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114.竜VS竜(?) ファイッ!

 魔力灯のスポットライトがバトルフィールドを照らす。

 三百六十度客席は満員で立ち見も出る始末だ。


 客席より一段高い二階席の最前列は、仕切られた天覧席になっていた。


 席の中でも高いところにある玉座には魔皇帝。足を組み肘掛けに腕を乗せて頬杖をつく。


 後ろには四天王の残りが並んだ。魔狼将軍に魔翼将軍に魔知将軍っと。


 一段下がったところに弟王の椅子がある。私が軽く手を振ると会場がブーイングで涌いた。


 うっせ! 貴様たちにじゃないんだから! 勘違いしないでよね!


 で、遠目に表情まで見えないけど若君が小さく手を振っているのはわかった。


 さて――


 今回は純粋な力比べということで、シンプルなステージだとか。

 闘技台は石造りの高さ一メートルほどのブロックが並ぶ。


 縦横ともに三十メートルほどの正方形のフィールドだ。


 石材を軽く小突く。案外柔らかめかもしれない。


 うーん、クッションとまでは言えないが、脆いな。ちょっと建物の基部に使うには強度不足が心配される。


 って、あれ? なんで建材だなんて思ったんだろ。


 まあいいか。


 軽く跳んで台上に立つ。中心に向かって歩くと、待っていた審判役の爬虫類系が割れた舌をチロチロさせた。


「先に言っておくがジャッジだからって止めに入ってもらえるとか思うなよ。ルールはどちらかが敗北を認めるか死ぬまで。今回は場外負けも無しだぜ」

『なるほど、シンプルでいい』


 会場も審判も客もいい感じに暖まってんな。頭とか頭とか頭とか。


 場内のブーイングが歓声に変わった。


 対岸から巨体が姿を現す。

 山が迫ってくるようだ。


 客席が「ラードン! ラードン! ラードン! ラードン!」と、現チャンピオンを讃えるコールで一色に染まる。


 目の前にそびえ立つ三メートル超えのトカゲ男。

 闘技者の装いなのか、上半身は裸である。鱗の下に筋肉の隆起がくっきりである。


 魔竜将軍は上から私を押しつぶすように見下ろした。


「臆せず来たことだけは褒めてやろう。武器はどうした? 土下座すれば一発ぶん殴るだけで勘弁してやるぜ? それとも……入る墓穴はもう掘ってあるか?」

『ごたくはいい。さっさと始めようか』


 審判が武闘台から脱兎の如く逃げ去った。


 ラードンが両腕を振り上げる。まるで指揮者だな。


 会場が水を打ったように静まりかえった。


「では……処刑開始だああああああああああ!」


 試合開始の合図を出すのって審判じゃないのかよ。


 不意打ち同然で、巨漢は両腕を組んでハンマーよろしく私の頭部に振り落とした。


 身をかわし、鉄球みたいなトカゲ男の拳を横からぐいっと押す。


 真っ直ぐ動くモノってのは、正面からぶつかり合うとその力をモロに受ける。で、真横か力を加えると――


「――ッ!?」


 オッサンは体勢を崩して石床に拳を叩きつけた。


 衝撃が足下に走る。


 床石が砕けて砂利とれきになり飛び散った。


 ゆっくりと顔をあげてラードンが口をガバッと開く。


「やるじゃねえか白いの。だいたいどいつも今の一撃でミンチなんだけどなぁ」

『あ、そう』

「今度はそっちの番だ。打ってこい」


 仁王立ちして両腕で胸をドラミングするトカゲ野郎。


 そういえば――


 私ってどんな風に戦っていたっけ。


 全身の魔法力を高めることでパワーもスピードも上がる感覚はあるんだけど。


 まあ、殴ってみるか。


 指を手のひら側に握り込み、高速拳打でラードンの鳩尾を狙う。


 が――


「なんだその程度か?」


 私の打撃は巨漢の見た目通りな腹筋に阻まれた。一瞬、こちらの動きが止まった瞬間――


「弱っちくって泣けてくるなぁ! どうしたそんなもんか!」


 筋肉パンパンの腕を乱雑に振り回し私はなぎ倒された。首がくの字に曲がった。衝撃で宙を舞う。落下。床石の上を身体が跳ねて転がった。


 一撃でステージの端まで吹っ飛ばされる。


 なるほど。馬鹿力め。生身だったらやばかったかもしれん。


 会場は大盛り上がりだ。


 死ねだの殺せだの血の気の多いこって。


 しかしまぁ、どこで記憶を無くしたかわからんが、デカブツってのはタフなもんだし。


 思い出しついでに、こいつで色々と試してみるとしよう。

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