表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

JR北海道

北海道新幹線の札幌延伸が延びに延びる昨今

作者: xoo

 北海道新幹線は2030年度末に札幌まで開業する予定だった。



 予定は未定であるのが常とはいえ、札幌オリンピックがポシャり、トンネルは岩塊に当たって複数箇所で工事が止まり、資材と人件費の高騰で予算を食いつぶす。3年4年どころか10年延びそうな昨今。


 並行在来線である函館本線札幌〜小樽はJR北海道のドル箱なので維持、長万部〜函館はJR貨物が使うので三セク(道南いざりび鉄道?)に移管、小樽〜長万部の通称「山線」は廃止・バス転換の方向。なのだが。

 山線の「並行在来線対策協議会」(JR北海道+北海道庁+関連自治体)は1年3ヶ月止まっていたものが、新幹線開業の(期限未定の)延期公表を挟んで今年2024年8月29日にやっと開かれた。それまで呼ばれていなかった(実際のバス転換事業にバス転換に係る)地元バス事業者3社(北海道中央バス、ニセコバス、道南バス)がここでやっと初参加!という「仕切っている道庁の奴らバカだろ」というテイタラク。

 ま、新幹線の延伸開業が2040年度? 以降? と言う状態なのでそこまでバス転換の時期に猶予があるのかな? と思うとこれが「速やかにバス転換を決定してほしい」JR北海道と北海道庁、「在来線倶知安駅があると新幹線駅が作れないから2025年で廃止しろやゴラァ」倶知安町、「塩谷と蘭島は捨ててる」小樽市、「言いたいことあるけど金がないから口をつぐむ」残りの自治体、と救いようの無い状態。で、おなじみ2024年問題で「バス運転手が足りなくて従来路線も減便しているのに転換バスまでやってらんね」という地元バス事業者はこれまでリングに上がる機会もなかった。



----

◆地元バス事業者はなぜ呼ばれなかったか

◆ジェイ・アール北海道バスがいない

◆バス転換までにバス運転手を養成できないのか

◆倶知安町は暫く新幹線が来ない駅をなぜ作らせたいのか

◆観光客は鉄道を使わないのか

◆ニセコバブルは弾けるのか

----



◆地元バス事業者はなぜ呼ばれなかったか

◆ジェイ・アール北海道バスがいない


 理由?わからん。

 一応、協議会は、「将来の山線をどうするか」「鉄道を存続するか、それとも廃止するか」を決めるところで、廃止が決まってから「バス転換するか、何もしないか」決めるからバス業者を呼ばなかった、と強弁することはできる(いや、無理筋)。だが今までの他線でのバス転換協議では、「鉄道とバスのどちらが持続可能性があるか」を明らかにして議論してきたので、本件で重要プレーヤーである地元バス事業者を呼んでいなかった理由は説明できない。地元バス事業者「以外」に委託する方法もあるが、2024年問題でバス運転手が不足しているのは路線バスも観光バスも同じ。

 ただし道南バスについては、倶知安乗り入れの路線(倶知安〜喜茂別、ルスツ)を持っているが山線と並走する路線を持っていないので外しても良いと考える。


 そもそも地元バス事業者は、今まで国鉄/JRが廃線するたびに転換バス事業を押し付けられてきたし、国鉄バスが運行していた路線も移管されてきた。山線に接続していた路線で言えば国鉄胆振線(倶知安〜喜茂別〜伊達紋別、1986年廃止)は道南バス(本社:室蘭市)に、国鉄岩内線(小沢〜岩内、1985年廃止)と倶知安・寿都エリアの国鉄バスはニセコバス(本社:ニセコ町)に(小樽札幌方面への需要は中央バスの新設路線に)、岩内エリアの国鉄バスは中央バス(本社:小樽)に、それぞれ転換/移管された。国鉄バス/ジェイ・アール北海道バスはこの地域で貢献していない。

 岩内線廃止後の中央バス「高速いわない号」(岩内〜札幌、13往復)は、既存の「高速おたる号」(小樽〜円山〜札幌、67往復)の一部便を延長運行したものだが、朝は岩内から小樽市内の高校に通学する需要で続行便増便があり、平日昼間は札幌小樽に通院する乗客でそれなりに混んでいる。「高速おたる号」は北大経由の16往復を含めた83往復が中央バス単独ではなくジェイ・アール北海道バスとの共同運行であるが、延長運行されているのは中央バスだけでジェイ・アール北海道バスは関与していない(共同運行が2001年からであり、岩内線廃止時は共同運行ではなかった経過はある)。


 山線の需要状況を端的に言うと、①黒松内・蘭越・ニセコから倶知安に通学(90人)、②蘭越〜倶知安から小樽札幌方面に通学(130人)、③仁木・余市から小樽札幌方面に通学(400人)、④通院などの生活、⑤ニセコ倶知安及び余市観光、に纏められる。①はニセコバスに2台増車と相応の人員増を強いることとなる。②〜⑤はニセコ〜小樽(現行は高速ニセコ号3往復、急行ニセコ〜小樽便4往復)に16〜30往復(800〜1500人分、季節変動あり)の増便、余市〜小樽(高速ニセコ号、高速いわない号、高速しゃこたん号と重複して19往復)は更に40往復(2000人分)の増便が必要となり、高速小樽号をジェイ・アール北海道バス便を含めて延長運行したとしても冬季の観光需要10往復分程度は不足すると考えられる(これらの実際の便数は1.5〜2倍必要になる可能性がある)。乗務員の増員が100人でも足りないな、こりゃ……。



◆バス転換までにバス運転手を養成できないのか


 バス転換問題に触れているブログや報道ではなぜか触れられていないが、新幹線開業までには5〜15年の余裕があるので出来ないことはない。100人増員必要+転換までの定年退職者を補充するとしても、大型二種運転免許所持者を100人なり200人なり手当すれば良い(普免3年+両眼視力0.8以上かつ片眼視力0.5以上などの視覚聴覚要件を充足すれば良い)。ただし、中央バスでは事あるごとに「バス運転手募集」「普通運転免許所持者OK、大型二種免許取得にかかる費用は出します」と広告しているが、それでも足りないようだ(中央バスはグループ内に大型二種を取得できる自動車学校も持っている)。ただし給与水準を見ると、あえてバスじゃなくトラックか他の仕事に流れる、かなあ。事業者任せにせず、北海道庁や関連自治体が養成費用を出してでも人員を手当するぞ!という強い意志を示すのが最低限必要と思う。



◆倶知安町は暫く新幹線が来ない駅をなぜ作らせたいのか


 新幹線は当初計画でも2031年春、今の情勢では2040年にならないと倶知安に来ない(駅も使われない)。その中で倶知安町はすぐにでも駅を作らせたい。新幹線計画が凍結または廃止されることを恐れているのか、駅ができれば使われなくても固定資産税が入ってくるからなのか(JR北海道または鉄道・運輸機構にとっては収入にならないのに固定資産税を払わなければならないので迷惑)、明らかになっていない。ただ、後述するニセコバブル破裂危機を控えて、焦っているのかもしれない。



◆観光客は鉄道を使わないのか


 多分使っている。

 ニセコから小樽方面の定期券を使わない200人強、倶知安からの同500人弱のそれぞれ半数、冬季は大部分は観光客と考えられる。また、並行する高速ニセコ号、急行ニセコ〜小樽便は冬季は観光客も乗車し混雑している。特に冬季の観光客に関しては大半が中国人であり、中華人民共和国はジュネーブ交通条約に加盟していないため(香港を除く)中国の国際免許は日本では無効、運転できない(ただし、日本またはジュネーブ交通条約に加盟する国、たとえばタイやマレーシアなどの免許があれば運転できる)。また、リゾート産業に従事する欧米系外国人においても、ジュネーブ交通条約非加盟国(スイス、ドイツなど)であるか日本に1年以上在留する場合などは日本の運転免許を取得する必要がある。



◆ニセコバブルは弾けるのか


 今、ニセコエリアは人件費が高い。ニセコのすき家は時給2000円に達する勢いだし、倶知安のセブンイレブンも基本時給が1600円〜である。ホテルやリゾート関連に人を取られるため、それ以外の業種は人手不足で介護に至っては事業継続できず撤退する事業所が出てきた。スーパーなどの物価は変わらないようだが、年をとっても住み続けられる環境ではなくなりつつある。

 外食も高い。前述のすき家は変わらないが、ラーメン3000円、海鮮丼5000円など、日本人観光客が寄り付かない価格帯になっている。


 1990年代、バブル崩壊後の低迷期にニセコに目をつけたのはオーストラリア人であった。自国と季節が逆で時差がなく、世界有数の雪質と評されていたニセコの資産がただ同然で手に入る。資本も観光客も入り込み、冬だけでなく夏のリゾート開発も進められ、一大リゾートエリアとして再生した。

 2001年、アメリカ同時多発テロの後。金持ちになった中国富裕層は、投資先として日本に目をつけた。1995年の映画「Love Letter」が中国でもヒットし、北海道ブームが始まっていた。厚くなる中流層に人気の観光先として、小樽とともにニセコエリアが挙げられ、投資され、人が集まった。一方でオーストラリア人は宿泊費の高騰やスキー以外の魅力に乏しいニセコエリアに見切りをつけ、資産を中国資本に転売して他エリアに流れていった。


 現在、ニセコエリアは資本を持つのも観光客も中国、リゾートのインストラクターは欧米系外国人、下支えの仕事は地元日本人、という構造である。これでお金は回っているが、地元の日本人が住めなくなれば人手不足とサービス低下が露呈することになる。ここで中国人観光客が激減すれば? 中国資本が引き上げれば? 人手不足によるサービス低下と日中関係悪化による観光客引き上げリスクが顕在すれば、ニセコバブルは崩壊する。



 ニセコには日本人観光客はもう行かない。スキーやスノーボードをする人はそもそも減っているし、修学旅行のスキーもキロロに行く。クラブメッドもサホロ、トマムに次いでキロロを選んだ(雪質なら富良野か名寄ピヤシリだ)。新千歳空港から2時間かかるニセコは不便だ(北海道新幹線は新千歳空港まで乗り入れし、新千歳〜倶知安間を先行開業させれば良かったのに、と思う)。

(2024年10月23日 22時15分 追記)

今さら石破さんが「鉄道の相次ぐ廃止に疑問を提示」とか、地元選出代議士が「線路維持を」と言い出したけど、選挙対策にしか感じない。どうせなら、「札幌〜小樽も並行在来線だから三セクに渡せ」とやれば、山線の維持につながるかもしれない。もしくは今すぐ有珠山が噴火する、とか(さすがに不謹慎、だけど、前回の間隔は23年弱だったから24年経ってるからあり得ないわけじゃあないのよね)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
返信有り難うございます 海外定期便……実はアメリカ合衆国ハワイ経由なら有るんですよ 軍属やその家族専門だけど入国審査すらフリーパスな嘉手納基地が 以前ピアーズ・ブロスナンさんとかスティングさんは此処…
投稿お疲れ様でした  友人の大半が外資大手のホテル料理人だの寿司職人やってるのでニセコのバブルは端から10年持てば良い方だと……まぁそういう調査や統計集める仕事だったので(苦笑) そういや車社会でバ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ