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第30話 抗争

 双子の少年のタイガとセイガに尾行や張り込みなどについてレクチャーして仕込む。


 俺もそこまで探偵系のスキルが高い訳ではないが兄弟団で探偵任務を複数人で受けた経験があり、経験豊富なベテランからレクチャーしてもらった経験があったのでなんとか教える事ができた。


 後は前世で隠匿系の影魔法が得意だったという事もあり、幸い二人にも影魔法の適性があったのでそれについても初級レベルを軽く教えて扱えるようにしている。


 前世の俺の処刑まで後60日。

 投獄まではもう後1ヶ月をきっている。


 二人にはレジスタンスについての情報収集を進めてもらっているが、今の所、めぼしい情報は見つかって無かった。


 そんな中……。



「ここか……」


 目の前には3階だての石造りの建物。

 バルディーニファミリーの本拠地にして本部となっているはずの建物だ。


 コンコンっと鉄製の扉をノックする。

 鉄製の扉とは珍しい。敵対組織の襲撃などを警戒しての作りだろうか。


「ん……、誰だあんた」


 髪の毛だけでなく眉まで剃り落としている、如何にもという男が扉を開く。


「兄弟団の者です。最近発生した殺人事件についてちょっと代表者に伺いたいのですが」


「…………ちょっと待て」


 扉を閉じて、男は中に確認に行く。


 急な割り込みで俺に兄弟団の依頼が舞い込んできたのだ。匿名の市民による通報。


 マフィアを相手にする必要がある為、ある程度の戦闘能力を有した高位者ということでお鉢が回ってきた。


「ついて来い」


 建物の中に入り、階段を上がる。


 3階まで上がり、一室の扉を男がノックし、入室の許可を得た後、


「兄弟団だって? そこに座れ。俺がバルディーニだ」


 バルディーニはスキンヘッドで、筋肉質な巨体をソファーに沈ませている。顔左半分と頭部にかけて入れ墨が刻まれている。


 バルディーニファミリーの頭の事前情報通りの容貌だ。


「兄弟団のウィルです」


 俺は兄弟団のペンダントを懐から取り出してチラッと見せてソファーに座る。


「んで、殺人事件で聞きたいことってのはうちがジュリアーノのところの奴を殺ったと疑ってるってわけか?」


 殺害されていたのはジュリアーノファミリーの若衆だった。


 俺も遺体を見たが、目視に耐えない程のひどい遺体で、原型を留めないほどナイフか何かで切り刻まれていた。


 その猟奇的な殺害方法から単純な怨恨などとは考えずらく、マフィア組織の一員という事から抗争が疑われたという訳だ。


 ただマフィア組織だからといってあそこまで残虐な方法で殺害するのかという疑問はあるが……。


「ええ、それで来ました。最近、ジュリアーノファミリーとの間に揉め事は?」


「ねえよ。ジュリアーノの所とは友好関係ではねえが、もしうちから仕掛けるんならそんなまどろっこしい事はしねえ。たった一人を陰気臭い方法で殺さずに一気に向こうの本部に乗り込む。戦闘力はうちの方が上なんだからな」


 依頼を受けた時に兄弟団の情報網でバルディーニファミリーについて調べてきた。


 バルディーニファミリーの本業は警備や護衛、荷物の運搬、飲食の経営などだ。


 違法な薬物の売買や恐喝などの違法な活動をしているというをしているという後ろ暗い情報はなかった。


 ジュリアーノファミリーとは数年前に揉めているらしく、それがここまでこじれている可能性はある。


 ただバルディーニの方がジュリアーノより戦闘力が上という先程のバルディーニの言の通り、数年前に揉めた時はバルディーニファミリーの圧倒的勝利で終わっている。


 コンコンっとドアをノックする音が、


「入れ」


 おぼんに食事を乗せた青年が部屋に入ってきた。


「おう、食事はここに置いてくれ。飯時だから出前頼んでたんだ」


「はい、バルディーニさん、……この人は?」


 青年は俺を怪訝そうに見てバルディーニに聞く。青年の左手には特徴的な火傷の痕がある。年頃は俺と同い年くらいだろうか。


「兄弟団の奴だ。ほら、最近ジュリアーノの所の若い奴が殺されただろ。それでうちを疑ってやがるって訳だ」


 その言葉を聞き、青年はこちらを睨むと、


「バルディーニさんはすごいいい人なんだぞ! 変に疑ってるんじゃねえぞ!」


「……かれは?」


「近所の食堂の子だ。出前を頼んで持ってきてくれたんだよな」


 コクリと青年はうなずく。ファミリーの一員という訳ではないのか。


 バルディーニはこんな青年に慕われる程の人徳者なのか? それとも青年が騙されているだけなのか?


 コンコンっとまた部屋のドアをノックする音が。今度現れたのは白衣に身を包んだ男性だ。


「バルディーニさん、治療は終わりました」


「おう先生! ありがとうございます。お代はもう……」


「それはもう、頂いてます」


「頭、この通り治してもらいました」


 若い衆の一人がバルディーニに無傷の手をかざす。


「おう、応急で何針も縫ってたのが傷一つなくなってるじゃねえか! 流石、先生、魔帝級の治療師だ!」


 それぞれの魔法の属性に対してのランクとして初級、中級、上級、魔帝級、神級がある。


 神級は世界に現状二人だけ。魔帝級は国に一人二人というレベルになる。


「魔帝級は言い過ぎですよ……」


「なにを、欠損以外ならどんな傷でも治療して見せるじゃねえですか!」


「まあ……今日はこの辺りで」


「はい、またよろしくお願いします、先生!」


 先生と呼ばれた男は会釈をして去っていった。


「今のは?」


「レックス先生だ。この近辺で治療師をされている。凄腕だぞ? 魔帝級っといったのはお世辞じゃねえ。うちも稼業も稼業だから随分と世話になってる」


「怪我したのはなんでですか?」


「あ? 荷物の運搬で魔物に襲われたんだよ! そうだよな?」


「はい、ワーウルフに腕を噛みつかれて。危うく引きちぎられる所でした」


 嘘を言っているようには見えないが真偽の程を確かめるのは供述だけでは難しいだろう。後は聞き込みを行うか。


「じゃあ、今日の所はこの辺で」


「ああ、もう来なくていいぞ。じゃあな」


 運ばれてきた食事を頬張りながらバルディーニはそう返す。

【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新頑張って欲しい!」


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