突然の出会い
僕の平凡な人生は、ある女の子と出会う事で一変する
僕の名前は山西悠一、国山高校に通う平凡な高校二年生だ。
僕は、父子家庭で育った。僕の母は、僕が小さい頃に父と離婚し家を出て行ってしまったらしい。今は、僕と父そして小1の妹、雪野と3人で暮らしている。
僕は卓球部に入っている。練習の日は多いが、強くなる為に毎日通っている。しかし僕は部内で嫌われてる。あまり上手くないからだと僕は考えている。そのせいで僕は部活の人を利用してやると思ってしまう程だった。
ある冬休み、部活も休みなので友達とカラオケに行く約束を入れていた。朝出かけようとすると、雪野が服をひぱって「私も連れってって」と言われた。「小1で親なしのカラオケは早いって」と言ったら、「もう子供じゃないもん」と口論していると、父から「喧嘩はやめろ。ところで悠一どこかに行くのか?」と話しかけらたので、「うん!友達とカラオケ行く」と答えた。すると父は「困ったな~これから再婚相手の人とその娘さんが来るのに」と困った顔で言いった。
僕はそんな父を尻目に「急な頼みは無理」と言い、一旦自分の部屋に戻り、写真と自分なりに簡単なプロフィールを書き、部屋を出た。こういう時、父は目で僕に「行くな」「断れ」と訴えてくる。「断るのは無理、しょうがないな~、はいこれ」と僕の詳細を書いた紙を父に渡した。「何かあったらよろ!じゃ 行ってきます~」と言い、家をでて自転車に乗り、待ち合わせに向かった。
カラオケで友達と歌っていると、父からLINEで{写真を見せたら会いたいって言ってるから帰って来い}と連絡が来たが、既読無視した。
カラオケ以外にも色々と友達と遊んでしまい、家に帰ったのは八時になってしまった。
家に帰ると父と雪野が鬼の形相で待っていた。「なんでLINEを無視した」と聞くので、僕は「いや、カラオケ中にLINE送ってくんな。てか、再婚相手とその娘さんは?」と聞いた。
父は「時間を考えろ、もう帰った」と答えた。
雪野は「新しいお母さんとその娘さん可哀想だったな~」憐みの目で僕を見て来た。
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次の日、部活があったので高校へ向かった。
そして部活が始まったが、部内で嫌われていた僕は一人でサーブ練習をさせられていた。
練習をしていると顧問の内山先生に呼ばれた。先生は、生徒に人気がある理科を教えている男の先生だ。
先生は僕を視聴覚室の前に連れて行き「この部屋に転校してきて卓球部に入る子がいる。君が余っていて良かった」と言われた。
「余った」と言う言葉に引っかかったがスルーし「どういう意味ですか?」と聞くと、先生が「その子の親の希望で、誰か少し知ってる人を作ってから練習させてくれって言われたのでな」と答えた。僕は「分かりました」と言った。
扉を開けると、教室の奥の方の椅子にこちらを背に向けて座っている女の子がいた。姿は、黒髪の短いポニーテールで前の学校の制服であろう服を着ていた。制服は、黒いセーラー服に少し模様が入ったミニスカート。とても可愛らしい制服だった。
扉が開いた音に気づいてこちらを向いた彼女の顔を見て、僕は言葉を失った。なぜなら彼女は千年に一人ぐらいの美少女だったからだ。
先生が彼女を呼び、自己紹介するように諭した。すると彼女は「私の名前は山西由利です。宜しくお願い致します。高校二年生です」と優しい言葉使いで自己紹介をしてくれた。
自己紹介をしてくれたので僕も「こんにちは。僕は山西悠一です。同じく高校二年生です。よろしく」と答えた。自己紹介をした僕は、美少女の彼女に緊張してしまい顔を赤らめてしまった。
そんな僕を見て彼女は心配そうな顔をして「顔が赤いけど大丈夫ですか?」と聞いてきたので、動揺しながらもどうにか「だ、大丈夫です」と答えた。
先生は「職員室に行って来るから、戻って来るまで由利さんと話して友情関係を築いておいてくれ」と言い残し教室を出ていった。
先生が教室を出ていくと、由利さんと僕は、それぞれ少し離れた場所に座った。そして僕は小声で「いつも余るからこうなる」と言った。すると隣から「どうしていつもあなた、いや悠一くんは余ってしまうのですか?」という声が聞こえた。横をみると黒髪の短いポニーテール姿の由利さんがすぐとなりに座っていた。僕は驚いて椅子から落ちそうになったが、どうにか持ちこたえた。僕が落ちそうになったのに驚いたのか、彼女は少し心配そうな声で「大丈夫ですか?こんな時に聞くことではありませんが、私の質問に答えてくれますか?」。僕は少し考えて「分かった。話すよ」と言い、簡潔に今の僕の部活内での状況を話した。<卓球が余り上手くなくて部活内嫌われている事><部活での唯一の友達が最近来なくなった事>など一通り話し終えて一息ついていると、彼女が優しい声でこう言った。「話は理解しました。う~ん あ、じゃあ、私とお友達になれば解決しますよね。 私とお友達になってください」と提案して来た。それからも友達になった彼女と色々な話をして楽しい時間を過ごした。
しばらくすると、先生が職員室から戻って来た。僕らの話している姿を見て大丈夫だと感じたのか、僕に「もう十分由利さんと仲良くなったみたいだから戻っていいぞ。私と由利さんは少し話してから行くから」と言った。戻るとみんな休憩していた。僕の方を見ると何も言わず練習に戻って行った。僕はもう慣れていたので、何も言わず一人でサーブ練に戻った。
少し練習していたら、先生が来てみんなを召集した。そしてみんなに次の事を伝えた。「この卓球部に転校生が入る事になった。じゃあ入って来い」と言うと、さっき仲良くなった由利さんが入って来た。彼女は制服から前の高校のジャージに着替えていた。みんな彼女の美貌に釘付けになっていた。先生の隣に来ると、彼女は自己紹介をした。「私の名前は山西由利です。宜しくお願い致します。高校二年生です。卓球は初心者ですがよろしくお願いします」そう言って頭を下げた。
「と言うことで、転入生の山西由利さんです。練習相手は、余ってさびしい悠一とやってくれ」。「いや、先生説明ひどいでしょ」と僕はいったが、由利さんは「はい」と僕のツッコミを無視して元気よく返事をした。
部活のみんなは気に入らない感じだったが、先生が言った事なので何も言わず練習に入った。
部活が始まって少し時間がたっていて基礎的な練習が終わってしまっていたので、先生は僕に「みんなとは違う時間配分で練習メニューを考えてやっていい」と言い、タイマーを渡してきた。 先生に言われた事を彼女に伝え、フォアの練習から始めた。彼女は最初はアレだったが、色々練習していくうちに上手くなっていって、一日やっただけとは思えないほど上手くなった。
練習が終わり僕らは男子更衣室で、由利さんは女子更衣室で着替えを済ませた。
その後ミーティングをする職員室前に移動し色々な報告、連絡を聞きミーティングは終わった。
僕はいつもわざと学校を遅く出発し、帰りがみんなと一緒にならないようにしている。しかし今日はみんなさっさと帰ろうとせず、学校のエントランスで輪になって誰かを囲んでいる。輪の真ん中を見たら、制服姿の由利さんがみんなから質問攻めにあっていた。
僕は気にせず通り過ぎようとすると、輪の真ん中から「悠一くん」と呼びとめられた。みんなをかき分けて輪の中から出て来たのは由利さんだった。そして僕に「一緒に帰ろ♪」と笑顔でウィンクをしてきた。
僕はその破壊力にやられてしまい、押される感じで「お、おう」と変な返事をしてしまった。
校舎から出ると、冬なのでもう空は暗くなっていた。
学校を出て駅へ向かう。その間も由利さんと色々な話をした。卓球部のトレーニングの話、これからの学校生活について、そして将来についても話した。「由利さんの将来の夢って何?」と聞こうとしたら、「もう友達だから(さん)付けしなくて良いですよ」と言い、その後に「私の夢はモデルさんです。モデルさんになっていっぱい雑誌に乗りたいです♪」と夜なのに彼女の笑顔は眩しかった。
その笑顔のまま彼女は僕に同じ質問したので、「僕は小児専門の心理カウンセラーになりたい」と言い、お互いの夢を語りあった。
そして家族の話になった時、由利は「実は、私、母子家庭なの。お父さんはまだ私がまだ幼い頃家出したみたいで。あ、湿っぽい話になってごめんね」「あなたの家は?」と聞いてきた。「僕の家は、僕と父そして可愛い妹の雪野。こっちは父子家庭の3人暮らし」。そんなお互いの家族の話をしていると駅に着いた。
僕はみんなが来ると面倒くさいので、急いで由利にどっちの方面か聞いた。
すると「私よく分からない」と言い出した。僕がどうするか考えていると、彼女は少し小さな声で「でも降りる駅の名前は覚えています」と言った。しかし僕は頭をフル回転させていたので、彼女の話も聞かずちょっと冷たく「今考えてるから、話かけないで」と言った。しかし彼女は3回も繰り返し言ってきたので、僕は少しキレ気味みで「何?」と答えた。すると彼女は普通のテンションで「でも降りる駅の名前は覚えています」と言った。僕は驚いて「何でもっと早く言ってくれないの?」と聞いた。すると彼女は可愛いらしく頬を膨らまし「何回も言いましたけど、聞かなかったのはあなたじゃないですか」と言ってきたので、僕は「ははは・・・ごめんごめん」と誤魔化し「で、どこの駅にいくの?」と改めて聞いた。
彼女は「いざなみ駅」と答えた。
【いざなみ駅】とは、この【高校通り駅】から5駅目にある少し大きめな駅で、名前どおり海があり、波の音が聞こえる、観光、デートスポットとしても人気の駅である。
僕は安心して、切羽詰まっていた際の息を吐いた。
すると彼女は「まだ駅構内であの人達に追いかけられるかもしれないのになぜ安堵しているのですか?」と少し訝しげに聞いてきたので、僕は「大丈夫、こっちの方に来る人はいないから」と言った。続けて「でもここにいるとまだ追いつかれるかもしれない」と言って、僕は彼女の手をつかんで少し駅の中を走り、自動販売機の裏に隠れた。しかしその甲斐もなく卓球部の部員に見つかってしまった。急いで頭を回転させていると、いざなみ駅方面行きのホームの方から電車が到着するアナウンスが聞こえた。僕はいつも乗っている電車の時間を思い返した。今走ればあの電車に乗れる。そう思い立った瞬間僕は由利の手を取って走った。由利は「え?え?」と驚いていたが、どうにか電車に間に合い、奴らが入ろうとした瞬間電車のドアが閉まった。二人で安堵し、息を「「フゥ~」」と吐いた。
電車に乗って色々な話をしているとすぐにいざなみ駅に着いた。
電車を降り、改札がある階へ行き彼女に「この後乗り換え?それとも歩き?」と聞いた。すると彼女は「乗り換えです。でも、もう付き添いは大丈夫です。ありがとうございました」と言った。僕は驚いて「へ?」と変な声を出してしまった。
すると彼女は淡々と探偵が真実を語るように話し始めた。「あなたは、ここまで帰る道が違うにも拘わらず私を心配して来てくれたんですよね?違いますか?」と聞いてきたので「うん。違うね。僕も同じ方向だったから」と言うと彼女は「マジですか?」と凄く驚いていた。そして僕は彼女に「まあ、ともかく乗り換えなの?」と聞くと、「うん。王道線で西町駅まで行くの。あなたは?」と聞いてきたので、「僕は一つ前の桜野駅で降りるんだ。偶然だね」と言うと、彼女は笑顔で「うん」と答えた。
桜野駅に着いたので、僕は手を振って由利と別れた。
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(由利)
私の名前は山西由利。最近この辺に引っ越し、国山高校の二年生として転校し、卓球部に入った。
そして初めての登校だった。学校は少し遠いが、校舎は広く綺麗だった。そして新しい先生に挨拶をした。新しい学校の一室で新しい友達も出来た。しかもその男の子と手を握って走らされた時はドキドキしちゃった。私はその時のことを思い出し頬を紅くそめた。
何回か由利と部活での登下校を繰り返し数日後、冬休みは終わった。
朝、僕はいつも通り雪野と一緒に電車を乗り継ぎ高校の最寄り駅へ行き、学校への通学路を歩いていた。雪野も【高校通り駅】近くの小学校に今年から入学して、僕と違い友達も多く、楽しく学校ライフを送っているらしい。
通学路を歩きながら僕は重いため息を吐いた。「今日からまた地獄の学校生活か~。は~」と気落ちしながら歩いていると、雪野は「お兄ちゃん、学校楽しいじゃん。なんで行きたくないの?あ、友達がいないのか」と笑いながら言ってきた。「いない訳じゃないよ」と反論した。そんな会話をしていると後ろから、「おはようございます」と元気な声が聞こえた。僕は疑問が浮かんだ。女の子の声?。全く友達がいない訳ではないが、女の子の友達は恥ずかしながらいない。少し怖いので無視していると、さっきより大きい声で「おはようございます」と聞こえた。少し不思議に思いながらも無視して歩いていると、「何で無視するんですか」と肩を掴まれたので振り向くと、うちの高校の女子用の制服を着ている可愛らしいショート髪の女の子が頬を膨らませて立っていた。「え、誰?」と咄嗟に言葉が出てしまった。登校中に友達と話したこともないし、話かけられたこともない。雪野は「この子誰?」とキョトンとした顔で聞いてきた。僕は「ごめん、知らない。多分人違い」と言った。すると女の子は「人違いじゃないよあなたの名前は山西悠一くん」。それから女の子が雪野の方を向き「この子が雪野ちゃんか~。言ってたとおりめっちゃ可愛いー」と言ってきたので驚いた。僕は急いで雪野を守るように雪野の前に立ち「な、なんで僕と妹の名前知ってるの?」と動揺しながら聞いた。
その反応を見て、その女の子はこんな事を言い出した。「一週間会ってないだけで人のこと忘れるの?」。そこで僕は「人違いだと思います」と言うと、女の子は「本当に忘れちゃったの?私よ私。山西由利」と言った。僕は「え!!」と驚いた後、固まってしまった。なぜなら前回会った時由利さんは前の学校の制服に短いポニーテールだったからだ。
彼女は「新しい学校の始まりだから心機一転言葉遣いもイメチェンしようと思って♪」と笑顔で言ってから「似合ってる?」と聞いてきた。僕はどうにか自力で我に返り「う、うん。似合ってる」と答えた。すると雪野は「お兄ちゃん、このお姉ちゃんの事知ってるの?」。僕は「うん。この女の子が前話した同じ部活の由利さん」そう説明すると、雪野は「よろしくお願いいたします」と言い頭を下げた。その後、雪野はなぜか少しだけ由利とコソコソ話をしてから僕の横を歩き始めた。そして雪野を学校へ送り、僕達は高校へ向かった。
高校に着いて彼女は「登校したら職員室来るように、って言われてるから」と言い職員室へ向かっていった。歩いているだけで男子生徒だけでなく男子教員も彼女に見とれていた。
彼女とそんな彼女に見とれる人を後目に、僕は教室へ向かった。
僕の席は廊下側の一人しかいない席だ。隣に椅子と机があるが、友達が少ない事もありその席に座る人はあまり見た事がない。
そんな席に座り、家から持参してきた本を読んでいると、数少ない友達の一人が僕に話しかけてきた。「聞いたか?」。僕が「何さ」と聞き返すと、友達は「このクラスに転校生くるんだってさ」。まさか由利ではないと思い、友達の話を聞きながら{由利以外にもこんな時期に転校してくるやつがいるんだな~}と思った。
「どんな人だろうな~」みたいな話をしていると、担任の河崎先生が教室に入ってきた。先生は、少し厳しい社会科そして生活指導をしている女の先生だ。
みんなが席に座ると出席をとり、朝のホームルームが始まった。 色々な連絡をした後、先生が話を切り出した。「最後に、このクラスに新しい仲間が増えます。じゃあ入って」と言った。入って来たのはショート髪の可愛らしい女の子だった。女の子は教卓まで歩き、教卓に着いたら前を向いた。
女の子が教卓に向かっている間に先生は、黒板に大きく{山西由利}と書いた。
僕を含めクラスのみんなが驚いたが、みんなと僕の驚いたポイントが違う事を感じた。みんなは彼女の可愛さで驚いているが、僕は彼女と同じクラスになった事に驚いていた。
騒がしくなったので、先生が「みんな静かに」とみんなを制した。
しかし、僕は驚き過ぎて声が出なくなった。そして「じゃあ山西さん、自己紹介して」と先生が由利に言った。由利は「はい!」と言い、自己紹介をした。「山西由利と言います。山頂高校からこの高校に転校してきました。これからよろしくお願いします」と言い頭を下げた。自己紹介が終わると先生が「じゃあ由利さんの席は、そこに寂しく一人で座ってるもう一人の山西の隣で」と言った。
僕は「この学校の教師は、生徒をひどい呼び方する人しかいないのか」と思った。
そんな僕の思いとは裏腹に、彼女は「はい」と突っ込むこともなく答えて、僕の隣の席に座った。そして僕の方へ向き「よろしくね♪」と笑顔で言った。
授業が始まった。横を見ると真剣な顔で授業を受けている由利がいる。そんな彼女の真剣な顔に僕はドキッとしてしまった。
休み時間になった瞬間、由利の席にクラスメイトどころか噂を聞いた他のクラスの人達まで集まって来た。まあ、この端正な顔立ちをしているなら注目されるのもしょうがない。
友達もみんな由利の方へ行ってしまったので、僕は一人で読書でもしようと本を開いて数ページ読んでみたが、由利の席に集まる奴らの多さで肩身が狭くなってしまった。そもそもあまり人ごみは好きではないし、ガヤガヤと声がうるさく集中出来なかったので、教室の隅へ移動して本に集中し読み始めた。
(由利)
新しい学校のクラスに入って初めての休み時間、隣の席になった男の子と話そうと思った。その矢先に事件は起きた。クラスメイトたちが私の所に集まってきたのだ。驚いていると、集まって来た中の一人が「前の学校はどんな所だったの?」と聞いてきた。私は「みんな仲良くて良い学校だったよ」と答えた。
ふと横を見ると、彼がいない。みんな集まっているので、目だけで探していると、彼は教室の隅へ移動し、静かにたった一人で本を読んでいた。
私は少しショックを受けた。彼だけがこの輪の中に入っていなかった。つまり私に全く興味を持っていないという事だ。
結局休み時間中ずっと質問攻めに合っていた。
休み時間が終わり席に戻ると、由利が疲れた感じで机の上に顔を突っ伏していた。僕が「だ、大丈夫?」と聞くと、彼女は疲れた声で「ずっと質問に答えるの疲れた~」と言い、また顔を伏せてしまった。
そして昼休み、昼飯を食べようとお弁当を持ち、いつも昼飯を食べてる学校の屋上に向かおうとしていると、後ろから「お~い。悠一くん~、一緒にご飯食べよ♪」と言いながら由利が駆け寄って来た。僕は少し動揺して、顔を赤らめ「な、なんで下のな、名前で呼んだの?」と驚いていると、彼女は「呼んで見たかった、だ・け」とウィンクしながら答えた。その姿を見たとたん僕の体温が上がった。
屋上に着き、備え付けのベンチに座ると由利が「今日のお弁当の中身は何?」と聞いてきたので、僕は「分からない」と言いながらお弁当箱の蓋を開けた。
中には、から揚げ二つ・焼きそば・おにぎり・小さなエビの天ぷらが一杯に入っていた。
僕が彼女にお弁当の中身を伝えようと「今日のメニューは・・・」と言いかけると、横から由利が覗いてきた。そして少しお弁当を眺めた後「すごいね~」と言いながら顔を引っ込め、自分のお弁当を見せてきた。
由利のお弁当は、女の子らしいピンクのお弁当箱にかわいいキャラ弁が入っていた。「これ由利が作ったの?」と聞くと、「うん。かわいいでしょ~」といいながらキャラ弁の服部分になっている海苔ご飯を食べ始めた。
それを見て僕もから揚げを食べ始めた。
そして午後の授業が始まった。理科実験の授業なので理科室に移動し、指定された席に座り授業を受けていた。
理科室での僕の座っている席は由利からそこそこ離れていた。しかし僕はあまり残念とは思わなかった。なので、その授業だけはお互いにあまり関わらなかった。
授業の中、僕が所属する卓球部の顧問、そして理科の先生である内山先生が「今から5分間教室を立ち歩いていいから、これからの授業で一緒に実験する二人一組のペアを決めてくれ」と言った。
僕は誰とペアになっても良かったので、席に座りながら頬杖をついて周りを見ていた。みんないつもクラスでつるんでいる人と組んでいて、ほとんどの人が同性の人と組んでいた。そんな様子を見ながら座っていると、「相手いないなら私と組まない?」と由利が言ってきた。周りを見ると僕の友達含めほとんどペアが出来ている事が分かった。そして由利は続けて「悠一くん、負のオーラみたいなのが出てるから近づくのに苦労したよ」と言った。「出してない。」と言った。すると彼女は「ありゃ、無意識」と言った。僕は「まあ、みんな組んじゃったみたいだからよろしく」と言い由利とペアを組んだ。
その日は食塩水を蒸発させ食塩を取り出す実験だった。詳しく説明すると、食塩水をガスバーナーで温め食塩を出し、それをろ過して食塩だけを摘出するという内容だった。
僕は生まれつき筋肉が弱くチャッカマンが付けられないので、由利に事情を話すと快く着火係を引き受けてくれた。僕はガスバーナーの操作を担当した。
そんな感じでチャッカマンを付けて貰い実験を始めようとしたら、「は?女子に火扱わせるとかダッサ」という声が聞こえた。声が聞こえた方向を見るとクラスのいじめっ子が取り巻きを引き連れて立っていた。僕はこいつらに関わると面倒くさいことになる事を知っているので無視をしていると、ドンドン悪口がエスカレートしていった。無視を続けていると、急に由利が立ち上がり怒った声で「人には得意な事もあれば苦手な事もある。それをからかうってどうなの!」と言った。いじめっ子は、由利の圧に圧倒されたのか「覚えてろー」捨て台詞を吐きながら去っていった。僕が「は~」と息を吐き出すと、「悠一、大丈夫?」と由利が心配してくれた。「僕は、大丈夫」と引きつっているが笑顔で答え、実験を続けた。
そして由利が持って来てくれた水でビーカーを冷やし、そのうちに二人で一緒に作業を進め、ろ過用の装置を用意し無事食塩を摘出出来た。
そして今日の最後の授業は体育だった。いつもは男女別々に授業をするのだが、今回は男子担当の先生が休みなので男女合同でバトミントンをやった。
既にペアが先生の方で決まっていたのでその子とバトミントンの練習をしていると、後ろの方から嫉妬の籠った視線を感じた。視線の先には由利が怖い顔でこちらを見ていた。彼女は僕を見ているというよりも、僕と一緒に練習をしている女の子を見ているように思えた。
由利は僕が見てる事に気づくと、なぜか睨んできた。
少し時間が過ぎると先生が「みんな自由でいいから違う人と組んでくれ」と言った。先生が言った後、体感一秒もしない内に由利が僕の所にすごい速さで来て、必死に「私とバディーを組んで」とすごい勢いで懇願して来た。なぜ<ペア>ではなくバディー>というのかは分からないが、圧に押され「お、おう」と返事をしてしまった。
由利と練習している途中に、さっきはなぜ睨んでいたのか気になったので「さっきはなんで睨んでいたの?」と聞いた。すると彼女は、頬を赤らめ恥ずかしそうに「悠一くんを取られたくなかった///」と答えた。
「そうなんだ。ありがとう」軽く答えてしまった。そうすると彼女は少し曇った顔をした。僕はそれを感じて「ごめん。気を悪くさせてしまった?」と謝った。すると彼女は笑顔に戻り「こっちこそ、ごめん。こんなこと急に言われても分からないよね」と言った。
そして二人が笑い合った所で先生が「そこの二人、ちゃんとやれ」と注意されたので、「「ごめんなさい」」と二人で同時に言って笑い合い練習に戻った。
すべての授業を終え掃除の時間になった。僕と由利達は体育館担当だった。僕と由利はモップ担当、他の人達は箒担当になった。掃除を始める時に由利がこんな事を言い出した。「勝負しよ♪汚れを多く集めた方が勝ち」。僕は「その勝負乗った!」といい勝負を始めた。結果は由利の勝ちだった。モップを振って出た埃などの汚れの量は誰が見ても圧倒的に由利の勝利だった。結果を見て由利は「やった~私の勝ち!」と喜んでいた。すごい喜びように驚いて怪訝そうに由利を見ていると、由利もこちらを同じような目で見てきて「何よ?」と言って、教室に帰る際に「お菓子奢って♪」とウィンクして体育館を出て行こうとした。「え、奢るって・・・ちょっとまって~」と僕は追いかけた。
今日の部活は、体育館が取れなかったので教室の中で筋トレになった。
みんながワイワイと教室の広い所で楽しく話ながらやっている中、僕は教室の隅で体幹トレーニングをやっていた。すると由利が近づいて来て「あの約束、忘れてないよね」と言いながらストレッチを始めた。そして部活が終わりいつもどおり僕はみんなが帰るのを待つはずなのだが、由利が来てから由利と話したいのかみんなの帰るのが遅くなった。そのため最近はみんなより早く帰るようにしている。
そして今日も早く帰ろうとすると、「悠一くん~一緒に帰ろ!」と由利が近づいて来た。一緒に帰っても良いのだが、掃除の時の約束で奢らされると思ったので無視して帰ろうとすると肩を掴まれた。そしてすごい気が籠った声で「約束忘れてないよね?」と言う声が聞こえた。声の方向を見ると、目を見開いている由利がいた。怖かったので「分かった、分かった。一緒に帰ろ」と言い、二人で歩き出した。
僕が歩いていると、隣で歩いている由利が「なんで先に帰ろうとしたの?」と聞いてきたので、「僕の大事なお小遣いを奪う悪魔を増やしたくなかったからね。失敗して見つかったけどな。」と言った。「悪魔ってなによ」と言った後、僕が道を曲がると由利が「ちょっと、そっちから行くと駅に遠回りになるよー」と言っているのが聞こえた。僕は「知ってる」とだけ答えそのまま歩き出した。由利は「ちょっと何処行くの?」と不服そうな顔をしながらも付いて来てくれた。「ここって?」と目を丸くした。僕が来たのは、朝雪野を送った小学校に繋がっている学童だった。「何するの?」と学童の玄関に向かう僕の後ろからそう言いながらも由利は付いて来た。そんな事は気にせず僕は玄関のインターホンを押した。中から先生が出て来たので、僕は「雪野をお願いします」と言った。先生は「良いお兄さんね。分かりました」と言い奥に下がった。時間がいつも少し掛かるので由利にここ来た理由を話した。「由利。ここに来た理由は、雪野を迎えに来たんだ」。すると由利は「なんだ~そうならそうと言ってくれたら良かったのに」。そんな事を話していると、学童の奥からトコトコと玄関の方にかけてくる足音が聞こえた。見るとこちらに走ってくる雪野が見えた。玄関に来た所で「お帰り~」と言ったら、雪野が「ただいま~」と言って僕に抱き付いてきたので、抱っこしてあげた。先生に「雪野は、いい子にしてましたか?」と聞くと、「もうすごくいい子にしてましたよ。友達の相談を聞いてあげたりしてて、今日その相談してきた事がうまくいったらしいですよ」。僕は、それを聞き雪野に「そうなの?」と聞いたら「うん。茉優ちゃんの相談に乗ってあげたら、それが成功したの」と嬉しそうに言っている。それから先生が「じゃあね、雪野ちゃん。また明日」。雪野も「さようなら」と言い、そして三人で駅へ向かった。
三人で歩いていると由利が頬を膨らませて「約束を破ろうとしたでしょ!」と言った。雪野は驚いた顔で「お兄ちゃん約束破ろうとしたの?」と少し大きな声で言った。由利は「そうなの、悪い子でしょ」。僕は「ごめんって、ちゃんと奢るから許してくれよ」と謝る事しか出来なかった。由利は「分かった。いいよ、許してあげる」と言ってくれた。
そして座川のホームにあるコンビニへ行き、雪野は「いつもどおり、よろしく」といいコンビニの中に入っていった。僕は由利に「学童の迎えが遅い代わりに安いお菓子なら買ってあげてるんだ」と言った。そして由利にも「欲しい物選んで良いよ」と言うと、由利は嬉しそうに店内を見ていた。そして少し迷ってから「これにしよう」と言い、コンビニでは少し高めのチョコレートを選んだ。そのチョコレートを見て僕は「少し高く・・・」と最後まで言い終わる前に由利は無言の圧力を掛けて来た。しかも雪野も「私も同じのにする」と言い同じチョコレートを持って来た。焦りながらも僕は「分かった、分かった」とレジに行きお金を払った。そして三人で一緒に帰った。
由利が転校してきて数日がたった。その日は郊外学習の日だった。朝いつもより早く起き、私服集合なのでTシャツとズボンに着替えた。持ち物の最終確認を終えて、ウエストポーチを腰に巻きキャリーケースを持って家を出ようとすると、目を擦りながらパジャマ姿の雪野が玄関にやって来た。「お兄ちゃんどこ行くの?私も行きたい」と言ってきたので、「学校の行事だからお兄ちゃんしか行けないの。お土産買ってくるから。お兄ちゃん三日間家にいないけどいい子にしてろよ」と言って家を出た。郊外学習で大山に行くのだ。今日の集合場所の東九駅へ向かうため、桜野駅の5番線に到着する電車に乗り東九駅へ向かった。各駅停車なので次は西町駅。見た事のあるショート髪の女の子が乗って来た。よく見ると白いワンピースに身を包んだ由利だった。「やあ!悠一おはよう」とあいさつしてきたので、僕も「おはよう、由利」と返した。それから、これからの郊外学習の事についてあれこれ話している内に東九駅に着いた。集合場所を探していると改札の近くに僕らと同じ学生の男女の団体が見えた。行ってみると僕らの学校の生徒達だった。僕と由利は先生に名前を告げ列の後ろの方に並んだ。
新幹線に乗って二時間半、大山駅に着いた。そこからバスに乗り最初に2泊するホテルへ向かった。ホテルに着くと大広間に集められホテル内の地図と部屋割り表が配られた。今回は生徒の希望で仲の良さとか配慮されて、先生が部屋を決めたらしい。僕は自分の部屋番号を確認して部屋に行くと、由利が座って外の景色を眺めていた。ドアが開いたのに気づき由利はこっちを見た。そして「やあ!」と言ってきた。僕は部屋を間違えたと思いドアを閉めると、「何で閉めるの?」と言いドアを開けてきた。「部屋間違ったと思って」。すると由利が「合ってるよ。部屋が角部屋で少し小さいから私と悠一くんの二人部屋」と答えた。
僕は「男女同室って、先生何考えてるんだ~」と思っているとポケットに入っているスマホが鳴った。スマホの画面を見ると友達から電話が掛かってきていた。「もしもし」と電話に出ると唐突に「ヤバイヤバイ、僕の部屋仲いい男女3人ずつなんだけど~」と叫んでいた。「うん、僕も部屋に来て驚いてる」と答えた。「お前は誰と一緒?」と聞いてきたので、「由利」と答えた瞬間電話を切られた。「ったく」と思いながらスマホでクラスLINEを見ると、周りにも同じ境遇の人が多くいたが、みんな仲が良かったり、いつも一緒にいるカップルなどが多く、抗議する人はいなかった。由利が笑顔で「これから二泊三日よろしく」と言ったので、僕も「はい、よろ」と答えた。大山、一日目は時間もあまりなかったので、ペアごとにお城や神社を一つずつ回り少し自由時間を取り、その後ホテルに戻り二十二時に就寝の予定だった。そしてペアは部屋割りと同じだ。
自由時間に僕は由利と二人で城壁を見ながら自前の少し画質の悪い水色のカメラで城壁を撮影していると、由利が「何そのカメラ?少し古いんじゃない」と聞いてきた。「これは、僕が中3の修学旅行の時に親に買って貰ったんだ。少し画質が悪くても思い出に残す撮影だからこのカメラで撮るんだ」と答えた。すると彼女は「大事なカメラなんだね!」と言った。その後、城など二人で色々な写真を撮り、集合時間どおりに戻りバスに乗ってホテルに向った。
僕はホテルに戻るとカメラを充電器に差し、布団に座りスマホで小説を書き始めた。そして風呂に入らなければいけない時間になったので、じゃんけんで順番を決めてお風呂に入り、夜ご飯は部屋に運んでもらうタイプだったので二人で今日の出来事を喋りながら夜ご飯の小さなお好み焼きとたこ焼きが入った定食を食べた。由利との夕食はとても楽しいものだった。そしてスマホのアラームを設定して就寝した。
二日目、今日はUAJに行って班行動する予定だ。朝は六時に起床予定だった。僕は目覚めて時計を見たら、五時半だった。隣を見ると布団で由利が寝ている。由利が寝てる間にスマホのライトを頼りに服を取り出し着替えた。そしてスマホをいじっていると、急に少女アニメのオープニングが流れた。なぜ分かったかというと妹の雪野がそのアニメを見ていたからだ。急に流れた曲に驚いていると、由利が大きなあくびをしながら起きて、スマホを操作しアラームを消し、「悠一くんおはよ」と言ってきた。僕は驚いた直後だったので、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして「お、おはよ」と言った。僕のそんな顔を見た由利は「ははは、何その顔?」と笑っていた。僕は我に返り「いや急に[キュンキュンメモリー]のオープニングが流れるから」と答えた。すると由利が「なんで少女アニメ知ってるの~」と聞いてきたので、「僕じゃなくて雪野が見ててそれで」と答えた。「なるほどね~」。雪野が見ているというのは事実だが、本当は僕もハマっていた。
それから由利も脱衣所でパジャマから私服に着替え、時間になると二人で朝食を食べる大広間へ一緒に向かった。
大広間に着いて朝ご飯を食べていると、友達が隣でご飯を食べ始めた。そして僕に話しかけてきた。「今日のUAJ楽しみだなーお前と回れないのが悲しいけどな」と言って笑った。僕もこの言葉に笑いかけ「お前の方が友達多いだろ」と軽く友達の首絞めた。そんなじゃれ合いをしている僕達を由利は少し冷めた目で見ていた。バスでUAJに移動し、ここからは班行動になった。園内を歩いていると由利が口を開いた。「男の子はなんであんなにじゃれ合うんだろう?」。僕はそれを聞いて「僕そんな事余りしないし」と言った。それを聞いた由利はいたずらっ子のような声で「うそ~」と言った。僕が「なんで?」と尋ねると由利は「悠一くん、最近そのじゃれ合いをしましたか?」と質問してきたので、僕は「してない」と答えた。すると由利に「嘘つかない!」と注意された。「ついてない」と反論すると、由利は証拠を話す探偵みたいな顔で「今日の朝ご飯の事を思い出して」と言った。僕は考えたあと「何かあったっけ?」と答えると、「あら?無自覚」と言った後に「朝ご飯の後、友達とじゃれ合ってたじゃないですか~」と言った。「あ~あれか」と思い出した。そして「日常だからあんまり気にしてなかった」と答えた。すると「だからなんでじゃれあっていたのかな~と思って。ま、でも気にしてないならいいや」と言った。
その後UAJで上下する飛行機に乗ったり、ゲームの世界観を模した場所に行ったりした。そして色々遊んだ後、お昼ぐらいになってお腹が空いてきたので、売店で昼食を取った。僕はハンバーグ、由利はポテトを食べた。食後歩きながら、次どこに行くかを一緒に考えていた。すると由利は「提案~、お化け屋敷とかどう?」と提案してきた。僕は「う~ん」、続けて「却下」と答えた。すると由利は「怖いの~?」と煽って来た。僕は由利のその煽りに乗ってしまい、次に行く場所はお化け屋敷に決まってしまった。
入るお化け屋敷は、怖すぎず怖くなさすぎない普通ぐらいの怖さのお化け屋敷を、ネットの口コミなどから二人で決めて入ることにした。入口から入るとすぐにおどろおどろしい音楽が流れてきて、中の作りはよくあるものだが壁紙や血のりがリアルで、屋敷内は不気味さがただよっていた。歩いていると横の茂みからお化けが出てきた。「わぁっ」と少し驚いたがそこまで怖い訳ではない。由利は声を出さなかったのでこの様なことは得意なんだと思い、すごいなーと感心した。
他にも十字路に模した道路では、顔が大きい幽霊が十字路の真ん中に着いたらこっちを向いたり、井戸から急にゾンビが飛び出てきたりと色々な仕掛けがあった。しばらくすると腕に細かく動いている感触があった。流石に体に干渉してきているので、少し怖がりながらも意を決して振り返った。少し拍子抜けした。僕の腕を持っている手の持ち主は由利だった。僕の腕を持ち、目を瞑り涙を浮かべながら震えていた。恐らく最初の仕掛けの時は平気で声を出さなかったのではなく、怖くて声がでなかったのだろう。お化け屋敷を出るまで由利は僕の腕をずっと持っていた。なんだかんだお化け屋敷を出て二人でベンチに座った。由利はまだすすりあげている。そんな由利を{発案者、しかも散々煽っといてこれかよ}と思いながら呆れた目で見ていた。しかし心のどこかで涙を浮かべている由利をすごく可愛いと思って顔が紅くなってしまった。それから少し時間が経つと、「お~い。悠一~」と呼ばれた。そちらの方を見ると友達がグループの仲間と一緒にこちらに向かって来ている。僕の前に着くと隣の由利を見て険しい表情に変わり、「お前女子泣かしたのか?」と聞いてきた。回りの男子は僕を睨み、女子は由利を慰めながら僕を睨んでいる。僕は友達に「あれ」とお化け屋敷を指した。すると友達やみんなは、「なるほど!」と言った。そうすると由利の顔が真っ赤に染まっていき、急に立ち上がり僕の手を引き人気のない所へ連れて行かれた。「なんで本当の事言うの?そこは私をかばってくれるんじゃないの?!」恥ずかしく真っ赤になった顔を近づけてきた。僕は圧に押されながらも「あ、あの時認めたら女子を泣かせたって事で、僕友達失ったりしちゃうし」。すると由利は普通の少し赤い顔で「それもそうか、君はただでさえ友達が少ないのにあの子がいなくなると友達がゼロになっちゃうのか」。それを聞いた僕は「そんな友達少なくない。てかお前泣いてたんじゃないの?」と聞くと、まだ少し赤い顔でウインクをしながら「友達が来たところぐらいからウソ泣き」。僕は「なんで?」と聞いた。すると「泣き止んだタイミングで友達が来たから、このまま泣いていたらどうなるんだろうな~って。それと、その前に悠一顔赤かったし」といたずらっ子ぽい顔を浮かべていた。僕は図星をつかれ何も言えなかった。
そんな事を話していると、「お~お二人さんラブラブだね~」と声がした。僕は少し嫌な顔をしながら声がした方を見ると、先日由利が追い払ったいじめっ子が取り巻きを従えて立っていた。「何の用ですか?」と聞くと、由利の方を向き睨みながら手を出し「金くれ」と言って来た。由利が何もせず突っ立っていると「早くしろ。こんなことに時間を使いたくないんだよ」と言った。僕は間に入り「嫌だと言ったら」と言うと、「力尽くで奪いとる。いけお前ら」と言うと、取り巻き達が襲いかかってきた。僕は「ここはあまり人がいないよなっ」と小声で言い、そして「下がってて」と由利に言った。僕は取り巻きに対処しながら、「女子に睨みとかきかしてるのに自分で戦わないとかマジか」と言いながら久しぶりの戦いに笑みを浮かべていた。
(由利)
私達は、前に私が追い払ったいじめっ子に絡まれていた。私は睨まれ、金を要求された。前より取り巻きが多いので、私は怖くて涙を浮かべ震え困っていると、悠一が守ってくれた。口論をしていると思ったら急に喧嘩が始まっていた。悠一は喧嘩を少し楽しんでいるように見える。そして取り巻きを倒し、いじめっ子へと向かって行った。
取り巻きを倒しいじめっ子へ向かった。向こうも鬼の形相で向かって来て捕まったが、肘でみぞおちに入れてやった。そうすると彼は、何も言わず怯えて去って行った。
僕は「ふー」と息を吐いた。そしたら物陰に隠れていた由利がこっちに来た。「悠一~大丈夫?」と言ってきた。なぜなら喧嘩に勝ったとしてもダメージはある訳で、少し血が出ていた。口元の血を拭き取り「うん。大丈夫」と右手を隠しながら言った。なぜなら右手から血が出ていて、それを隠したかったからだ。でもそれを見透かしたように「右手見せて」と言ってきた。「え、何で?」と誤魔化そうしたが、手を掴まれ無理やり目の前に出させられた。無理やり手を掴まれたので「いたっ」と声が出てしまった。由利はその手を見るなり「わぁ想定外以上にすごい傷」と言いながら、バックから消毒液やら包帯やらを出して手当てをしてくれた。
手当てをしている途中、僕は、気になったので「なんで由利はバックに消毒や包帯が入ってるんだよ。お前結構しっかりしてるから持ってこなくても大丈夫だろ」由利は、「いや、私も時々失敗するし、私と同じ班の誰かさんは、とても危なっかしいから」と可愛くウィンクした後、少し顔を曇らし「ごめんね。私のせいでこんな大怪我させちゃって」と少し沈んだ声で言った。僕は「大丈夫、あいつには前からイライラしてたから」と笑顔で返した。「ならいいけど。一つ質問があるの」。僕が「何?」と聞くと、「なんであんなに強かったの?」。僕は、苦笑いをし「ああ、あれか」と言い、喧嘩が強い理由を話した。「本当は僕、強くない。多分勝てたのは、気持ちの問題。楽しいと思いながら戦った…」と話ていると、由利が納得したように「だから喧嘩の時笑ってたんだ」と言った。「うん。後もう一つの勝てた理由は…」と言い、一旦深呼吸をし「守りたい人がいたから」と笑顔で答えた。言い終わった後由利から何も返答がないので由利の方を見ると、頬を紅く染めボーとしていた。
少し時間が経つと由利が我に返り動揺しながらも「次行こ、次」と諭されたので何も考えず従った。
その後も色々な乗り物に乗って楽しんだ。そして最後に二人で大観覧車に乗った。ちょうど夕方だったので景色は最高だった。「すごく夕日がきれい。今日はすごく楽しかった」と由利は笑顔で僕の方を向いた。僕は少しドキッとした。なぜなら、彼女の顔は夕日に照らされすごくきれいに見えたから。
大観覧車を乗り終え、ホテルに戻った。寝る準備を終えたら夜ご飯を大広間で食べ、二人ともお風呂に入った後部屋に戻った。
部屋に戻りスマホをいじろうとすると、隣の布団の上でスマホをいじっている由利が「私のゲームプレイを見て」と言うので見ていると、布団の上で充電していたスマホが鳴った。スマホを取り画面を見ると雪野から着信がきていた。まさかのビデオ通話だった。少し苦笑いを浮かべた僕を見て、由利が「だれから~?」と聞いてきたので、「雪野から。しかもビデオ通話」と言うと、「早く出てあげなよ。私も話したい」と言い、由利は隣に座ってきた。通話ボタンを押すと、「あ、お兄ちゃん」とスマホ越しに手を振っている雪野が写った。すると由利が「雪野ちゃん」と手を振っていた。雪野は「由利お姉さんもいる」ともう一回大きく手を振ってきた。その後雪野は「二人とも元気?」と聞いてきたので、僕は「元気」と答えようとすると由利が「二人とも元気だから大丈夫だよ」と伝えると、雪野は「よかった~」と言った後、少し頬を赤らめ「少し寂しい」言った。そんな悲しそうな顔をするので僕は「後一日で帰るから。そうしたら二人で雪野の行きたい所に行こう」と言ったら、雪野は「三人がいい」と言った。僕は「でも由利は忙しいだろうし」と言うと、由利はスマホで予定を確認してくれ「振替休日ならいいよ」と言ってくれた。雪野は「やった~」ととても喜んでいた。僕は「ありがとう」と由利に礼を言い、「だから、後一日我慢して」と言った。そうすると雪野は「は~い」と言い電話を切った。
その後、二人で寝る準備をして就寝した。
三日目は、海遊館で班行動をする事になっていた。朝の準備や朝食を終え海遊館へバスで移動した。そして班行動の時間になり、班行動を始めた。二人で館内を歩きながら、僕はパンフレットを見て「ここではジンベエザメが見られるらしい」と言うと、由利は「そうなんだ。すごいね!」と返してくれた。とても大きいジンベイザメも含め他にも色々な魚を見て回り、説明文を要約してまとめたり、写真を撮ったりしながら海遊館の中を見学した。そして三日間の学習を終え新幹線で帰って来た。新幹線の中でも僕と由利はUNOなどを楽しんだ。
校外学習から数日後、今日は由利と雪野と出かける日だ。
朝、僕が部屋で着替えていると隣で寝ていた雪野が起きた。雪野も着替え始めて少し経ったあと、「お兄ちゃん」と呼んできた。雪野の方を見ると下着姿の雪野が自分の服を引き出しから出していた。そして「何着ていけばいいと思う?」と聞いてきた。僕は少し考え「お気に入りの服を着て行けばいいじゃん」と答えた。すると雪野は「は~い」と言って引き出しを漁った。
着替えを終え持ち物などを準備していると、着替え終わった雪野が「お兄ちゃんいつものように髪結んで」と言った。僕が「しなかったら?」と聞き返したら、「お父さんに報告」と言った。報告と言っても嘘泣きで父の所で髪を結んでくれない事を言って、父に怒ってもらう様仕向けることだった。なので僕は「分かった、分かった」と言って雪野の後ろに回り「どんな髪型?」と聞いた。雪野が「なにがいいと思う?」と聞いてきたので、僕は「ポニーt」と提案。 しかし雪野は「やっぱりツインテールにしよ」と言った。「決めてたなら聞くなよ」と心の中で思いながら、最高にかわいい雪野のツインテールを完成させた。
僕と雪野は着替え終わり、朝ご飯を食べてから二人で自転車の準備をしていると僕のスマホに通知がきた。由利からの待ち合わせ場所の連絡だった。LINEで『座川駅前集合』とあった。それを雪野に見せて、二人ともヘルメットを被り自分たちの自転車に乗って座川駅に向かった。
駅前で由利を探していると、「悠一、雪野ちゃん、こっち」と薄いピンク色Tシャツに長めのスカートを履いた女の子がピンク色の自転車にまたがってこちらに手を振っていた。その姿を見た雪野は「由利お姉ちゃん~」と由利の元へ向かって行った。僕も雪野の後に続いて由利の元へ向かった。
由利の元へ着くと、二人は仲良さそうに話していた。
雪野が「これ見て。いつもどおりお兄ちゃんが私の髪を結んでくれたんだ~」と自慢げに自分のツインテールを由利に見せていた。それを聞いた由利は「今、私も髪結んでもらおうかな~」と言った。
僕が「うっ」と唸ると、由利が「嫌なの?」と聞いてきた。下を見ると雪野も「嫌なの」と続けて聞いてきた。由利だけならまだしも雪野まで加わると圧がすごい。
その二人の圧にやられ僕は由利の髪を結ぶことにした。
「何がいい?」と聞くと、「じゃあ三つ編みで」と言われたので、「難しいのなー」と言いながら僕は慣れた手つきで由利の髪を三つに分け、それを編んでいった。そして完成した三つ編みを見て由利は「すご~い!なんでこんなきれいにできるの!?」と興奮しながら聞いてきた。僕は「ときどき雪野に[お兄ちゃん三つ編みやれ]って命令されるから」と答えると、雪野は怒った顔をして「命令じゃないもん。しかも「やれ」じゃなくて「やって」って頼んでるもん」と言った。それを聞いて「いや、断ったら父さんが怒るようにしむける事で僕が断れない状況を作ってる!これはほぼ命令だよ」。 すると雪野は「怒られるのはお兄ちゃんが悪いからじゃないの」。そして雪野は続けて「私悪くないもん」と言った。そんな兄妹の言い合いを由利は苦笑いで、でもどこかうれしそうな顔で見ていた。
それから僕は「雪野、今日は雪野の行きたい所に三人で一緒に行こう」と言った。そうすると雪野は目を輝かせて「ホント~?」とうれしそうにしていた。そして「じゃあまず…」と言いかけた時、僕はすかさず「お金の事を考えて」と伝えた。すると由利は「わざわざ伝えなくても雪野ちゃんならお小遣いの管理できると思うし」と言った。僕は「はぁ~」とため息を吐き「いや、今日雪野が使うお金は僕のお小遣いなんだ」。由利は驚いた顔をしていた。続けて僕は「父から『雪野のお小遣いは少ないからお前が払え』って。こっちもお小遣い少ないのに」そう言うと、「でも雪野ちゃんよりは多いでしょ」と由利は言った。「でも…ウゥー」と唸ると、雪野は「大丈夫、パパに内緒で私のお小遣いも持ってきてるから」。それを聞いて僕は「もしかし…」雪野は「そ!お兄ちゃんのお金がなくなる前提で」と言った。僕は「そんな~」と肩を落とした。
そんな僕を気にせず女子二人はそのまま話を進めていた。「雪野ちゃん、どこに行きたいの?」と由利が聞くと、「え~とカラオケとかゲーセンとかファミレス」と雪野は笑顔で答えた。
集合が11時30分だったのでまずファミレスで昼食を取る事にした。ファミレスに入り僕はラーメンとドリンクバー、雪野はお子様ハンバーグセット、由利はハンバーグとサラダとドリンクバーのセットを頼んで三人で食べた。食べてる間は、雪野が自分の学校の事を楽しそうに話していた。
そして食べ終わると、次はゲーセンに向かった。僕はお気に入りのゲームをしたかったが、そのゲームのアイテムを持ってきていなかったし今日は雪野のために来たので、自分の欲望を抑えた。そんな事を考えながら二人の後ろを付いて行と、「お兄ちゃん~これやりたい~」と雪野が僕を呼んだ。そちらの方を見ると雪野が好きなアイドルのアニメのゲームがあり、それを目を輝かせながら見ている雪野の姿があった。僕は「分かった、分かった。100円ね」と言い機械に百円入れた。するとゲームが始まり雪野はすぐにゲーム画面に釘付けになった。そんな楽しそうな雪野を、僕と由利は後ろの保護者用のベンチに座りながら見ていた。
すると由利が「私が雪野ちゃんを見とくからゲームしてきてもいいよ」と言った。僕が「なんで?」と聞くと、「気づいてないと思うけど、悠一くんずっとゲームの方見てるよ♪」とウインクしながら教えてくれた。僕は「まじ!え~~、う~~ん」と言いながら考えた。そしてある一つの方法を考え付いた。「じゃあ交代で遊ばない」と提案した。由利は「了解♪」と言い、続けて「いってらっしゃい」と言った。
お気に入りのゲームでプレイして戻ってくると、少し休憩しているのか雪野と由利が並んでベンチに座っていた。戻ってきた僕に雪野が気づき「お帰りお兄ちゃん~。でもなんで私のプレーを見てくれなかったの?」と頬を膨らませた。僕は「ごめん、ごめん、やりたいゲームがあったから。ははは…」と乾いた笑いをして誤魔化した。すると雪野は「ま、いいけど。お兄ちゃんのお金が減るだけだから」と少し拗ねた声で言った。それを聞いて僕は「「だけ」って。てか、どっちにしろお金は減るんだから」と言うと、「いや、今日これでやめようと思ったけど、お兄ちゃんがプレイ見てなかったからもう一回!」と言い僕の前に手を出した。僕はしぶしぶ100円を財布から出そうとすると、「今回は私が出すよ」と由利が財布から100円を出してくれた。僕が「ごめん」というと「大丈夫」とVサインで返してくれた。そして今度はしっかりと雪野のプレーを見ていた。どうみても数回しかやってないと思えない。「もしかして」と由利を見た。そうすると由利が「うん!私がお金をプラスして、出しちゃった」と言った。僕は、「え、本当にごめん。お金出させちゃって」と謝った。すると「え、いや私が好きでやった事だから」。由利は「頭を上げて」と僕に頭を上げるように諭した。
それから最後にカラオケに向かい、三時間で予約してカラオケをした。僕の提案で最初に国歌を三人で歌った。次は由利の提案で女子二人の共通の好きなアニメ「キュンキュンメモリー」のオープニングを由利と雪野が熱唱した。それから今度は雪野の提案で僕は由利と恋愛ソングを二人で歌わされた。歌い終わった後、二人は共に赤い顔をした。そんな顔をしながらも三人で歌をいっぱい歌い、楽しんだ。
帰り道三人で雪野を真ん中に手を繋いで歩いていると、雪野が「今日はすごく楽しかった!」と言ってくれた。それから少し歩いくと雪野が唐突に「こんな感じで歩いてるとなんか夫婦と子供みたい」と言いだした。「「へ!」」と僕と由利は驚いた声をだして顔を紅く染めた。
三人で遊んだ日から数日後、由利が転校して少し経った頃の昼休み、僕が自席で本を読んでいると由利が来て「なんでこの長い休み時間に一人で本を読んでいるの?」と聞いてきたので、「最初は友達と話していたんだけど、友達が違う人にサッカーに誘われて行ってしまったから」と答えた。
そんなことがあってから、僕が本を読んでいるとよく由利が話かけてきた。そして「今度一緒に遊びに行こう!」と言い出した。僕は「良いよ。学校と部活が休みなら・・・」とバックから予定表を出し、部活の予定を確認しようとすると、由利が「分かるよ!今週の金曜日は代休で、あと土日も休みだよ」と言った。僕はそれを聞いて「それはお前の部活が休みなだけ・・・あっ僕ら同じ部活だった」。なんと僕は由利と同じ部活に入っている事を忘れてしまっていた。というのも最近は、怪我をしてしまい部活を休みがちになっていたからだ。由利は「ははは」と笑いながら「で、どうする?」と聞いてきたので「う~ん。じゃあ土曜でいい?」と聞いた。由利は「良いよ。でも何で?」と言った。僕は「金曜はしっかりと学校の疲れを取りたいし、日曜は次の日学校だから遅くまで遊べないけど、土曜なら次の日も休みだから遅くまで遊べるし」と答えた。そして「じゃあXY駅に11時半に集合でいい?」と聞くと、由利は「OK!」と返してくれた。すると急に由利は少し寂しそうな顔に変わり「次いつ部活に来るの?」と聞いてきた。僕は「実は、・・・もう治ったから今日から部活に復帰するつもり。様子見も必要だけど早く由利と卓球したいし、無理しない程度にやっていくよ」と言った。すると由利はパァと笑顔になり「じゃあ今日、私と練習して」と言った。僕は「もちろん」と答え、部活では一緒に練習した。由利が凄く上手くなっていて驚いた。
その後部活が終わり、由利と遊びに行く日の詳しい予定を決めながら一緒に帰った。
家に帰ると父が僕に話しかけてきた。「明後日って空いてるか?」と聞いてきたので、僕は笑顔で「うん、空いてない」と答えた。父も同じように「うん、遊びの約束断ってくれ」と言った。咄嗟に我に返り「いつも言ってるよね。急な予定を入れるなって」そう言うと、父が「悪い悪い。でも再婚相手の人が会いたいって言ってるから」と言った。僕は「お願い、日にち変えてもらっていい?」と頼んだ。父は「やれやれ」と言った様子で電話をしていた。「もしもし富美子さん、土曜の件だけど、金曜か日曜に変更できない?」と聞いていた。そんな父を尻目に、自室にバックを置き、洗面所で手を洗っていた。洗いながら「父さんの急な予定なのに、何で僕が父さんに頼んで予定を変更してもらわなければいけないの?」と思っていた。
すると父が洗面所に来て「新しいお母さんとの顔合わせは金曜日に変更出来たぞ」と言ってきたので、僕は「ありがとう」と答えた。父さんがあえて{新しいお母さん}と限定したのは、僕の姉になる向こうの娘さんはその日に来ないからだろう。
(由利)
私が家に帰ると、お母さんがご機嫌に家事をしていた。そして私が「ただいま~」と言うと、お母さんは「由利お帰り~」と返してくれた。そして私は自室に向かいながらお母さんに「何かいい事あったの?」と聞いた。するとお母さんが私の部屋に来て「由利の新しいお父さんの息子さんに会える事になったの~」とウキウキしながら言ってきた。私が「いつ?」と尋ねた。お母さんは「今週の土曜日」と言った。私は「え、嘘」と驚いた。「ちょっとお母さん」とお母さんを追いかけて行くと、お母さんは電話をしていた。電話が終わるとお母さんは私に「会う日、金曜に変わったわ」と言ってきた。私は安心して「フゥ」と息を吐き出した。
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(金曜日の顔合わせ)
僕が家でゲームをしていると『ピンポン』とチャイムが鳴った。父さんが出たと思ったら、リビングから顔を出し僕に「来たぞ」と言った。僕は緊張しながらリビングの大きい机の椅子に座った。僕の向かいには、お父さんと新しいお母さんが座っている。新しいお母さんの顔立ちは端正で、誰かに似ていた。
母が口を開いた。「初めまして、私は宮本富士見。あなたの新しいお母さんよ」。僕は「ど、どうも」そう答えると、父が「他人行儀すぎるだろ」と言って少し母の方へ近づいた。それを見て苦笑いをしているとスマホが鳴った。画面を見るとLINE電話で由利から掛かってきた。僕は二人に「ごめん、電話に出てくる」と言い自室へ行き、通話ボタンを押しスマホを耳に当てた。「もしもし、急にごめん。明日の時間と場所を確認したくて電話しちゃった」と由利が言った。僕は「ごめん、今新しいお母さんとの顔合わせ中だからまた後で掛けなおしていい?」と聞いた。由利は「そうか、そういえば今日か。分かった、後で話そう」と言ってくれた。「じゃ」と言い電話を切った。そしてリビングに戻ると二人は手を握り合っていた。それにはあえてつっこまず、僕はひきつった笑顔で「電話終わったよ」と言い、その後も学校の話や家族の話など色々な話をした。この話をしてる時の安心感を以前にも感じたことがある気がした。そして解散した。
そしてその後由利に電話をした。呼び出し音が少し鳴った後「もしもし~」と由利の声が聞こえた。「ごめん、今顔合わせが終わったところで。何の要件だっけ?」と聞いた。由利は「明日の集合時間と場所を最後に確認したいと思って」と言ったので、僕は「え~と明日の集合場所は、XY・・・」と続けて言おうとしたら「ちょっと待って、メモに書くから」といってちょっとバタバタした音が聞こえてから電話口で「もう一回最初から言って」と言う声が聞こえたので、「XY駅で、時間は12時半だよ」と伝えた。「分かった、じゃっ明日ね~」と言い一方的に電話を切られた。僕は「自由だな~」と呟いた。
そして約束の日、僕は約束の15分前にXY駅についてしまった。なので昼飯を二人で食べようと思いスマホで近くの色々なジャンルの飲食店を調べていた。
調べ始めて5分ぐらいたった頃由利が駅に着いた。由利が「ごめん、待った?」と言いながら走って来たので、「ゆっくりでいいよ。全然待ってないし、まだ約束の時間じゃないから。それよりお昼何食べたい?」と聞くと、由利が「私、ラーメン食べたい」と言った。「じゃあラーメン亭ってどう?」と聞いたら、「うん。良いね」と言った。そして僕達はお店へ行き、僕は醤油ラーメン、由利は塩ラーメンを注文した。
二人でラーメンを食べていると由利が「私、今度引っ越すんだ~」と話し始めた。「え!」と少し寂しそうな顔をすると、「大丈夫、転校はしないから」。少しホッとした顔をすると、由利がニヤニヤした顔をして「私が転校しない事を知ってホッとした?」と尋ねた。僕は顔を赤らめながら「うん」と恥ずかしそうに答えた。
お腹を満たし店を出たら、由利が「次どうする?」と聞いてきた。僕は「いや、どうする?」と聞き返した。すると由利が「えっ、もしかして・・・」「「なんも決めてない」」と二人同時に驚いた。
「ちょっとどうするのよ!」と由利がツッコンできた。僕は「そう言われても、う~ん」と頭を悩ませた。考えていると由利が「魚みたいに目を泳がせてないで、なんか言ってよ」と言った。「今、考えてる!!」と大声で言いそうになったが由利の言葉を聞いていいアイデアが思いついた。「そうだ。水族館に行こう!」と思いついたように言った。由利が「何で水族館なの?」と聞かれたので笑顔で「なんとなく」と答えた。
色々と口論した末に水族館へ行く事になった。
入場すると薄暗い室内に点々と水槽があり、その中には色とりどりの魚や生き物がいた。土曜日と言う事で水族館はそこそこ混んでいたが、ゆっくり見れるぐらいの混み具合だった。撮影OKだったのでバックからカメラを取り出し撮影していると、由利が「あ、今日も思い出のカメラ持って来たんだ!」。僕は「うん、思い出残したいと思って」と答えた。
そして由利と話しながらいっぱい魚の写真や由利の写真、由利とのツーショットを撮りながら回った。そして物販へ行きお揃いのキーホルダーを買い水族館を出た。
出た時には夜になっていた。夜、女の子が一人で帰るのは危ないので、僕は由利を家まで送った。そして別れ際に由利は「今日は楽しかった。また学校でね。ゆーくん」と笑顔で手を振って家に入った。
僕は道で呆然としていた。「ゆーくん?」…
次の日いつもどおり雪野と由利と学校へ向かっていると、由利が「ねえ、ゆーくんky」と言いかけた。僕はそれを聞いて「話を始める前に、そのあだ名何?」と聞いたら、「いいじゃん♪」と笑顔で言った。「でも…」と言おうとすると、雪野が「お兄ちゃん!かわいいからいいじゃん」と言った。妹に甘い僕は「ま、まあ」と答えてしまった。答えながら「上手く丸め込まれた」と思った。
「本題に戻すけど、今日から新しい家に引っ越すんだ~」と由利が言った。僕は知っていたので普通の顔をしていた。「悲しんでるだろうな~」と思いながら雪野の顔を見ると、少し笑っているような顔をしている。「雪野、どうして笑ってるの?」と聞くと、「いや、お兄ちゃんの顔、面白くて」と言って由利と一緒に走っていった。「酷くない」と言いながら二人を追いかけた。
昼休み、由利と屋上のベンチで一緒にお弁当を食べていると雪野からLINEが届いた。今日は学童で一か月に一回ある集団下校で、先生に家まで送って貰えると言う内容だった。それを見た僕は「由利、今日雪野お迎えいらないって」とおにぎりを食べている由利にスマホの画面を見せた。すると由利は「じゃあ今日私の新しい家に来てよ。部活も休みだし」と言って来た。そして授業が終わり下校時間になった。帰りのホームルームが終って友達と好きなアニメの会話をしていると由利に「ゆーくん帰るよ~」と呼ばれた。僕はあだ名を止めさせるのはもう諦めて「うん、行くか」と言い、由利と一緒に教室を出た。僕達が教室を出たあと教室から驚きの声が聞こえた。
下駄箱で靴を履き替え由利と歩いていると、由利が急にもじもじし始めた。「どうした?」と聞くと顔を赤らめた由利が「手つないで」と上目遣いで頼んできた。僕はその上目遣いにドキッとしながらも「いいよ」と言い手を繋いだ。そして二人とも心の中で「好きな人の手、温かい」そんな事を思いながら二人並んで歩いた。
駅に着いて僕は「引っ越した家の最寄り駅ってどこ?」と聞くと、由利は「なんと桜野だよ」言った。「そうなんだ。じゃあ行こうか」と言い歩き出した。すると由利が「ちょっと、もっと驚かないの?」と頬を膨らませて言った。僕は「あんま驚かない」と言い、僕達は電車に乗り込み桜野へ向かった。
電車の中で僕はスマホをいじっていた。そして横を見ると由利は少しウトウトしていた。少し時間が経つと肩に何かが当たる感覚がした。横を見るとスヤスヤと気持ち良さそうな寝息をたてて寝ている由利の姿があった。
桜野駅へ着くと由利を起こし電車を降りた。歩いていると由利が「なんでゆーくんは、顔が赤いの?」と聞いてきた。「あ、紅くないよ。大丈夫」とはぐらかした。駅から歩いていて違和感を感じた。それは僕の家への帰り道と同じ道を歩いているからだ。違和感を感じながらも歩いていると僕のスマホが鳴った。画面を見ると父からだった。由利に「誰から?」と聞かれたので、「父さんから。出るね」と由利に断り、電話に出た。「もしもし」と電話に出ると、「悠一か。悪い、連絡が遅くなったが今日から新しいお母さんとその娘さんが一緒に住む事になった。もうお母さんは家に来てる。そろそろ娘さんも到着する頃だと思うからよろしく」と言われた。僕は「え、ちょっと、え?」と動揺したが、いろいろ聞く前に父に電話を切られてしまった。僕が「ったく」と言い電話をしまうと、「大丈夫?どうかした?」と由利が聞いてきた。しかし混乱とあきれでその声は聞こえず、そして「あの親父――!!」と叫んでしまった。由利はその声に驚いて『ビクッ』としていた。それからすぐ僕は放心状態から我に返った。「ちょっと急に大声ださないでよ。びっくりするじゃん!お父さんがどうしたの?」と由利が聞いてきたので、僕も動揺から我に返り「いや、急に新しいお母さんとその娘さんが家で一緒に住む事になって。それが今日からだったらしい。いつも僕の父さんは連絡が遅いんだよな~」と言った。すると由利が大声を上げた。「え~~ゆーくん、お父さんから聞い…いや大変だね~」と言った。僕は最初の部分が気になったが余り気にせずに、また二人で歩き続けた。
少し歩いているとコンビニがあった。由利が「あ、あそこにコンビニがある。ゆーくんコンビニ寄ろ」と言ったので、「分かった!」と言いコンビニに寄ることにした。僕は好きなトレーディングカードが売っていたので、唐揚げとそのカードを買って由利が出て来るのを待った。由利は僕と同じ唐揚げと雪野も好きな少女アニメのトレーディングカードを多く買って出てきた。「カード多くない?」と買ったカードの数を見て言った。すると「半分は家族に」と言って歩き出した。僕は「あれ?由利の家族ってお母さんだけだったような。ま、お母さんがそのアニメが好きな可能性もあるし」と思い、由利を追いかけて歩いた。
「はい着いた!」と由利がある一軒家の前に立った。僕は「ここ?」と驚きを隠せなかった。なぜならその家は僕の家だったからだ。鍵を開けて家に入ると、ドタドタと走る足音がして玄関に雪野が来た。そして「おかえりお兄ちゃん、由利お姉ちゃん」と言った。もう家に来ていた富士見さんが「お帰り」と言ってくれた。「た、ただいま」と動揺しながら返し、雪野に「親父は?」と聞いた。すると「あ、パパ?パパは夜ご飯買いに行った」と答えた。そんな.話をしていると外から車の音が聞こえた。少し経つと鍵を開ける音がして父親が帰って来た。そして部屋に入ると「おー悠一。帰って来てたのか」と言った。僕は「『帰って来てたのか』じゃなくて、何で由利が『私の家』って言うのか説明しろ」と聞いた。すると父が「じゃあ説明しよう。今日から新しいお母さんになる富士見さんとその娘さんの由利ちゃんだ。由利ちゃんはお前と雪野のお姉ちゃんになる」。それを聞いた僕は「ちょっと待って。雪野は分かるけどなんで僕の姉にもなるんだよ、同じ学年だし」と言った。すると父は「誕生日は由利ちゃんの方が早いから」僕は「う~~」と唸った後、頭を押さえながら「ちょっと一人にさせて」とバックを持ち自分の部屋へ向かい、そしてベットに転がり「好きな人と家族になり一緒に住むなんて!」とすごく動揺しながらも、少し冷静に考えていた。と言うのも、少し前から学校や部活などで一緒に行動しているうちに、由利を好きになっていった事に最近気付いたからだ。
そんな事を考えていると、「ここが私の新しい部屋か~」と言いながら由利が部屋へ入って来た。「なんで僕(厳密には、僕と雪野の部屋)の部屋に入って来た!?」と聞くと、由利はポカンという顔をして「今日から私の部屋でもあるから」と、扉の方を指さした。扉の近くに掛けてあるルームプレートに、僕と雪野のプレートの他に、いつの間にか{由利の部屋}と書いてあるプレートが追加されていた。僕はそれを聞いて父に色々と尋問する事にした。
「なんで私は正座させられているんだ?」と父。「黙ってろ。これから質問すっから絶対に嘘つくなよ!」と言い、「まず、いつから二人がこの日に引っ越してくるのが分かってた?」。すると父は「金曜の顔合わせの次の日には決まってた」と言った。「なんで僕に言わなかったんだよ」と言うと、「いや、あのー、言うのを忘れてた」そう言った。「なんですぐ言わない?」と愚痴を漏らしながら色々と聞いて、「最後に、あの部屋で三人で生活するって本気?」と部屋の前のルームプレートを指で指しながら言った。
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(由利)
私はゆーくんが部屋を出て行った後、雪野ちゃんに「私邪魔かな~?」と聞いた。そうしたら雪野ちゃんは笑顔で「あ、大丈夫。お兄ちゃんは恥ずかしがっているだけだから」と言った後「いつもの光景を見に行こう、お姉ちゃん」と言い、ドアからちょこんと顔を出していた。私も雪野ちゃんの真似をしてちょこんと顔を出した。するとリビングでゆーくんと新しいお父さんが口論しているのが見えた。それを見て笑っている雪野を見て、「雪野ちゃんはなんで家族が喧嘩してるのに笑っているの?」と聞くと、「いや、口論しているのはいつもの事だし、面白いんだもん」と少し小悪魔ぽい顔をして言った。少し見ているとゆーくんがこっちを指さした。
父は「もちろん三人でその部屋で生活してもらう」と言った。「三人で生活してもらうために少し改造した」と言い、部屋に向かって僕も父が追った。父の後ろを歩きだした。部屋に着くと「三姉弟とは言え男女という性の違いがある。だからこんなものを」と言って、部屋の奥から何かを引っ張って来た。するとカーテンが出てきて部屋を分断した。「これで着替えなどの問題は大丈夫だ。ははは」と笑いながら父はリビングへ戻っていった。
父が戻った後、僕、雪野、由利の三人で作戦会議を行った。
「雪野はともかく、由利は僕と部屋一緒でいいの?」と聞くと、急に由利の膝の上で話を聞いていた雪野が話に入ってきて「何で雪野は例外なの?」とムッとした顔と声で言った。僕は『もう膝の上に乗ってるのかよ』と思いながら「だって雪野はもともと一緒の部屋で過ごしているじゃん」と僕が言うと、「でも~仲間に入れてほしかったんだもん//」と少し顔を赤らめ言った。
「じぁあ雪野ちゃんの事も決め直せば良いじゃん。ま、三人で同じ部屋で生活する事に変わりないと思うけど」と由利は得意げな顔で言った。
「まず一つの案として、おまえたち二人はお母さんの部屋で寝るって言うのはどう?」と僕が提案すると、由利が「いやあそこでは、お父さんとお母さんが一緒に寝るって言ってた」。「じゃ、じゃあ父さんが寝てた部屋で僕がn…」と新しい提案をしようとすると、雪野が目を潤め上目ずかいで「お兄ちゃん、お姉ちゃんと私と一緒に同じ部屋で生活しようよ~」と言ってきた。妹に弱い僕。こんな事をされたら「わ、分かった」と答えるしかない。これも妹に弱い事を知っている由利の作戦だったらしく、二人を見るとハイタッチをしていた。
こうして僕達の新しい生活が始まった。
新しい生活は驚きや発見の連続だった。三人での生活は、思ったよりずっと楽しくて賑やかだった。しかし女の子と同じ部屋ということで、少しだけ間が悪いというか、間違いというか、そういう事も起きてしまった。
そんな生活が続いて数日後、家族みんなで水中と陸上どっちの生物も見られる動物園に来ていた。雪野は入口からはしゃいでいて「どんな動物が見れるんだろう!」と言いながらスキップをしていた。両親は手を繋ぎながら、母が「どんな動物がみられるのか楽しみね。あ・な・た」と言い、父は「そうだねハニー」と言っていた。そんな父を冷たい目で見ながら頭の後ろで手を組んで歩いていると、「あの二人ラブラブだね」と由利が隣でそう言ったので、顔色を変えずに「ああ」と答えた。そんな姿を見て由利は「動物園が楽しみじゃないの?」と聞くと「いや、普通なら楽しみなんだけど、親父の僕に言い忘れる癖のせいで、本当は今日友達と遊ぶ予定が入っていたんだ。最初はここに来る事を拒否していたんだけど、雪野が泣きそうになるからしぶしぶ来たんだ」と言った。すると「しぶしぶにしても、せっかく来たんだから楽しもー♪」と僕の手を引っ張り、走りだした。
その後みんなで動物や海洋生物を見て歩き、夜行性の動物エリアに着いた。このエリアは中が洞窟に似た構造になっていて、暗い洞窟の中に夜行性の動物たちのゲージがあり、動いている姿を見られると言うものだった。
そんなこんなで洞窟を出ると由利を除いた三人がいない事に気づいた。「由利、雪野たちは?」と聞くと「え、さっきまでいたけど」と驚いた声で答えた。僕は頭をフル回転させ「まず一回、中に戻ってみよう」と由利の手をとって中に戻った。由利は「わ、分かった」と言っていた。その声は迷子以外に違う感情が入ってる気がした。
洞窟の中に戻り三人の捜索をしていると、「きゃっ」と由利の声が聞こえた。探すのに夢中で人にぶつかったようだ。僕は咄嗟に手を前に出し、由利を受け止めた。「大丈夫か?」と声をかけると、由利は赤い顔をして「大丈夫です」と答えた。
(由利)
私達が夜行性エリアを出て私が「すごかったな~」と思っていると、急にゆーくんが焦った声で「由利、雪野たちは?」と聞いてきた。私は「え、さっきまで一緒にいたけど」と答えながら家族の三人がいない事に気づいた。
私は軽いパニックを起こし、頭が真っ白で何も考えられないでいた。すると急に手を掴まれた。その掴んだ相手はゆーくんだった。ゆーくんは「まず一回、中に戻ってみよう」と言いながら私の手を引いて洞窟の中へ戻った。ゆーくんも家族がいなくなって焦っているはずなのに臨機応変に対応している。そんなゆーくんの姿を見て私は頼もしく、そしてかっこよく思えた。その後、洞窟の中を探していると人とぶつかってしまった。原因はしっかり前を見ていなかったからだ。ぶつかって倒れてしまいそうな時も、ゆーくんが受け止めてくれた。その時、私は「キュン」としてしまった。
洞窟内を何度探しても三人が見つからない。「これからどこを探す?」と話し合っていると、「迷子のお知らせです。桜野市からお越しの山西悠一さんと山西由利さん。家族の方が迷子センターでお待ちです」とアナウンスが流れた。僕は「こっちが迷子扱いかよ」と心の中で思いながら、急ぎ足で迷子センターへ向かった。
迷子センターへ着くと、「お兄ちゃん~」と泣きながら雪野が僕に抱き付いて来た。僕は雪野を優しく抱っこしてあげ、両親に「どこに行ってたの?」と聞くと、「夜行性ゾーンを見ていたらあなた達が急にいなくなるから、一旦入口に戻ったのよ」とお義母さんが言った。僕は雪野をなだめながら「入れ違いか」と納得した。由利は、僕の後ろで泣き止んだ雪野と楽しそうに話していた。
その後、次は迷子にならないようにと雪野をおんぶするように頼まれたので、仕方なくおんぶして、家族みんなで残っていたエリアを回り終わった。
そして車で家に帰り着くと、父はテレビ、母は夜ご飯の準備、雪野と由利は部屋で遊んでいて僕は部屋のパソコンで小説を書いていた。このパソコンは家族全員兼用のパソコンなのだが、全員スマホをよく使うので実質僕専用となっている。
すると、突然お義母さんが「あ、夜ご飯買うの忘れてた」と言った。それを聞いた父が「じゃあ買いに行くか」と言うと、「私もお手伝いする~」と雪野も付いて行くつもりらしい。すると父が「悠一と由利ちゃんはどうする?」と聞いてきた。僕は「パス。小説書いていたいし」と答えた。由利も「私もちょっと疲れが…」と言った。
そうして家で由利と二人きりになった。僕は少しドキドキしていた。
(由利)
家族三人が買い物へ行き、ゆーくんと二人きりになった。しかも同じ部屋にいる。私は「ど~しよう」と思いながら色々考え、最後の最後に覚悟を決めた。
僕が小説を書いていると、由利が「ゆーくんちょっといい?」と真剣な顔で話かけてきた。僕はパソコンに向いたまま「何?」と答えると、「真剣な話だからこっち向いて」と言った。いつもと違い、雰囲気がピりついていたので恐る恐る後ろを見ると、少し頬を赤らめて真剣な顔で由利が立っていた。「な、なに?」と聞くと、「私はゆーくんの事が大好きです。私と付き合ってください」。僕はすごく驚いた。でもその真剣さに嘘はないと思った。「でも僕ら家族になったわけで…」と話を続けようとすると、「そんな事関係ないよ。だって大好きなんだもん」と大声で遮った。「関係ないか~」と由利の真剣さに僕も覚悟を決めた。「僕も初めて会った時から気になっていたんだ。自分から言えなかったのは情けないけど、僕でいいなら付き合って欲しい」と答えると、「もちろんゆーくんがいいの!」と泣きながら抱き付いてきた。
しばらくするとみんなが帰って来たので、僕達が付き合い始める事を報告すると、みんな驚いていたが、その後すごく祝福してくれたのでうれしかった。
そして母は豪華な夜ご飯を作ってくれた。みんなでその豪華なご飯を食べている時、ふと由利の方を見ると、由利は僕が見ていることに気付いて笑顔を返してくれた。僕はその笑顔を一生守ると決めた。
あなたは、複線何個見つけられましたか?
これからも恋愛小説中心に配信して行くのでぜひ読んで下さい。