第47話 白の魔法剣
その避けようがないような間合いとタイミングから俺は瞬時にそう確信するが、振り下ろした剣には何の手応えはない。
斬撃を加えたオルガの身体を確認すると、なんともなっていない。俺は思わず二度見する。
一瞬何が起こったか分からず混乱する。間髪入れずに放たれるブルースライムからの攻撃をかわす。
剣から伝わった感触は、オリガの体はまるで気体のようだった。
《完全異常回復》
幻惑魔法を疑い俺は自分に魔法発動する。
しかし何らかの状態異常が治ったという手応えはなかった。
「どうした? 自らに状態異常回復魔法をかけたりして?」
オリガは余裕の笑みを浮かべている。
もう一度。ブルースライムの攻撃をかいくぐりながら、今度はオリガの胴体を横一閃に振り抜く。
今度は剣に切り裂かれるオリガの身体にも集中する。
またしても剣はオリガの身体をするりとすり抜ける。
……やはり、オリガの身体は気体のようだ。
「……あなたほんとに同じ人間ですか?」
「同じ人間だぞ。炎が肉体とちょっと変わってるがの。恩恵のたまものじゃ」
ちょっと所じゃないだろ、なんだよ炎が肉体って。後、恩恵って何のことだ?
「それじゃあ、そろそろ理解したか? お前に敵う相手じゃないということを」
「あいにく往生際が悪いのが取り柄でね」
なんせ転生までしてきているのだ。
「そうか、ならそろそろ死ね!」
ブルースライムが俺に襲いかかってくると同時に、
炎槍
複数の炎槍が俺に放たれる。
よし!
バックグラウンドで発動していた分析が完了する。
解除
そして間髪入れずに反火魔法。
俺に迫っていた敵の炎は綺麗に消え去る。
「なっ、裏でブルースライムに分析をかけておったのか。にしても、未発表魔法をこの短時間で分析せしめるとは……」
分析に魔力消費しすぎてもうやばい。
もしかしたら転生してから短期間で魔法を習得しまくったのも分析スピードに影響してるのかもしれない。
「ええい! なら、分析できない原始の炎によってお前を焼き尽くしてくれるわ!」
原始の炎?
一体なんだそれは?
うっすらと見えていたオリガを覆う膜のようなオーラだと思っていたもの。それがメラメラと揺らめき始め、オリガ自身が燃えているのだと分かる。
完全に人間じゃない。
神級とは単なるランクではなく、現人神の事をさすのか?
「はああーーーーーッ!!」
遂にはオリガは一つの恒星のようになる。
オリガと俺の間にはそれなりの間合いがあいているが、オリガが発する熱で火傷してしまいそうだ。
そのオリガの背後に何ものかの気配をうっすらと感じる。…………なんだろう?
と疑問に思っていると、距離が離れていると思っていたオリガがいつの間にか目の前にいる。
スピードまで速くなるのか!
オリガがは連続で突き出してきた手刀を皮切りに、下段、中段、上段と蹴りを放ってくるが、俺は全てかわす。
受け止める事はできない。
受け止めれば、俺自身が燃えてしまうだろう。
オリガの攻撃の切れ目にこちらも攻撃を仕掛けるが、炎の肉体のオリガにダメージを与えられない。
埒があかない。一旦、俺はオリガと距離をとる。
痛っ!
攻防の際は夢中で気づけなかったが、かすっただけでも酷い火傷になってしまっている。
俺は自分に回復魔法をかける。
「そろそろ、諦めろ。万が一にもお前に勝ち目はない。わしは物理攻撃の完全耐性を誇っている。わしにダメージを与えられるとしたら、氷系の極地。それこそ氷帝の魔術師ぐらいじゃろうて」
確かに俺がオリガに氷系で攻撃しても、恒星のようになっている今のオリガに対しては、水鉄砲で火事を消火しようとするようなものだろう。
もう打つ手はないのか?
結局の所、転生してきても俺は俺を救えないのか?
惨めに処刑された前世。
決して後悔しないように。
転生してから本気で生きてきた。
だがそもそも神級の魔術師に挑む事が無謀だったのか?
絶対絶命に追い込まれた俺の脳裏に転生後の鍛錬の日々が走馬灯のように流れる。
剣術に魔法。自身の限界に挑むような日々。それに魔法剣も。…………魔法剣?
そういえば白魔法の習得にいっぱいいっぱいで白魔法の魔法剣は試せてなかった。
ぶっつけ本番になるが…………。
「覚悟は決まったか?」
俺がボーッとしていたように見えたのだろう。顔を上げた俺にオリガはそう声をかける。
…………来る!
またしてもオリガは俺との間合いを一瞬で詰め、連撃を加えてくる。
俺はその連撃の切れ目。一瞬のすきを狙い、白魔法の反魔法の効果を持たせた剣を右斜め上段から振り下ろす。…………どうだ?
すると何度剣撃を加えてもなんともなかったオリガの炎の肉体の回復に時間がかかる。
「な、何をした? くそっ、肉体がもどらん!」
俺と戦闘を開始してから、ずっと余裕だったオリガは始めての動揺を見せる。
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