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第2話 転生成功

「痛っ!」


 突然、強烈な頭痛と吐き気とが押し寄せてきた。


 と同時に凄まじい量の情報が俺の頭の中になだれ込んでくる。


 俺は立っていられなくなり、自室のその場に跪く。


 これは一体?

 …………そうか、これは前世の記憶だ。


 ベットに寄りかかり、頭痛と吐き気が弱まるようにしばらく安静にする。


 前世と今世。前世の俺の名前はルーカス。


 それで今世の俺の名前はなんだったか……そう、ウィルだ。


 まだ前世と今世がこんがらがって混乱している。


 しばらく安静にすると頭痛と吐き気が大分よくなってきた。


 そして染み込むように俺が俺になっていくのを感じる。


 人格統合されているのか?

 俺は前世の完全な俺なのか?

 前世から変わっていないのか?


 自分でもよくわからない。


 もしかしたら一種の前世の俺による精神支配のような効果があったのかもしれない。


 そうだ、今はいつだろう? 

 転生魔法は目的通りに成功したのか?


 今、母さんが台所にいるはずだ。……そうだ、母さんに父さん。それに弟が俺にはいる。


 俺は立ち上がり、自室のドアを開けて急いで台所に向かう。


 トントントン


 母さんは台所で食事の準備をしていた。


 自然と違和感なくその光景と今世の母さんを受け入れられる。


「母さん、今ってルシア歴、何年だっけ?」


「え!? 今はルシア暦1323年でしょ。そんなことも忘れたの?」


「それと……後、今日は何月何日だっけ?」


「……今日は5月2日でしょう。何を言っているの、ウィルちゃん?」


「ありがとう、母さん!」


 俺は自室に駆け戻る。


 やった、やった、やった! 転生成功だ!

 予定通り、今は前世の処刑の1年前だ。


 そして俺は……引き出しから手鏡を取り出し、自分の姿を確認する。


 青い髪に青い瞳。

 前世の白髪に白眼とは見た目が大きく変わっている。


 歳は16歳。

 前世の頃より1歳だけ年上になる。


 住んでいる場所はマグレガー王国の一般民衆の居住区だ。


 父はアルフ。

 元放浪教師で今はここに定住して教師をしている。


 母はユミン。

 昔は鍛冶職人をしていたらしいが今は専業主婦をしている。


 兄弟は弟のエルが一人。

 6歳も年が離れており、わんぱくぼうずだ。


 後、外には――


 俺は家の玄関から出て、通りを眺める。

 ちらほらと人々は行き交い、少し離れた場所にある馴染みのパン屋なども目に入る。


 行き交う人々を見ると――


 俺の脳裏に蘇ったのは前世で俺の処刑を眺める民衆たちのあの目だ。


 あの悪意に満ちた目。

 俺の苦痛と辛苦とを期待している目。

 あの目が、まざまざと蘇る。


 そして……それと共に俺の心に湧き上がってきたのは恐怖だ。


 人が怖い……。

 そんなことは前世でも処刑以前には一度も感じたことがない。


 だが今の俺は人の視線が怖い。

 誰一人として俺のことなど気になんてしていない。

 こちらを見るにしても一瞥するくらいなのにもかかわらず。


 気がつくといつの間にか俺は額に脂汗をかいていた。逃げるように家の自室へと戻りベットに潜る。


 俺に向けられた人々の底の知れない悪意。

 投げつけられた石とその痛み。


 そういった前世の記憶が一緒くたになって俺に押し寄せ、俺の心を硬直させる。前世と同じ様に目から涙が溢れそうになる。


 俺はその日から自室に引きこもることとなった。



 ◇



「ウィルちゃん! 体調は良くなった?」


 ドアをノックした後に俺を気遣う母の声が聞こえてくる。


「ごめん……まだ、良くない」


「そう……じゃあ、また後で食事持ってくるね」


 罪悪感を覚えながら、俺はそう嘘をついた。

 自室に引きこもってすでに5日が経過している。


 成人年齢の16歳を超えると一般民衆たちは仕事をはじめる。


 俺も父の後を継ぐような形で教師見習いとして仕事をはじめている。


 その仕事をずっと仮病で休んでいた。


 罪悪感を覚えて心苦しい。

 仕事に行けるなら行ったほうが、心理的には楽だ。


 しかし、外出しようとした時に俺にもたらされるのはどうにもならない恐怖心だった。


 そもそも俺は俺を救う為に転生したのだ。

 それが自室に引きこもっていては話にならない。


 そもそもなんでこんなことに……。


 そうだ、前世の俺は無実の罪で投獄されるまで、何の変哲もない平穏な毎日を過ごしていたはずだった。


 俺の脳裏に前世で投獄されるまでの出来事が蘇る。

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