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43.どどどっと羊


 はぁ~今日もクッソ良い天気。

 ログハウス作りは順調に進んだ。壁が建ち屋根部分の三角形も出来て、上部に板を張る。


 木材剥き出しの屋根は塗装していても雨には弱いし強度が心配。

 ってなわけで、石切場へ跳ぶ。

 適当に極大破壊魔法で岩を切り抜いて持ち帰った。


 小さなタイル状に加工し敷き詰める。長方形の鱗って感じだ。天然石のスレート屋根がだんだんと形になってきた。


 固定法なども資料本通り。なかなかいい感じだ。


 サキュルが平べったい石を一枚手にしてあくびする。


「ふあぁ~。こんなんで大丈夫なのメイヤ?」

「知らん。が、本に書いてあったからな」

「なんかさぁ隙間できてない? 雨漏りしちゃいそう」

「わざとそうしてるんだ。隙間を埋めると雨がどっかしらに溜まるらしい。で、換気できんから木が朽ちていく。そうならんよう、余裕を持たせるんだと」

「へ~。必要な隙間ってあるんだねぇ」


 資材置き場の屋根は木の板なんで、そのうち改良するかな。



 無事、スレートの屋根が完成した。


 次は床である。床板を張るための根太を等間隔に設置してある。そのまま板を張ってもいいんだが、断熱材となる羊毛を敷くと良いらしい。


 我々は中央平原でも有数の草原地帯へとやってきた。

 背負子しょいこに蔓縄で編んだかごをセット。


 私とサキュルの手にはバリカン。シャンシャンは小型の八つ裂く光輪。


 草原には白いもこもこを着込んだメリノ羊の群れがいる。


「……そろそろ刈るか」


 長女ズが頷き合うと羊の群れに飛び込んでいった。

 逃げ惑うかと思いきや――


「メルメルメルメ~~~~~~エエエエエエ!!」


 濁った声で羊たちは整列する。


 そう――


 連中は春から夏に向けて、むしろ刈られたいのだ。


 サキュルは悪戦苦闘しながらバリカンのグリップを何度も握り込む。


「うひいいい! やだ! ちょ! 舐めないで! あ~んもー! 握力ついちゃうぅ!」


 こりゃ、一頭刈るだけで一日がかりかもな。


 一方、シャンシャンはといえば――


「はい次の子おいで~! ん~良い子ねぇ大人しくしてなさいよ~!」


 羊毛を掴んでぐいっとしたらツルンと剥ける。とは言い過ぎだが、両手にミニ光輪を出して羊を撫でるだけで、もさもさとウールが採れていった。


 汗だくなサキュルは塩分を欲した羊たちに、隙あらば背中やら尻やら股の下やら腋やらを舐められている。


「やん♥ はあぁん! らめぇ」

「おい貴様遊んでないで手を動かせ」


 言いながら私も地道に一匹ずつ。こつこつと刈っていった。というかシャンシャンのペースが爆速すぎる。


 彼女が刈った毛を籠に集めて転移魔法でキャンプに持ち帰り。

 籠がいくつあっても足りなさそうだ。


 刈るよりもウールを洗って干す方が時間掛かりそうだな。こりゃ。



 大量の羊毛は露天風呂で湯洗いした。洗剤も投入して泡まみれである。

 しっかりすすいだ後は、風に飛ばされないよう作った囲いの中へ。


 すのこを敷いてある。この上で干していくという寸法だ。


 乾く頃には莫大な量の羊毛になっていた。床の断熱材に敷いても、籠に十個分は余る。


「さて……どうしたもんかな」


 床板を貼り終わり、あとは木の窓とドアを取り付けるところまでこぎ着けたんだが――


 困った時のロリ頼み。


 最近、建築ラッシュで顔を出せていなかったし、書庫のあるじに相談してみますかね。



 今日も静かな湖底に、ページをめくる音が響く。

 私が姿を現すと、安楽椅子がぎいっと揺れた。


「ふむ。君か。何か暇つぶしをもってきてくれたのかね? 退屈なら売るほど余っている」

「羊毛が大量に余ったんだが」

「本で調べるでもなく、お悩み相談か。君……ところで車輪は作れるようになったかね?」

「あ~う~ん。ちょっと工房が必要だわそれ」

「なるほどな。荷車に水車や糸車といったものが作れるようになると、君らのキャンプもようやく文明らしくなるのだが残念だ」


 幼女は淡々と言いながら、押し花で作ったしおりを本に挟んだ。ブラを返してもらったお礼(?)に、淫魔が作ったものだ。


 気に入っているのか、ちゃんと使うなんてコアも殊勝なことで。


 幼女は棚番号をコールした。中心の彼女は動かないが、書棚がレールの上を走って組み代わり目の前にやってくる。


「君、二段目左端だ。その本を見たまえ」

「へいへい」


 アヒルの代わりにあごで使われた。

 本のタイトルは「誰でもできる糸つむぎ」と、これまたシンプルだった。

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