を砕く。
そんな陛下のすぐ傍で、彼を敬い慕いながら。
私は少しずつ呪いを吸い取り、浄化していった。
やがて呪いは消え去り、輝く美貌に戻った陛下は、もう夜に呻くことはない。
彼は私を労い、嬉しく安堵していたある日。
突然、私は攫われた。
「よくやったわ、エルダ。交代よ」
ロアナだ。
彼女は私の服を着て、陛下の元へと駆けていく。
皇妃として彼の愛と、民の敬意を受けるために。
(陛下にお別れさえ言えなかったけど……。きっともう、陛下もロアナに魅了されてる)
監禁先で私は泣いた。
泣いて泣いて、涙も枯れ果てる頃、扉が盛大に壊されて。
陛下が顔を覗かせた。
「ロアナの罪は暴いた。エルダ、君にも罰がある」
彼が言う。
「命尽きるまで皇妃として、俺と共にいること。君がいないと夜はもちろん、朝も昼も来ないんだ」
「どうしてわかったのですか? 私とロアナはそっくりなのに」
「俺が君をわからないはずないだろう……!」
陛下には、呪いは消せなくとも、ギフトを消し去る力があった。
ロアナは魅了を失い、正常な世界で。
私は愛を得た。
お読みいただき有り難うございました!
なろうラジオ大賞参加第二弾、キーワード「ギフト」です。
文字数制限…、今回の1000文字はきつかった…!
こういうコテコテのテンプレ大好きなのですが、予定していた設定もセリフも入れれず!
もっとじっくり書きたいと感じました(笑) でも頑張って1000文字にまとめたので、なろラジに応募する!
なおロアナが皇帝の妃に選ばれたのは、"魅了"を使って周りを動かしたから。
皇妃としての地位と権力は欲しいけど、呪われた夫なんて嫌。そうだ、妹に呪いを吸わせてから妻になれば良い、と、そういう考えでした。
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どうぞよろしくお願い申し上げます( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )⁾⁾
(なろラジ読みまわってます♪ まだ4日めなのに、めっちゃ良いお話がたくさんあってすごい…! 毎年この読み周りが楽しみ(*´艸`))




