表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/49

第38話 おめでたい道化

「よくも俺の仲間のタイガをああまでやってくれたな」


「そ、そんな訳がねえ! 4階位の雑魚野郎が瞬歩なんて激レアスキル持ってるなんて!」


 ラフテルは俺に無茶苦茶に斬りつけてくるが、俺はそれをすべて躱す。そして――


 ゴンッ!


 柄を使って、ラフテルの顔面に打撃を加える。


「おおーう」


 ラフテルの鼻からは盛大に血が噴き出した。


「てぇんめえーーーッ!!」


 激高してまた攻撃を加えてくるが、俺はそのすべてに対して顔面にカウンターを加えていく。


「そ、そんな、4階位ごときがこんな……」


 ラフテルは顔面をボコボコにはらす。


「どうして第7王子を無実の罪で告発したんですか?」


「そ、それは……」


 するとラフテルは自らの短剣を両手で掴み、それを自分の方へと向ける。


「はっ! 駄目だあ! いやあああああっ!」


 悲鳴の後、ラフテルは自ら短剣を自身の胸深くへ刺しこんだ。


 しまった! 


 一種の強力な洗脳魔法をかけられていたのか。

 自白しそうになったら自ら自害するようにマインドコントロールされた洗脳魔法を。


 床がラフテルの血で染まる。


 だが自害するように洗脳されていたという事はさらに黒幕がいたという事だ。


 くそ、まだ先があるのか。一体誰が……。


「ウィル兄ちゃんありがとう」


 気がつくと傍らにはボコボコに顔をはらしたタイガの姿があった。考え込んでいて気づくことができなかった。


「いや、ごめんな、危険な目に会わせて。すぐに治療しよう」


 俺は治癒魔法のヒールをタイガにかける。


 倍ほどになっていたタイガの顔がみるみる元の大きさに戻り、最終的に少し顔が腫れた程度まで治癒する事ができた。


 タイガは自らの顔を驚いたように触る。


「すげえや、ウィル兄ちゃん! ほとんど痛くなくなった!」


 ほんとに無事て良かった。今回は一歩間違えば命が危なかった。


「そうだ! ラフテルの野郎は女の人と話してたよ、第7王子の告発の事。うまく揉み消せただとかなんとか」


「その女の人の名前は聞いた?」


「えっと、確か……えー……あっ、そうだ、エムリーヌ様って言っていたよ」


「……っ!!」


 俺は脳天に稲妻が振り落ちたかのような衝撃を受けて絶句する。


「……どうしたの兄ちゃん……?」


「………………いや、なんでもない。それよりこの場からさっさと離れよう。自害したといっても死体と商会の部外者が一緒にいたら絶対に殺人を疑われる」


 俺はタイガを促し、外にでる。


 外では危険かもと待たしていたセイガが待っており、無事なタイガを確認すると涙を流して喜ぶ。


 俺は二人を今日はもう帰す事にする。

 色々あって二人も疲れたろう。

 俺も疲れた。


 エムリーヌは俺の前世の母の名前だった。



 ◇



 王城を囲う水堀とそこに架かる一つの橋。橋は王城入り口の正門に続いており、王城へ出入りする人間にはここで張っていれば会う事が可能だ。


 前世では見知った顔の一人の老紳士が正門から出て橋を渡ってくる。


 俺はその老紳士の前に立ちはだかる。


「おめでたい道化ってどういう意味ですか?」


 老紳士は最初こそ俺のその言葉に怪訝な表情を浮かべるが、何故かすぐに腑に落ちたようで、


「という事は殿下はこのまま処刑されてしまうのか……」


 などと呟いている。


「聞いてますか?」


「ああ、聞いてる。ここでは聞かれたくない話しもあるだろう。ついてこい」



 ついてこいと言われて連れて来られた場所は郊外の平原だ。


「聞きたい事があるから、わざわざ俺を待ち伏せしたんだろう。抜け、俺に勝てたら教えてやる。ここから先は強者のみが立ち入れる領域だ」

 

 言っている事の意味は分からなかった。


 だが…………。


 死んで、生まれ変わって、そして本気で生きてきた。


 おめでたい道化。

 目の前の老紳士の……そう前世の俺の執事のセバスチャンが吐いたあの言葉が発奮材料の一つになったのも事実。


 俺の心の導火線に火がつく。

 お前が見捨てた怠惰で情けない男はこうして文字通り生まれ変わってきたぞ!


 俺は剣を抜いてセバスチャンに踊りかかった。




「お見事……」


 そう呟いたセバスチャンは大の字になって草原に寝転がっている。


 草木が燃えて炭くずになっている所。

 剣の斬撃で地面に大きな亀裂が入っている所。

 隕石が落ちたかようなクレーターが穿っている所。


 そこは何も知らない人が通りかかれば何事が起こったと腰を抜かすような光景が広がっている。


 勝負は俺の勝利で終わった。セバスチャンが凄腕の魔法剣士だというその経歴に嘘偽りはなかった。


「よくもここまで……」


 一言そう呟いた後にセバスチャンは起き上がる。


「第7王子を無実の罪で告発した黒幕は……第7王子の母のエムリーヌ=マグレガー、そして……この国の王、エンドルフ=マグレガーですか?」


「その通りだ」


 俺は歯を食いしばって両手を握りしめて空を見上げる。今日は雲ひとつない気持ちのいい快晴だ。


「……分からないのは、第7王子を処刑してまで排除しようとしている所です。第7王子は優秀ではないにせよ、別に排除しなければいけないほどの害もないでしょうに」


「第7王子ことルーカス=マグレガー。ルーカス殿下はこの国の田舎の村で生を受けた」


 セバスチャンの独白が始まる。

【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新頑張って欲しい!」


 と、思って頂けましたら、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価頂けると、作者の大きなモチベになります!


 またブクマもして頂けると、大変うれしいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ