冒険者はいない
孤児院に居候して一週間になる、毎日子供達に追い回される日々を送っている。
子供相手に威嚇も出来ない。
毛繕いする間も無い。
クワンリはと言うと魔道具改め魔術具(魔力術式を使うので魔道具では無いのだそうだ)を完成させて、今は何か違う物を作っている。
相変わらず楽しそうだ。
あまりかまってくれないが、子供達に弊壁しているので、それはそれでありがたい。
日課のパトロールを終えて食事に向かう、今日も何事もなく平和である。
相変わらずのミルク粥だ。
この世界の猫まんまはミルク粥なのだろうか?
一日二食になった、たまに何かわからない魚の干物っぽい物が入ったりするのでとても満足している。
先日世話になった野良二匹も俺の隣で美味そうに食っている。
ここの居心地が良い様で居着いてしまった。
・・・飼われるのも悪く無いな。
と野良が少し恥ずかしげに言っていた。
ミルク粥にハマった様で何よりだ。
顔を上げるとクワンリが手招きしているので、身体半分を膝の上に乗せてゴロゴロ喉を鳴らしてやると、耳の後ろや顎を撫でてくれる。目を閉じてされるがままにしていると、首に何かをつけられた。
首輪だ、屈辱的だとクワンリに抗議すると、これは人の言葉がわかる魔術具なのだと言う。
おお!
ありがたいこれで思念の通訳なしで人が何を言ってるかわかる。
・・・今回ノルの活躍の褒美だ。
魔性石の設置がなかなか難しかったのだぞ。
人に思念は送れない様にしてあるから安心して使うと良い。
それでな、
これから院長と話があるのだが、お前も同席して欲しい。
前世では人族だったのだろ?
頼りにしているぞ。
なにせ魔族領から出たら土地の魔力が薄くて調子が良くないのだ。
頭が回らん。
こうストレートに頼られたり褒められたりしたら悪い気はしない、しっかり手伝ってやろうと思った。
引率の女の人は寮母さんだった。
院長と寮母さんと年長組の子供が数人集まり、クワンリの薬草採取や使える種類、薬の作り方や魔術具の使い方の講座が始まった。
面白そうなので寝たふりをしながら聞き耳を立てる。
クワンリは教育者でもしていたのか、教え方が上手い。
ここの世界に山本五十六はいないのはわかっているけど。
五十六語録の(やってみせ言って聞かせて何ちゃら)を実践している。
魔族にも五十六的な人はいたんだと感心した。
皆楽しそうで真剣でいい感じだ。
二日続けて講義を行なって子供達は薬草採取の実践に出かけて行ったので、今日は院長にこの街の事を教えてもらう。
冒険者と言う職種は残念ながら無く、代わりに遊び人と言う制度があるらしい。
遊び人は国の予備兵力で住居を与えられ小遣い程度の給金を貰っている。給金が足りなければアルバイトをする。
職人の手元や公共工事、逃げたペットの捜索などギルド的な場所である斡旋所と言う所に行って仕事を貰うのだそうだ。
いわゆるフリーターだ。
一般の人も斡旋所で仕事を貰うことが出来るので、そこへ行けば旅の資金を稼げることがわかった。
ここでの薬草教室がひと段落したら行ってみようとクワンリと話し合った。
クワンリは、人族領は土地の魔力が少なく調子が出ないとぼやいていた。
夜になると寝る前にクワンリはキセルの様な物で薬草を詰め吸っている。
魔草と言うのだそうだ。
これを吸うと魔力不足を補えるのだと言う。
魔草を吸ったクワンリは優しくチョットハイになる。
前世のあの草の様だと思ってしまった。
子供から教わったと言って俺の尻尾の付け根をポンポン、トントンする、なんだか嫌では無いが変な気分になって来る。
ニヤヤャ〜
クルクルクル
変な声が出てしまう。
やめてほしいけどやめないで欲しい、
オーナウ
ウウウウワオ
もうダメです。
お尻が上がります。
フミフミ、ガジガジしちゃいます。
たまりません。
お腹を見せてゴロゴロしちゃいます。
どうにでもしてって感じで、虚脱感が心地よくなって。
ナーナー言っちゃいます。
・・・何腹抱えて笑ってんだよぉ
もうクワンリの意地悪!
こうして平和な夜が更けていく。
悪くない
ブックマーク、良いね、ご感想などリアクション頂けますとゴロゴロしちゃいます(笑)