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ポーションの行方


病院の二階の自室で寝ていると、一階から何か物音がして目が覚めてしまった。

こんなことはここに住み始めてから初めての事だったため、泥棒でも入って来たのかと警戒した。しかし、玄関はカギが上と下の二つについているタイプなためガラスでも割らない限りここには入れないだろう。


音を聞く限りはガラスが割れるような大きな音はなかった。

唯一入れるとしたらカギを渡しているクレアかクレアの家に住んでいるラフトルの二人だけだろう。


 「気のせいか…?」


物音を聞いてから部屋を出て、足音を立てないように息を殺して耳を澄ましてみる。

 

 「はぁ…はぁ…。せん…せい…」


微かな声が聞こえ、それは俺を呼んでいるように聞こえた。

声の感じからクレアっぽい声の気がして、足音を立てないようにゆっくり階段を下りていく。


階段を下りていくと、その声の正体を認める。電気がついていないためその姿はぼんやりとしたシルエットのみが目に映った。


 「はぁ…はぁ…せんせぇ」


 「クレアか?」


階段を下りたところの壁の電気をつけ、姿を確認するとやはりクレアだったみたいだ。電気がつきクレアはやや驚いた表情をしていたが俺の姿を見るとゆっくりと立ち上がりフラフラとおぼつかない様子で近づいてきた。


 「あ、先生…すみま…せん。こんな…時間に…。ちょっと我慢…できそうに…なくて、ごめんなさい」


 「おい、大丈夫か? 熱でもあるんじゃなっ!」


心配して声をかけようとしたところでクレアは急に抱きついてきた。俺は寝起きな事もありやや状況がつかめないためすぐに心眼をオンにした


 「ごめんなさい…もう無理です」(おかし…い。あのポーションを…飲んでから…なんか切なくて…先生に…会いに来ちゃった)


 「っ! 落ちつけ、クレア!」


やはり昨日確認した通りに、一本のポーションの行方はクレアだったようだ。

クレアだけが飲んだのか?ラフトルは…いや、今はいい。俺はクレアを抱きしめ見つからないようにアイテムボックスからポーションを取り出した。


 「せんせい…お願いします」(もう、ダメ…先生に…)


 「とりあえず、これを飲め」


取り出したポーションを半ば無理やりクレアに飲ませ、そのまましばらく落ち着かせるように抱きしめた体制を取っていた。数分が経つと先ほどの興奮したような呼吸ではなくすーすーと寝息のような声が聞こえ始めた。


 「はぁー…寝てくれたか…。全くこんな時間になんてことをしてるんだよ」


正直言って少し危うかった。いつもの元気な少女の姿ではなく明らかに発情した妖艶な雰囲気に飲まれそうだった。

そんなこともあり俺は完全に目が覚めてしまった。


 「もう、これは寝れないな」


時計を見ると、だいたい四時ごろを指していた。クレアはもうこのまま返すこともできないため、病院のベッドに寝かせ毛布を掛けておいた。

病院を開けるまでだいたい五時間ほど、何をしようか。


最近はお客も増えてきたため、ポーションの生成もできていない。

とりあえずステータスでも確認しておこう。そしてステータスを表示させた。

心温(しのん) (りょう)20歳

スキル 「心眼」4「ポーション生成」

生成熟練度 8

  ・

  ・

  ・

生成可能ポーション

「精神安定剤」「睡眠剤」「抗うつ剤」「精力剤」「媚薬」「頭痛薬」


「心眼」がまた一上がっていた。確認してみよう。

「心眼」レベル4

対象の強い感情に反応し、その声を聴くことができる。

対象が自分に対して否定的な感情を持っていると聴くことはできない。

対象が自分に対して好意的な感情を持っている時に任意に聴けるようになる。☑ON/OFF

心眼の発動を任意に切り替えられるようになる。

相手の強い感情を色として見ることができる。 詳細


ん? 感情が色で見ることができるのか?

詳細を確認すると、どうやらラフトルの能力に似た物っぽい。

これはまだ信用されていなくても、まずは色を見てどんな感情を持っているのかを確認できるみたいだ。否定的な感情を持っている時には便利かもしれないな。


使いどころは後で考えるとして、とりあえずはクレアの事があったため、精力剤と媚薬の効果を弱くして、量も少なくしておこう。


それから数時間が経過して結局、眠ることはできずに病院を開ける時間になった。いつもよりやや早い時間にラフトルが焦った様子で中に入って来た。


 「せ、先生! クレアさんが!」


 「あぁ、そこで寝てるよ」


 「え?」


ラフトルは怪訝そうな表情でベッドに目を向けた。寝ているクレアの姿を見ると安堵したと同時になぜ?という顔をこちらに向けてきた。


 「ラフトルは知らないのか?」


 「何をですか?」


ポーションの件は完全にクレアだけの単独行動だったのか。てっきり二人でこっそり持って帰ったのかと思ったが。


 「実は昨日、二人が帰った後にいろいろ整理をしていたんだけど、ポーションが一本減っていたんだ」


 「え! 私は何もしてないですよ~」


ラフトルは元冒険者をやっていたこともあり、ドジっ子ではあるが肝が据わっている時がある。しかし、俺の話を聞いた瞬間、目が泳いだのを見逃さなかった。すぐに心眼をオンにしさらに聞くことにした。


 「そうか。そういえば昨日の診察の時、二人ともこっそり話しを聞いてなかったか?ドアの隙間から見えていたような気がしたんだけど」


 「いえ! そんな事はしてませんよ。ちゃんと閉まってなかったんじゃないですか?」(やば!しっかり見られてたんだ。ばれてないと思ったけど。っていうかそれならクレアさんはあのポーションを飲んで先生を夜這いしたって事!?)


 「ドアを最後に閉めたのはラフトルじゃなかったっけ」


 「そうだったかもしれません!まぁ、些細な事ですよ! さぁ、仕事の準備をしましょう!」(もしかして私、疑われてる?いや、確かにそうなる可能性は話したけど本当に実行するとは思わなかったし…とりあえずここを何とか収めないと)


もう、十分だと思い心眼を解除した。そそのかしたのはラフトルだったか。


 「ラフトル。別に怒るつもりはないから素直に話してくれ。多分クレアも起きたら事情を話すと思うし」


 「うっ…。はい…」


観念したラフトルは素直に白状した。

と言っても簡単な話、昨日の男性のカルテを読み処方したポーションの詳細から、ラフトルがクレアに「これを飲んだらかくかくしかじか」という情報を伝えクレアが本気にしてというのが事の顛末だ。


 「そうか、分かった」


 「それより~、つまり先生。やったってことですか~?」


 「いや、やってないぞ」


 「えー! なんでですか!」


 「いいから、準備を始めよう」


どうだったのか気になる様子のラフトルだったが、俺が答えないと残念そうに準備に取り掛かった。


――――


クレアが寝ていたため、午前の受付全般はラフトルが担当した。診察が終わりお昼に差し掛かるという頃、クレアがゆっくりと起き上がり周りを見渡して少し固まっていた。


 「おはよう、クレア。起きたか」


 「あ、おはよう…ございます、先生」


俺の挨拶に返し、状況が呑み込めないという顔をしていたがすぐに昨日の事を思い出したのか、一瞬で顔が赤くなりガバっと毛布をかぶっていた。


 「先生!ご、ごめんなさい。昨日はその体が何か変になってしまってその!」


 「ああ、さすがに驚いたけど事情はラフトルから聞いたから気にしないでくれ」


ポーションの効果とは言え、気にしない…というのは無理があるか。

こんな時はなんて言葉をかければいいのか分からないな。


 「うぅ…。すみません…」


もう一度謝ると、クレアはズルズルとベッドから降りて洗面所に向かっていった。今回は俺にも落ち度はあったか。精力剤に関しては特に説明はせずに勝手に置いていたため俺の責任と言ってもいいか。今度からはちゃんと説明しておこう。


昼食の時間になり、昼食を食べにユリアさんの店に向かうことにした。

ユリアさんも朝、クレアがいないことに驚いていたがすぐに病院に行ったかもしれないと予想をしてそこまで気にしていなかったとラフトルから聞いた。


 「やっぱり病院に行ってたんだね」


 「心配かけました…」

 

 「いいのよ。そうだろうと思ってたから。ラフトルさんもありがとうね、心配してくれて」


 「あー、いえ、それは…」


昼食を取りながらユリアさんにクレアの無事を伝えた。するといつもの笑顔を浮かべながらも気にしていないと言いながらもやや安堵した様子だった。

ラフトルはバツが悪そうな表情をしながらお気に入りのパンを食べていた。


――――


病院に戻り、改めて置いておくポーションについて説明をすることにした。

朝方の時間に、精力剤と媚薬については効果を少し弱めに調合し直し、量も少なめのものを置くことにした。


 「で、もし寝れなくなったり不安になったら俺に一度相談をしてくれ。その時はちゃんと渡すから。後は二人も知っていると思うがこの二つはあくまでも昨日のような症状がある人のためのものだから勝手に持ち出さないようにしてくれ」


 「わかりました…」「はい…」


二人はしっかり反省をして俯きながらも頷いてくれた。

正直、昨日のようなことが今後あれば俺も流れに任せてしまうかもしれない。この世界では二十歳という設定で、アソコも若返っている。しかし中身はもう四十路だ。気を付けなければいけない。


 「先生。一つだけ聞いてもいいですか?」


 「なんだ?」


 「その…正直どう思いましたか? 気持ち悪いと思いましたか? 引きましたか…?」


これでこの話は終わりにしようと思ったタイミングで、クレアが朝の出来事について訊ねてきた。どう思った…か。普段の行動からクレアの気持ちには薄々気づいてはいるが、精神の方がまだ受け入れ切れていない。中身も二十歳くらいなら迷わず受け入れていただろうな。まだ幼い子を見ている感覚に似ているかもしれない。


 「そんな事はないぞ。男としては嬉しいものではある。しかし、まぁ、あれは良くないな」


前の世界では病院の医師が、看護師なんかに手を出している事案も結構あった。所謂、地位的な物を利用してという良くある話だ。エロゲの主人公なら迷わずやっていたかもしれないが、今後の関係を考えると簡単に受け入れるのは良くないだろう。


 「そうですよね。わかりました」


 「とか言って、先生も満更でも無さそうですよね~」


 「ラフトル、明日から休みなしにするぞ」


 「ひぇ! ごめんなさい…」


こうしていろいろあったが何とか事を収めることができた。

思春期の子供は一時の思いや考えから、衝動的な行動を起こしてしまう事もある。クレアは特別な例ではあるが、ただの興味本位からやってはいけない事まで手を出してしまう事もある。


あれはだめ、これはだめと行動を抑制しようとする逆に反抗心を煽ることになり反動が大きくなってしまう。その分別を教えることも教育者や親の役目でもある。大事なことは叱ることと褒めること、放っておくことのバランスだ。



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