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転生


俺の名前は心温(しのん) (りょう)37歳で心療内科で働いている医師だ。平日は病院に足を運び、患者さんの診断、休日は場合によっては研修や研究に参加しなければいけないため思うより大変な仕事だ。


心理関連の大学、大学院まで卒業し資格を取って今に至るわけだが、やはり毎日患者さんの話を聞くことで、精神的に移ってしまうのかたまに憂鬱な気分になってしまう。


 「はぁー」


今日は休日で、例によって職員向けの研修に参加していた。最近はやや不眠気味で寝ても疲れが取れない状態が続いている。いつも考えることは患者さんの本当に悩んでいることが明確にわかればもう少し楽にできるかと思うことだ。


対話を通じても話が抽象的で何に悩んでいるか明確でない時があり、難しい所でもある。


ある日の平日、書類の整理など仕事をまとめてたため帰りが遅くなってしまった。

疲れが溜まり、フラフラとしていたのだろう。俺は道端で倒れてしまった。

最後に聞いたのは、心配して声をかけてくれた女性の声か、救急車のサイレンか。


――――


気が付くと、白い空間にいた。一体が白に染められ、先の方も見えない。


 「あれ、どこだここ」


 「こんにちは、お兄さん」


 「え、ああ、こんにちは」


目の前にとてもきれいな女性がいた。いつの間に。そしてその女性は言った。


 「残念ですが、あなたは死んでしまいました」


は? 死んだ? あー、夢かこれ。そういえばはっきりとした夢を見る明晰夢という現象がある。多分それだろう。


 「信じていませんね?」


 「まぁ、急にそういわれても信じる人はいないんじゃ?」


 「あなた、漫画とかアニメとかあまり見ないの?」


時間があるときはたれ流しでアニメを見たり、面白そうな漫画は読んだりしているが、何か関係があるのだろうか。


 「たまに見るくらいですね」


 「おかしいわね、日本人ならこういう展開になれば発狂しかねないばかりに喜ぶはずなのだけど」


そうなのだろうか。適当に流し見していたせいか、覚えていたりいなかったりだ。


 「えっと、あなたは?」


 「見てわからない? 女神よ」


わかる…か? 確かに見たこともないほど神々しく綺麗ではあるが。


 「もう! なら見てもらった方が早いわね」


俺のきょとんとした様子にやや不機嫌そうにそういって、女神さんはスクリーンのようなものを出し、そこにある映像を映した。


 「あれ、お母さん?」


その映像には誰かの葬式が執り行われている様子だった。たくさんの参列者がいて、みんな悲しそうな表情をしている。一体誰の葬式だろうか。そう思うと映像が遺影をはっきり写すように近寄った。え! 俺か?


 「これでわかった? あなたは仕事の過労から倒れてしまってそのまま死んでしまったの」


 「そうですか…」


いきなりこんな空間で目覚めたため、やや混乱していたが思い出してみると確かに俺は疲れでフラフラしていた。そうか倒れてそのまま逝ったのか。


 「ってことはここは一体?」


 「はぁ、ようやく本題に入れるわね。ここはまぁ、下界と天界の間ってとこかしらね。それであなたは生前で人の心を癒す仕事をしていたでしょう? それを違う世界で活かしてほしいの」


女神さんはやっと話を進められるとため息をこぼし、詳しい話をしてくれた。

どうやら前の世界とは別の世界に行き、生前の知識で悩んでいる人達を助けてほしいんだそうだ。その世界は魔法が発展しているそうで前の世界に比べてどちらかというと殺伐とした世界であると。


 「魔法があるなら魔法で解決できないんですか?」


 「あなたならわかるでしょう。どんなに優れている人でもその内面には誰にも打ち明けられない悩みがあることを。それは魔法で治せないものもある」


確かにそうだ。病院に来る人でも無理に周りに合わせてストレスを溜める人、周りからすごいと褒められることが多く、その通りに演じなければいけない人など。ほんとに様々だ。


肉体のケガや出血であれば時間が解決してくれる。だが心は違う。それは世界が違っても共通の認識なのか。


 「でも、そんな世界に行ってもたかが人間に何ができるんでしょうか」


 「ええ、だから特別な能力を授けるわ!」


ここぞとばかりに腰に手を当てドヤと言う顔をした。


 「なるほど…」


 「もう少しさぁ、なんかもっといい反応を期待したんだけどさぁ」


予想と違う反応をしたためか、女神さんは心底残念という表情をしていた。なんか申し訳ない。


 「それで、その能力ってのはどんなものなんですか?」


 「何か欲しい能力はある? 異世界の言語とか諸々は何とかしとくから」


能力、能力ねぇ。生前の知識を活かしつつ便利な能力か…。

思い返して考えてみた。前の世界では世界的に共通の認識や、そういうものだみたいな認識もあったため多少会話がずれても症状は分かった。しかし異世界となれば根本から変わる可能性がある。であれば。


 「うーん、そうですね。例えば相手が何に悩んでいるかすぐにわかる能力とか、魔法が使えるならその薬とかを作れたりですかね」


 「なるほど、まぁ二つでも問題ないか。それでいい?」


 「あ、いいんですか?」


割とダメもとで言ってみただけだったが、それでいいみたいだった。


 「問題ないわ。それじゃお願いね」


最後にと言って、出来ることを諸々教えてくれた。

前の世界にあった電子タブレットを神仕様に変更し、ゲームのようにいつでも目の前に表示させられること。所謂ステータスってやつだ。


それには俺の現在の能力を表示できること。その世界と前の世界を比べ薬の材料になる薬草などの情報。あとは世界の地図やどこに行けば何ができるかなどが分かりやすく解説されていたり、さらには今の見た目や年齢ではいろいろ不便であるだろうとその世界に適した体にしてくれるそうだ。


また最初は自分で作らなければいけないが、一度薬等を作ればその情報から材料さえあればすぐに生成できるらしい。

至れり尽くせりとはこういうことだろう。


 「ありがとうございます」


 「それじゃ、送るわね。頑張って」


感謝を述べると足元に魔法陣のようなものが現れ体が光に包まれる。

その一部が光の粒になり消えていった。


――――


 「うーん」


心地良い風に吹かれ、気持ちよく寝ている自分に気付き、ガバっと体を起こす。


 「あれ? あーそうか」


先ほどの出来事を思い出し、違う世界に来たことを認めた。


 「異世界って言っても、あんまり変わらないんだな」


周りを見渡すと、どうやら今は街を見渡せる丘のようなところにいることが分かる。建物の外装などを見てみると確かに日本とは全く異なるものだ。

しかし、正直なところ最初からこの世界にいたと言われても違和感はないほど特別、前の世界との違いはない。強いて言うなら違う国に旅行に来ている感覚だ。


とりあえず、今の能力を確認してみるか。ステータスを表示させようと意識すると目の前に大きな画面が表示された。女神さんすごいな!


 「おお! ほんとに出るんだな、すげー」


生前、初めてやるゲームをするようなわくわくした気持ちが湧き上がってきた。えっと、なになに。


心温(しのん) (りょう) 20歳 

スキル 「心眼」「ポーション生成」

生成熟練度 1

   ・

   ・

   ・

生成可能ポーション なし


うむ。基本的なステータスのみが表示されているな。ポーション生成は何となくわかるとして、この「心眼」ってのは心が読めるのか? 

試しに心眼の部分をタップしてみると拡大され詳細が書かれていた。


 「おっ」


「心眼」

対象の強い感情に反応し、その声を聴くことができる。

対象が自分に対して否定的な感情を持っていると聞くことはできない。


なるほど。これは生前と同じと考えていいだろう。深い悩みを持っていてもこの人なら話してもいいかなと思ってもらわなければ心は開いてくれない。


 「とりあえず何から始めるか」


少し考えながら、ステータスの画面を操作していると「女神様による、分かりやすく丁寧な案内所」という最後にハートマークがついたアイコンを見つけた。


あの女神さんのキャラがわからんな。とりあえずありがたいと思い、そのアイコンをタップした。


「まずは拠点となる病院を設立するために、商業ギルドに行き、良さそうな建物を借りましょう。あ、建物を借りるには一度商業ギルドに登録しないといけないから気を付けてね!お金とかいろいろは横のバッグに入っているから、それを使ってね!もし休みたいなら一度、宿屋で休むという選択もあります!」


音声がついてそうな書き方にやや驚きつつ、横に目をやる。そこには大きめだが、持ち歩くには便利そうなバッグが置かれていた。


 「これか?」


バッグを手に取り中身を確認した。中には麻袋のようなものが数個、これも中を見ると金や銀、そして銅のコインがたくさん入っていた。これはお金か?

他には携帯食料のようなものと、薬草採取に使えということか鞘に収められたナイフがあった。


とりあえず何もわからない状態だ。情報収集がてら一旦宿に行ってみるか。


俺はアイコンの項目にあった「通貨とお金の価値」という部分を確認して、見えている街の宿を目指して歩き出した。



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