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名前をつけたネコ

作者: Toto

今日からまた1週間が始まる、やりたくは無いがやらなければ生活が出来ないので仕事に向かう。

1LDKの部屋から出ると相変わらずの暑さだ。

「もう、帰りてぇ」そんな呟きを吐きながら出勤するのが、月曜日の日課だ。

「いつか、たんまりと貯金したら早期退職して、田舎にでも移り住もう!」夢は見るだけタダである。

いつも通る同じ道、いつも乗る同じ電車、いつも見る同じビル、何も変わらない日々。

仕事は定時で上がれるのが唯一の救い。

「働き方改革バンザイ」

給料は人1人がそれなりに生活出来るほどはある。

趣味は家に帰ってサブスク見漁るぐらい。寂しい男である。


明日になれば、また月曜日がやって来る。

「なぜ月曜日が来るんだ?このまま起きてたら日曜日のままじゃないか!」

そんな馬鹿な考えで睡眠時間が無くなった、、

非情にも、月曜日が来たらしい。

どうせ寝れないならと、たまには早く仕事に行くかと、家を出ることにした男。

いつもの月曜日より、少しだけ涼しく感じた。


時間ならあると缶コーヒー片手に公園に立ち寄る、普段ならしないはずの行動も、徹夜(自業自得)明けで頭が回っていない男にとっては些細な事。


ベンチに座ろうとしたが先客が居た。

真っ白な猫が丸まって寝ていた。「お隣失礼します」

律儀に猫に声をかけて座る、だが猫は逃げない、普通は逃げるはずだと男は思ったが、猫はチラりとこちらを見ただけで、また目を閉じ眠りに付く。

「お前だけずるいな、俺も寝たい、そして日曜日になれ」寝なかったのは自分のせいである。

真っ白な猫は、男の愚痴を聞くと目を開けた。

起きたようで身体を伸ばし出した、横に男が居ても気にする素振りも無い。

男は人馴れしてるなら触れるんじゃないかと手を出した、いつか見たネットの記事に匂いを嗅がせるといいとか何とか書いてたような気がして。それが犬だったのか猫かは男には分からない。

幸い、真っ白な猫は軽く匂いを嗅いだだけで噛み付いたりはしなかった。

「撫でますよー」

普段1人で生活してる男にペットは居ない、動物と触れ合う事も小学生の頃以来無い。

恐る恐る頭を撫で始めると真っ白な猫は、グリグリ頭を押し付けてくる。

「お前飼い猫かなんかか?やけに人馴れしてんな」

顎のした、首の付け根、耳の後ろ、散々撫で回していく。久しぶりの動物の温かさに男はほっこりした気持ちになれた。「またな!」

そろそろ仕事に向かう時間が来て男はその場を離れる。「そうだ!次会ったら名前を付けてやろう!」

寝てない男は、今日が月曜日だと言うのにいつもより少しだけ元気に会社に行く。


仕事が終わり、家に帰って来て爆睡を決め込む。

明日の朝もまた真っ白な猫に逢えるかも知れないと思いながら。

次の日、いつもの時間に起きて家を出た、昨日の公園に立ち寄るとベンチに猫は居なかった。

「まあ猫だもんな。約束なんてしてないし、猫だし」

また同じ日々が続くだけである。

ただ、次の日もその次の日も公園に立ち寄る癖が出来た。結局その週は逢えなかったが、、


今日からまた1週間が始まる、公園に立ち寄るのは別にいいかなと思いながらチラりと確認だけはする。先週会った猫はベンチに寝ていた。

「今日は居んのかよ(笑)」

真っ白な猫は男をチラりと確認して身体を伸ばし出した、また撫でるんでしょ?って言わんばかりに。

男は真っ白な猫の隣に座り、頭を撫で出した。

「お前の名前考えたんだ、ソラってどうだ?」

朝の陽射しが眩しくて恨めしかったが、蒼い空は綺麗だった。

真っ白な猫は、喉を鳴らしながら頭を押し付けてくる、まるで気に入ったとでも言うように。

「お前の名前はソラだ」


月曜日の朝は毎週だるくて仕方がない、仕事には行きたくないがいつもより少し早く家を出る。

いつもの公園にはソラが居る。

ただ、月曜日にしか逢って居ない、それ以外の曜日にはベンチに居ないのだ。

何故か月曜日だけベンチで寝ている、週の始まりにまるで男に元気を分けてあげてるみたいに。

「行ってくるよソラ、また来週!」


いつも通る同じ道、いつも乗る同じ電車、いつも見る同じビル、何も変わらない日々だった、毎週月曜日に通う朝の公園に男のちょっとした幸せがある。

「早く月曜日にならんかな」


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