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第45話 ポイント・オブ・ノー・リターン

「はるか昔、白の魔術師という最強の魔術師が存在しました。その魔術師は白髪白眼であったという伝説がマグレガー王族には残されています。他にも知っている王族などはあるかもしれませんが、一般の民衆の間では伝説の伝承は廃れてしまったようです。そしてマグレガー王国のある村に白髪白眼の子供が一人生まれました。そこにいるルーカス殿下です」


「なんだって?」


 俺、ルーカス殿下は俺に疑問を投げかける。自分が王族の出自ではないなんて正に青天の霹靂、驚天動地の心境だろう。


「殿下、落ち着いて聞いて下さい……。白髪白眼とは奇異な赤ん坊。その奇異な赤ん坊の噂はいつしか王宮まで知れ渡る事になりました。そして王宮は、マグレガー王はルーカス殿下を自分の息子と偽って引き取り育てる事を決めたのです」


「嘘だ! 俺が王と母の息子ではないなんで嘘だ! じゃあ、何か? 俺は自分が父と母と思っていた偽りの両親に殺されそうだという事か!!」


 悲痛なルーカスの叫びが処刑場にこだまする。


 気持ちは痛いほど分かる。俺も父と母の、特に母の裏切りを知った時には胸が張り裂けそうな思いがしたものだ。


 転生後だったからまだよかったもののルーカス、転生前の俺の心痛はいかほどだろう。


「こうしてルーカス殿下を王族へと招き入れたマグレガー王でしたが、もちろんルーカス殿下にはその事は今まで一言も伝えられた事はありません。ルーカス殿下も歳を重ね、最近、再度魔術の適性検査が行われました。殿下、覚えてらっしゃいますか?」


「家庭教師から……受けた適性検査か? だけどあれは白魔法の適性とは一言も……」


「その適性検査は白属性の適性を図るものだったのです。殿下はその検査で白魔法の適性を示されませんでした。そして王族は……殿下のご両親は……殿下を……」


「黙れっ! 黙れ、黙れっ!! 俺は認めないぞ! 父と母が俺を邪魔者として殺そうとするなど! そんな事があるわけがないだろうがあ! そんな残酷な事があ……。騙して俺をここまで育て上げたあげく、邪魔になったら亡き者にするなどそんな残酷な……違うんだ俺の両親は……父と母は違うんだあ……ゔゔゔ……」


 ルーカスは泣き崩れる。


 ルーカスは俺だ。感情では否定しているが状況証拠から俺が言っている事が正しい事である事は予想はつくはずだ。


 だがこの嘆きようは……大丈夫だろうか……。


「まあ、そんなに泣くことはないぞ。ルーカス殿下よ」


 いつの間にか神級の魔術師オリガは処刑場の上空に浮遊術を駆使して浮いていた。


「わしがしっかりとあの世に送ってやる。白髪白眼の世界の均衡を損なう可能性がある者は残らずな……」


 白髪白眼のとオリガが述べた時、その視線を俺の方へ向けていた。第7王子だけでなく、俺も生かしておくつもりがないと言っているのだろう。


「して、ウィルとやら。お主は白の魔術師か?」


「なんだって? あの青年が伝説と呼ばれる?」


「確かに見た目は白髪の白眼だけど、そんな感じは全くしないぞ」


 オリガのその言葉に民衆たちが色めき立つ。


「……はい、俺が白の魔術師です」


 俺の返答になぜかオリガは笑みを浮かべる。


「で同胞を救いに来たという訳か。わしがいる事は知っていたんであろう?」


「ええ、知っていました」


「ふっふっふ……」


 オリガの魔力が通常の魔力からマグマなような濃密なものへと変化していく。


 ここは回帰不能点ポイント・オブ・ノー・リターンだ。


 オリガのとの戦いはきっと生きるか死ぬかの戦いになるだろう。


 俺も浮遊術を使い、処刑場の上空でオリガと対峙する。オリガは燃えるような赤の瞳を俺の方へ向けている。


「面白い! いくら伝説の白の魔術師として覚醒したといえど、白魔法を覚えたてのひよっ子。遙かなる時を生き、炎帝とまで呼ばれるわしとやり合うつもりか!」


 処刑場に集まっていた民衆たちはそのオリガの迫力とその神気とも例えられる圧倒的なオーラに当てられて気絶するもの、逃げ惑うものが続出してパニックに陥っている。


【白の前に他の魔法なく、白の後にも他の魔法なし。すべては白となる】


「魔術書の白の書の冒頭に記載されている言葉です。この言葉の意味をあなたは知ってますか?」


 俺はオリガに尋ねる。


「ひよっ子がこのわしに質問するか? 大方、白の魔術師がすべての魔術師たちの頂点に立っている時代に記載された最強である事の隠喩であろう。つまらぬ質問をするのう」


 俺はため息を一つ吐いて首を振る。


 その様を確認したオリガは、


「わしを愚弄するかぁっ!!」


 爆発するように魔力を周囲に発散する。その様はまるで一つの小さな恒星の爆発のようで民衆からは次々と悲鳴が立ち上がる。


「愚弄した訳ではありませんよ。俺はきちんとあなたをリスペクトはしています。あなたは世界の魔術師の頂点に立ち、その力を駆使して世界の決定的な対立を回避してきた、言わば生きる偉人、伝説の人です。だけど無知は無知」


「生まれてたかだか十数年のひよっ子が……わしを愚弄した罪は重いぞ! その肉体、獄炎にて塵一つ残らぬように燃やし尽くしてくれるわ!」


 神級の魔術師と、伝説の白の魔術師。


 後に伝説して語り継がれるその戦いの幕が今、切って降ろされた。

【※大切なお願い】


 少しでも、


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