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魔法学校


次の日、今日は休みであることもありクレアとラフトルと共に魔法学校に向かうことにした。魔法と聞くとやはり気分が上がってしまうのは前の世界になかったからだろうか。


 「あ!先生。こっちでーす」


既にクレアとラフトルは待ち合わせの場所に着いていた。


 「すまん、少し遅れた」


 「いえ、私たちも今来たところです」


 「それじゃ行くか」


合流をしてから少し歩き魔法学校の校門に着いた。

スターフォール魔法学校。ここは主に基本的な魔法を学べる学校で十三歳以上から入学ができる学校だ。前の世界で言うと高校と大学が合わさったような場所で部外者でも制限はあるが許可証があれば施設内のいくつかは利用可能だ。


 「へぇ、改めてみても結構でかいな」


 「生徒も結構多いですからね!」


この街に来た時は歩きながら見ただけだったがよく見てみるととても大きい学校だ。校門からすぐ横の守衛さんに許可証をもらうため声をかけた。


 「ああ、あなたが噂の先生ですか」


 「知ってるんですか?」


 「もちろんですよ。なんでも悩みを聞いてくれると話を聞いてます」


 「おー、さすが先生ですね~」


ここでも噂が広まっていることにやや驚きつつも受付を済ませる。すると守衛のおじさんは思い出したように言った。


 「そうそう、もし先生が来たら伝えるようにと言われていました。東側の三階にある理事長室に向かってもらってもいいですか?」


 「理事長室ですか」


 「はい。今もそこにいるはずですので、お願いします」


不思議に思いつつも許可証をもらい、中に入っていく。

とりあえず呼ばれているのなら行ってみる他ないか。

玄関から階段を上り、理事長室の前に着いた。そしてノックをしようとしたところで中から声がした。


 「入っていいですよ。空いてますので」


まるでここに来たことが分かっていたようなタイミングだった。驚きながらもドアを開け中に入る。


 「お待ちしていましたよ。リョウ先生」


そこには優しそうな表情を浮かべた老齢の女性がいた。そして案内され高級そうなソファに腰掛ける。


 「初めまして。よくぞお越しくださいました。私はリディア・スターフォールと申します。先生の噂はかねがね聞いております」


 「初めまして。改めてリョウと申します。えっと入口の守衛さんからここに行くように言われてきたんですけど…」


 「ええ、もし先生が来た時には一度話をしたいと思っていました。なので一応伝えておきました。話をしたいとは思いますが、とりあえず学内を見てもらえたらと思います。少々お待ちくださいね」


リディアさんは机に置かれた電話のような物でどこかに連絡をし始めた。

それから近況についていろいろ話をしながら待っていると扉をノックする音が聞こえた。

リディアさんが許可を出し、二人の生徒が入って来た。


 「お、お久しぶりです。先生!」


 「は、初めまして~」


入って来た生徒は以前に病院に相談に来たアンリ君ともう一人は可愛い少女だった。


 「すみません。実は先生が来た時のために学校内を案内してくれる子を探していたのですが二人が積極的に立候補してくれまして。イウウェニス君はどうやら知っているみたいですね」


 「以前はお世話になりました!報告が遅くなりましたが、おかげさまでその…付き合うことができました…」


 「私はラーテ・コクルミトです。よろしくお願いします」


二人はやや照れながらも報告をしてくれた。なるほど。この子がラーテという子か。クラスに一人はいる可愛い生徒って感じがする。


 「こちらこそよろしく。良かったなアンリ君。報告がなかったから気になっていたんだ」


 「うちの生徒の悩みを解決してくれた先生には感謝を申し上げます。ありがとうございます」


 「いえ、これはアンリ君たちの努力の成果ですよ」


二人が付き合ったことを聞き、リコさんの事が少し気になったが今はそれは言わないほうがいいだろう。心眼使っとけばよかったか。


 「そうですか。それでも彼はリョウ先生にとても感謝をしていました。私では何もできなかったでしょう」


少し大袈裟じゃないかと思ったが、どうやら今のこの学校には悩みなんかを相談できる環境にないため理事長も困っていたそうだ。

前の世界でも先生たちは生徒の悩みを軽視している部分があった。この世界では魔法があるため教師たちもそれに頼ることが多く、精神的な悩みに関しては重く考えていないみたいだ。


その結果、何かについて考え込んでいる生徒はよく見てみると分かりやすいらしく、理事長含めその対処方法が分からないため頭を悩ませているそうだ。そんな時にアンリ君の話から俺の噂も聞いたみたいだ。


 「生徒たちは多感な時期な事もあり、私もどうしようかと考えあぐねていました」


 「確かにそれは悩みますね」


 「とりあえずは学内を回ってもらい、最後にもう一度こちらに来てもらってもいいですか?少し相談があります」


 「わかりました」


それから二人に案内され、学内を見学していった。実際に見て回ると興味深い物ばかりだった。映画で見た限りだがハ○ー・ポッターの学校もこんな感じだっただろうか。


気になった事は話を聞いた通りに浮かない表情をしている生徒が結構いたことだ。元気がない…というか無理をしているような。一瞬だけ心眼を使ってみたがみんな何かを抱えているようだった。それ自体は不思議な事ではないが本当に些細な事を重く考えている生徒も何人かいた。


 「なんか生徒の数は多いけど、みんな表情が暗くないですか?」


 「そうですか? いつもこんな感じですよ」


クレアは病院で働いてから悩みを持つ人の表情なんかを実際に見たり、俺に質問したりしていたことで鍛えられているのか生徒たちの表情から何かを察しているようだった。ラフトルやアンリ君、ラーテさんはそんなものだといった様子で気にしてはいなかった。


それから校内の見学を続け、次は図書館に来た。


 「うわ~、すごいですね~」


 「この図書館はこの学校内でも人気の場所です。魔術に関しての本も多くて外部から来る人も多いですよ」


俺たちがその大きさに驚いているとアンリ君たちは解説をしてくれた。

図書館は驚くほど大きく、学生の内にすべてを読むことはできない量の本がある。全体的に綺麗な内装をしていて、海外の美術館を巡っているような感覚だった。ここは許可証があれば入れるため、時間があるときに医療についての本を探してみよう。


 「学内はこんな所ですね。何か気になるところはありますか?」


 「そうだな…」


一通り、二時間ほど学内を見て回ったが保健室や医務室みたいなところはなかった。回復魔法があるため必要ないという事か。


 「いや、十分だよ。ありがとう。興味深い見学ができて有意義な時間だった」


 「私も初めて中を見ましたがすごい所ですね」


 「それは良かったです。それでは理事長室に戻られますか?」


実際に学校に通えたら楽しいかもしれないという感想を抱きつつ、理事長室に戻ることにした。二人はこれから講義があるためここで別れることになった。


――――


理事長室に戻り、校内の施設について感想を話し終えるとリディアさんは一つ咳払いをして本題に入り始めた。


 「楽しんでもらえてよかったです。さて、本題に入りたいのですが単刀直入に申します。先生。ここで働くつもりはありませんか?」


いきなりの申し出に一瞬、息をのんだ。


 「えっと、どういうことですか?」


 「すみません。話がいきなりすぎましたね。働くと言っても週に数回こちらでも病院でしているように生徒たちの話を聞いてもらいたいのです」


詳しい話を聞いてみると、アンリ君たちみたいな悩みはあっても話せる環境がないためとりあえずで担任の教師に話をするが、その教師たちもどうすればいいか分からず上に上に行き、理事長に相談が来ることが多いそうだ。


その理事長も解決策が分からず、今回俺の噂を聞き藁にも縋る思いだったみたいだ。


 「教師として雇うことになるので報酬もお支払いします。もちろん本業は病院の方でしょうからそちらを優先してもらって構いません」


確かに子供たちのメンタルケアも大事だと思う、見学した限りは思ったより悩みを抱えている生徒は多く見えた。それに教師たちも困っているという話は聞いたばかりだ。


 「すぐに返事を求めるつもりはありません。少し考えてもらってから改めてお聞かせ願えればと思います」


 「…そうですね。少し考えてみます」


それから一週間ほど時間をもらい、改めて返事をすることにし学校を後にした。


――――


病院に戻り三人で話し合いを始めた。


 「二人ともどう思う?」


 「私は受けていいと思いますよ。私がそうだったように悩みがある生徒がいるなら助けてあげたですし」


 「私もそう思います。アンリ君…はまだ可愛い悩みでしたが深い悩みがある子がいるなら助けてあげるべきではないですか?」


クレアもラフトルも前向きな意見を述べてくれて、俺も受けようかと考え始めていた。俺の仕事がそういうものだしな。しかし…。


 「何か引っ掛かることがありますか?」


 「いや、単純に病院を始めてそんなに経っていないことと学校に赴くとしてこっちをどうするかという問題がある」


 「確かにそうですね…」


前の世界では心療内科の先生の他に、学校のカウンセリングを専門にしている人もいた。もし、開業してから数年たっていてクレアやラフトルも診察ができるなら迷わず決めていただろう。


しばらく考えを巡らせていたが、クレアがとりあえずという案を出してきた。


 「理事長に協力してもらって、生徒からの要請があったら学校に行くというのはどうでしょうか?」


 「…なるほど。それは悪くないかもな」


それなら、定期的な診察日として学校内で設定してもらい赴くこともできるか。最悪、二週間に一回とかでも大丈夫だろうか。


 「その方向でとりあえずリディアさんに相談してみるしかないか」


リディアさんに改めて相談と報告をすることに決め今日は休むことにした。


―――


次の日、起きてからすぐに魔法学校に向かった。

そんなに長く話をする予定はないため二人にはとりあえず病院にいてもらう事にした。時間的には大丈夫だろうという判断だ。


昨日と同様で校門の守衛さんに許可証をもらい、そのまま理事長室に向かう。

ノックをするとすぐにリディアさんの声が返ってきて中に入る。


 「おはようございます。少し驚きました。こんなに早く来るとは思いませんでした」


 「すみません。昨日の話で少し相談がありまして」


昨夜話し合った事を改めて説明した。


 「そうですか。なるほど…。それはもちろん先生方の事情を優先してもらって構いません。こちらからお願いしていますので」


 「こちらからお願いとして学校内で診察日のようなものを設定してもらい、その日に学校に来るというのはどうでしょう。生徒たちに宣伝もあると思いますのでその間にこちらも準備を整えておきたいと思います」


 「わかりました。他の先生方にも相談をして体制を整えておきます。準備が出来ましたら病院の方に連絡をします」


 「よろしくお願いします」


病院の事などやや気になることはいくつかあるが、それは追々考えることにしよう。

話し合いを終え、連絡が来るまでは細かいことをクレアやラフトルと確認することにして病院に戻ることにした。



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