46.戦闘シーンなんてなかった
例えばアレよ。
砂漠って暑いんでしょ? なら砂漠のモンスターって氷属性効くっぽくない?
No! 砂漠の夜は氷点下でした。
ってなわけで、デザートストームレインボーデスワームについて、ご本人を前におさらいタイム。
まず、デスワームさんのサイズ感なんだが300メートル級です。マジで。
隔離された砂漠地帯に引きこもってるんで、すくすく育った模様。
たぶんアレだわ。砂漠が広がってるけど、デスワーム師匠のせいってやつ。
こいつ土地のマナを喰らってデカくなったんだわ。
聖王国も魔帝国も、どっちの冒険者もさぁ……倒すメリットないからって放置しすぎでしょうが。
そりゃねわかるよ。村や町を襲ってくるなら討伐隊も結成されるさ。
砂漠をじわじわ広げるだけで、お外の世界にご迷惑を掛けないスタイルだったんで、生き残り続けて数百年だか、千年オーバー。
百メートルほどの体躯が今や三倍。砂の海のど真ん中でとぐろをまいて王様気分。
はい、じゃあね良い子のみんなにデスワームの見た目のこともお話しよう。
ムカデっす。
以上。え? ちょっとざっくりしすぎですか。ごめん。
全長三百メートルほどの甲冑オオムカデ。城とかぐるぐる巻きにしてグシャってできちゃうタイプ。
それが砂漠のど真ん中で巻きぐそよろしく王様気分。(本日二度目)
外殻が特徴的で、虹色の光彩を放っていた。
で、文献で調べたところ(サンキューロリ書庫)――
見る角度で色が変わる外殻は超硬質。鋼の剣(業物クラス)で傷一つつかないカッチカチとのことだ。
私は今、砂漠にいまうす。
月夜です。寒いです。
侵入者に気づいたデスワームが月光を浴びて、甲殻を玉虫色にしながらこちらに突っ込んでくる真っ最中。
――フッ……バカめ。
ここが町中でさぁ……。
人の手で作られた建造物がいっぱいあったりしたら、私はもう、うかつに極大破壊魔法なんて撃てないよ。
だって家って作るの超大変じゃん。
人の営みを易々と破壊なんて、鬼の所業できないじゃん。
け・ど・ね♥
砂漠は地平線までどこまでいってもクソ砂の海。
いくらブッパしても誰にも迷惑かからないし、家だの町だの壊さずに済むわけ。
巨大ムカデが口(なんか牙っぽいやつ?)を左右に開いて、ゴマ粒みたいな私をかみ砕こうと迫った。
謳え。祈れ。放て。
「暗黒の深淵より湧き出でし魔力、我が眷属となりし闇の力よ。我が声に耳を傾け、我が手に導かれよ。終焉の極致へと至るべく、宇宙の法則を超越し、全てを破壊せんとする力を呼び覚ませ。星辰の輝きを奪い、大地を揺るがし、生命の根源を絶つ。深く深く深く! 深淵より湧き出でし力を解き放ち、絶対零度に凍えし嵐が吹き荒れ、万象流転の時来る。魂を分断し、意識を潰し、存在を否定せんとする究極の力、これぞ『極大破壊魔法』の境地なり!」
青い炎の柱が三百メートルの巨体を半分に分断した。
戦闘シーンなんてスキップである。
久々にガチ魔法を放ってしまったな。
平和万歳。
ちぎれた胴体にデザートストームレインボーデスワームは、自身に何が起こったのかもわからぬまま絶命した。
はい、じゃあ染料の素材になる美しい虹色甲殻、いただきますね。
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後日、砂漠地帯の生命力を奪い尽くしていた根源が突如として死滅し、砂の海に新たな緑が芽吹いたとかいうんだけど、当方の知ったことではないのであった。




