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第二話

 地球とは別の,、地球そのものが存在しない世界。


            「ギルスネルン]


 そこに今、チキュウ人が迷い込んだ。



「…刺されたよな?おれ」


 はっきりと体が覚えている。

 刺された背部からとんでもない痛みが広がり、次第に痛いのか寒いのか分からなくなる。今でもあの瞬間を思い出すと鳥肌が立つ。てっきり俺は死んだのだと思ったけど…。


 眼に映るのは晴れ渡る青空と風になびく木々。一瞬桃源郷にでもいるのかと思ったが、体の感覚はある。風も感じるし音も聞こえる。

 だとしたら現実?とにかく状況が分からない。


「てか、そもそも何で刺されたんだ俺?」


 正直言うと俺は天才だった。小さい頃から名門と呼ばれる幼稚園に通い、そのまま大学を卒業するまで全て名の通った学校に進んだ。

 総理になったのも、父が国会議員、お爺さんが大臣を務めているような家系に生まれたから。

 別に政治の世界に興味があったわけではなかったが、大学を出て数年遊び歩いた後、やりたいこともなかったのでとりあえず政治の世界を目指すことにした。

 いざ俺が国会議員を目指すと言ったとき、家族総出で支えてくれた。

 その後は成功に成功を重ねて、国の行政を担う頂点に立った。

 

「誰かに恨まれたか…それとも」


 ていうか、ここはどこなんだ?

 空には太陽のような明るい天体が見える。体感も気温も前に生活していた国と大差がないように感じる。

 ただ分かるのは、今自分がいる場所がどこかの森の中ということ。

 スマホの電波も確認したけど通っていない。

 

 

 この状況だと、とりあえず誰か探して聞いてみないことには現在地も何もかも分からない。

 だとしたらまったく知らない森を歩くのは危険だが、食料も水分も持っていないこの状況だとどっちにしろ進むしか道はない。


 そうして俺は、知らない森の中を歩き始めた。

 幸いなことに陽はまだ高い場所にある。できたら暗くなるまでに森を出るか、誰かに会えるといいんだが。  

 

 一時間ほど歩いても周りの光景は全く変わらない。たまたま付けてた時計のおかげで時間感覚だけは失わずにいられる。

 この森、怖いほどに同じ木が並んでいる。虫の一匹も出ないし木以外の植物がなにもない。

 そんな不気味な森を休憩しながらもう一時間程歩くと、急に森に差し込む光の量が増え薄暗さが減ってきた。そしてとうとう、森の出口にたどり着いた。


 森を抜けると、目の前にはとてつもなく広い高原が広がっていた。さっきまで木に遮られせき止められていた風が吹き付ける。


「すご」


 あまりに圧巻の光景を前に、俺は思わず声を出してしまった。

 CGのような景色。辺りを見渡すと遠くのほうに何か映った気がした。

 もう一度その方向に目を向けると、視界に目立つ黒いものが映った。

「ん?あれは…」

 目を細めて見えたのは煙だった。


 だだっ広い野原の向こうに煙が上がっているのが見える。何かを燃やしているのか焚火でもしているのか。ここからじゃ丘に阻まれて何をしているのかまでは分からないが、あれはたしかに火を扱っている証拠。その下には人がいるはず。

 陽が沈み始めた今、ここで人と出会えなければ今日中に他の人に会うことは難しいかもしれない。

 そう考えた俺は、煙の見えた方向まで走った。

 

 煙が立っていた地点までは目視で約二㎞。陽はもう完全に沈み、煙も消えてしまった。

 完全に方向感覚を失う前にとにかく、煙の人達に会わないと。



 だが、その焦りが警戒心を欠如させたのだろう。

 

 気づいた時には既に、自分の肩から下の右腕が無くなり血が噴き出していた。

 その瞬間、俺はあまりの痛みに悲鳴をあげた。


「痛い痛い痛い痛い痛い」

 

 なにが起きた?

 辺りを見渡すと、そこには地球では見たことがない白い体と、口に俺の右腕をくわえた巨大な虎がいた。

 そして不思議なことに、その虎は口から電気を漏らしていた。

 

 直感的に理解できてしまう死の気配。それほどまでに生き物としての格の違いが本能で分かる。


 そしてその虎は、自分目がけて爪をふりかざした。


 俺は、反射的に目を閉じた。

 しかし、いつまで経っても俺に巨大な爪が当たることはなかった。恐る恐る目を開けると、その虎はうめき声をあげながら倒れていた。

 何が起きたか分からないまま啞然としていると、遠くから人の声が聞こえてきた。


『大丈夫かーー』


 遠くてはっきり聞こえたわけじゃなけど、そう言っているような気がする。少しすると、遠くから数人の人影が見えた。

 そうして忘れていた痛みと人に会えた安堵感が襲い、俺は気を失った。


 

「暖かい」

 目を開けるとそこには、数人の人たちが焚火を囲んでいた。


『目覚めたか』


 歳でいえば30後半、その割にはガタイのいい男が話しかけてきた。

「助けてくれたのはあなたたちですか?」


『あぁ、そうだ。ちなみにお前の取れてた腕を治したのはそこの女治癒師だからな。感謝しとけよ』


 治癒師?てか、ほんとに腕が治ってる。

 あの時、俺はたしかに腕を失ったはず。あれは確実に手術どうこうで治るものじゃなかったはず。その時、一人の男に目がいった。

 その男が聞きなれない言葉を発した瞬間、男は何もない場所から火を出現させた。

 

 

 

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