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第37話 黒幕

「ここまでするか……」


 俺はパチパチと音をたてながら燃え広がる家屋を目の前にして呟く。


 ドイルの家屋は何者かの手によって放火されていた。


「消防魔術師はまだか!」


「きたきた、消防魔術師だ!」


 現れた消防魔術師の氷系魔法によって猛烈な勢いだった火事の炎は徐々に弱まっていく。


 だがもう遅い。火は既にドイルが住んでいた家屋のほとんどを消し炭に変えてしまっていた。


 おそらく証拠品として確認できるようなものはもう残っていないだろう。


 敵の打つ手は迅速でかつ、苛烈だ。

 どこか甘くみて油断してたのかもしれない。


 相手も王族を相手にしているのだ。念には念を入れているのだろう。一手を間違うだけで容易に生き死にの問題になる世界だ。


「後は暗殺者か……」


 俺はぼそりと呟く。ほとんど可能性はないだろうと心の底では思っている、その手立てについて。




「ウィルさんに依頼された暗殺者の情報ですが、今のところはそれらしい情報は集まっていません」


「そうですか、どうもありがとう」


 情報取得の依頼を行い、まだ1日しか経ってない。結果は予想通りだった。


 どうするか……。


 一つ手立てがあった。

 俺に間者が付いたのだ。


 おそらく敵勢力に俺の素性が知られて警戒されているのだろう。


 場合によっては暗殺を仕掛けてくるかもしれない。


 間者は俺にバレていないと思っているんだろうが、最近は探知魔法の自動警戒をしている俺には間者がついたことはすぐに分かった。


 飛んで火に入るなんとかだ。

 わざわざ手掛かりが向こうからやって来てくれた。


 深夜になると間者は俺につくのを一時解除する為、その時に逆に後をつけてやろうと思っている。


 ガタンッ!!


 大きな音を立てて兄弟団の扉が開き、何者かが飛び込んで来た。何事かと俺はその方向に目を向けると、飛び込んできたのはなんとセイガだった。


 セイガはその目を血走らせている。


「ウィル兄ちゃん! タイガが、タイガが!!」



 ◇



「随分頑張るなあ。このままだとお前死んじまうぞ? まあ、俺はお楽しみが増えて楽しいがな」


 両手を後ろ手に縛られて顔を原形を留めないほど倍近くにはらした少年。


「だ、誰かお前なんかに……」


「ウィルとかいう小僧の手下だろ、どうせお前?」


「ち、違う! ぐふぉッ!」


 男の拳が少年の腹部に突き刺さる。


「ああ、いいねー、その苦しそうな顔ー」


「く、くそ、やろう……」


 男は少年のその言葉に喜悦の表情を浮かべながら、その身体を震わせる。


「ああーーーっ! 殺したーーーい!! だけどダメだダメだダメだ、もっと楽しむんだ! 今壊したらそれで終わっちゃうーー!」


 人気のない倉庫内。

 扉には内部から鍵がかけられ、倉庫内には少年の血の匂いが充満していた。


 ドガャーーーーーッ!!


 その時、凄まじい音を立てて鉄製の扉が打ち破られる。


「タイガ! 無事か?」


「ウィル兄ちゃん!!」


 必死に耐えていた少年、タイガの目から涙が溢れて出る。


「お前は…………兄弟団の小僧か。まあ、いいお前もまとめてお楽しみだ」


 拷問を受けたタイガの姿を確認した俺の頭に血が昇る。


 両手を真っ赤に染めて倉庫に佇むのは、ヴェルガー商会の実務の長、ラフテルの姿だった。


「ラフテル、あなたが?」


「ん? 君とは初対面だと思うが面識があったかね。商売柄一度会った人間の顔は忘れないんだが」


 ラフテルは人格者で上にも下にも分け隔てなく接する。そういった評判は全て虚像で真の顔はサディストの殺人者だったのか。


「あなたが黒幕だったんですか? 第7王子を嵌める告発を企てた」


「なんだそれは人聞きの悪い。こちらも聞きたい。なんでお前は告発の邪魔をしようとする? 兄弟団のたかだか4階位が、何の用があって? 誰を相手にしてるのか分かってないのだろう?」


「表ではいい顔している、気持ちの悪いサディストでしょう?」


「ははは、いいな! 殺しがいがあるよ、お前!」


 両腰にかけた短剣をラフテルは抜き去る。


「兄弟団の4階位くらいで調子に乗りやがって。こっちは元々暗殺稼業が本業だったんだ」


 そうなのか。そんな事は前世では微塵も感じなかった。俺はゆっくりと腰に下げた剣を抜き去る。


 ヒュンッ


 というつむじ風のような聞こえるか聞こえないかくらいの音がしたと思ったら目の前のラフテルが消え去った。


 右後方から短剣による斬り込みをしてきたその攻撃を俺は屈んで躱す。


「ほう、よく今のをかわせたな」


 短剣を逆手に構えたラフテルは驚いた顔をして述べる。


「だが、まぐれは二度も起きん。聞いて驚け、俺のスキルはスピードスターだ」


 ドヤ顔でラフテルは述べる。


 スピードスターはユニークスキルではなく、レアスキルでその名の通り、使用者のスピードを大幅に向上させるスキルだ。


 ただ、スピードスターは確か瞬歩の下位スキルだったはずだ。


 今のスピードも速いのは速かったが、魔物のスペリオンや倍速反動が生み出すスピードには遠く及ばない。


「なんだ、反応が薄いな? そうか、知らなかったのかスピードスターを。一つ賢くなったな。まあ、これから死にゆくものには無用の知識かもしれんがな」


瞬歩(しゅんぽ)


 俺は一瞬の内にラフテルの後部に移動して、椅子に縛り付けられているタイガ両手を縛った縄を切って解放する。


「ん? んん!?」


 タイガ解放後、ようやくラフテルは俺の移動に気づいた。


「なっ!? いつの間に?」


「瞬歩ですよ」


「瞬歩ってスピードスターの上位互換のスキルじゃないか。なんだスピードスターのこと知っていたのか? それで当てつけのように自分が知っているスキル名を俺に……」


瞬歩(しゅんぽ)


 俺はまたラフテルの背後へと一瞬で移動する。


 ラフテルは恐る恐るゆっくりと後ろの俺を振り返る。


【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

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「更新頑張って欲しい!」


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