第31話 聞き込み
まずは近場にあった食堂に俺は入った。聞き込み兼、食事の為に。
さっきバルディーニが食事をしている所を見て、お腹が空いてしまったのだ。
「注文どうします?」
「すいません、ちょっと聞きたいんですけど」
「なんでしょう?」
「あっ、さっきの兄弟団の奴!」
先程の出前に出ていた青年だ。この食堂の子だったのか。
「何? ハリー」
「いや、母ちゃん、こいつさっきバルディーニさんの所にいてさ」
「こいつじゃないでしょ、お客さんに向かって! すいませんねえ、礼儀を知らない子で」
「いやいや、大丈夫ですよ。それでそのバルディーニファミリーの話しなんですけど」
「バルディーニさんの所には大変良くして頂いてます」
「うちの店もバルディーニのお頭に助けてもらったんだぜ! 俺もファミリーの一員になりたいけど
断られてんだ。堅気でやっていけるのにわざわざこんな稼業する必要ないってさ」
「あんたはちょっと黙ってなさい!」
母親にピシャリと叱られた青年はしゅんとなる。
「今から2年くらい前になりますかねえ。ジュリアーノファミリーの人がこの店に来ましてね、ショバ代を払えと。断ると嫌がらせが始まってね」
「その時に…………」
母親に睨まれ、青年は黙る。
「それでバルディーニさんの所に相談に行くと、嫌がらせがピタリと止んで、すぐに解決してね」
「バルディーニの所にはショバ代を払ってるんですか?」
「いやいや、とんでもない。少しばかりのお礼とはその時言ったんだけど、それも受け取らないでね。うち以外も随分助けられてるらしいし、あの親分さんは大変できた人だよ。見た目と物言いは乱暴だけどね」
「孤児院にも寄付してるらしいぜ!」
母親は青年をひと睨みした後、
「……そう、親分さんが元々その貧民街の孤児院出身みたいでね。随分と支援してるみたいだよ。この辺りじゃバルディーニさんを悪く言う人は誰もいないよ」
青年はなぜか自分が誇らしげにしている。
「それで……注文どうします?」
「あ、すいません。それじゃ、日替わりのランチで」
「はい、それじゃ少しお待ち下さい」
店は昼時という事もあるのか満席に近く、繁盛しているようだった。食べ物のいい匂いが周りの席から漂ってくる。
単純なマフィア同士の抗争ではなさそうだ、というのが今のところの印象だ。あくまで印象でこれから調べる内に利権や縄張りに関する争いの情報が出てくるかもしれないが。
ただマフィア同士の抗争でなければ一体だれがあんな惨たらしい殺人をするのか? 単純な怨恨の線は追いづらい。あそこまでの損傷を与えるのは普通の人間にはできないはずだからだ。
「お待たせしましたー」
そうこう考えているうちに食事が運ばれてきた。湯気をたてたスープに、パンと焼かれた肉にソースがかかり、野菜が添えられている。うまそうだ。
俺はナイフで切った肉汁が滴る肉を口の中に運んでいく。
その後も聞き込みを続けるが、バルディーニファミリーとジュリアーノファミリーが揉めているという情報は特になく。
それどころか町の人たちはみんなバルディーニファミリーについて好意的で、頭のバルディーニが人徳者というのは町の共通見解のようにも思われた。
一方、ジュリアーノファミリーの本部にも足を運ぶ。こちらは殺ったのはバルディーニファミリーだと決めつけ、戦争だと息巻いている。
最もバルディーニファミリーが犯人だという確たる証拠は何もないらしい。
俺は今、調べてる途中だから抗争するにも少し待ってくれと頼み、ジュリアーノファミリーの本部を後にした。
ジュリアーノファミリーは仲間の惨たらしい殺害について怒り心頭でいつ暴発してもおかしくないような状況だ。
待ってくれとは頼んだがあの調子だどいつ抗争になってもおかしくない。
抗争にさせない為に一刻も早い解決が望まれる。
だが有力な情報は得られず、前回の殺人から3日ほどが経った日の事。やっと手掛かりの一つと思わる情報が入手できた矢先の事であった。
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