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第28話 宮廷魔術師

「這いつくばって、俺の足を舐めれば許してやらんでもないぞ?」


 腕組みをして偉そうに仁王立ちをしているルスランの姿がそこにはあった。自分たちが負けるなんてことは微塵も考えていないのだろう。


魔法防御膜(マジックプロテクト)


 俺が発動した魔法防御魔法が俺とアルフレッドに光の粒子となって降りかかる。これで少々の魔法なら跳ね返してくれるはずだった。


「ん? 今、魔法発動したような……」


「ルスラン様、気の所為ですよ。無詠唱での魔法発動など我が魔術学園でも学生中に習得できるのは数年に一度というくらいの難度。平民風情が扱えるはずがありません」


「そ、そうだな。俺は謝罪の機会を与えた。慈悲はみせた。それでは後は――」


 そう言ってニヤリとした後にルスランは詠唱を行い、


暴風炎(ファイアストーム)


 ルスランから大きな炎が強い風とともに俺たちに放たれる。


「流石ルスラン様。火系の中級魔法見事です!」


「容赦ねー、こりゃ一発で死んだか?」


 ファイアストームは俺たちに直撃し、俺たちの周囲がまるまる炎に包まれる。


 その後、大きな炎によって姿が見えなくなっていた彼らの目の前に無傷の俺たちが現れる。


「へー、すげーなこりゃ。正直、死んだと思ったけど無傷。全然、熱くもなかったぞ」


 驚きの表情で不思議そうに自身の身体を眺めるアルフレッド。それ以上に驚いた表情でルスランたちは目を見開いている。


「魔術学園の成績優秀者でしたっけ? それでこんなものですか……」


「なっ!? 調子に乗るなよ! 少し、調子が悪かっただけだ。馬鹿が勘違いして調子に乗りやがって、その身体切り刻んでやる!」


風刃(ウィンドカッター)


「でた! ルスラン様の必殺技!」


「単発ではなく、複数のウィンドカッター! こんなの放たれたら死ぬしかねえ!」


風壁(ウィンドウォール)


 俺たちとルスランとの間に目に見えない風の壁ができる。


 次々と放たれるウィンドカッターはすべてその壁に飲み込まれていき、俺たちまではそよ風すら届かなった。


「また、無詠唱でこいつ……」


「え? 平民がなぜ、無詠唱で?」


「ウィンドウォールって確か上級魔法じゃ……」


 ルスランは苦々しげな表情を浮かべ、取り巻きたちは狼狽し初めている。


「じゃあ、そろそろこちらからも攻撃しようか。アルフレッド、殺すなよ」


「ああ、覚悟しろ、貴族のお坊ちゃま連中よ」


 アルフレッドは剣を抜いて、いの一番にルスランの取り巻きに襲いかかる。


風弾丸(ウィンドショット)


 俺から放たれた目に見えない風の弾丸がルスラン達の下半身を撃ち抜く。


 無詠唱で間髪入れずに連発しているせいか彼らはそれをほとんど躱す事ができない。


「痛っ、痛っ!?」


 次々とルスランの取り巻きたちはその場に崩れ落ちる。そこにアルフレッドが峰打ちで攻撃を加える。


「うわー、止めっ!」


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 ルスランたちの制圧はあっという間に終わった。


 手応えがなさすぎる。


 ルスランたちが言っている事が本当なら、仮にも成績優秀者がこの調子だと魔術学園では理論中心で実戦は重視されていないのだろうか。


「弱すぎねえか、こいつら? ウィルのマジックプロテクトが優秀なのは分かるんだけどよ。お前らいじめるばかりでほんとの喧嘩、今まで一度もやってねえだろ」


 その気性から幼少時より無謀な喧嘩を繰り返してきたアルフレッドは所感を述べる。


「く、くそお! おい、ジェフリー!」


 ルスランのその一声で屋敷の玄関の扉が開き、そこから年配の執事服に身を包んだ男性が現れる。


 オールバックの黒髪にメガネをかけており、メガネから覗く特徴的な細目は冷たい光を放っている。


「なんでございましょう、ルスラン様」


「こいつらぶち殺せ!」


 ジェフリーと呼ばれた執事は冷たい眼差しをこちらに向ける。そこで俺は兄弟団のペンダントを見せる。


「ルスランはもう犯罪者です。それを庇ったり、逮捕を妨げるとあなたも罪に問われますよ」


「……だそうでございます。ルスラン様」


「ボーナスを弾む! 金貨10、いや、50枚出す! こいつらをぶち殺してしまえば、後はどうにでもなる!」


「かしこまりました」


 ニヤリとしながらジェフリーはお辞儀する。


 人殺しをしといて後からどうにでもなる?

 躊躇なく殺人を命じるその様子から、余罪がありそうだと感じる。


「いいんですか? 金で犯罪者になって。それにルスランがばらまく麻薬のせいで不幸になってる人間がたくさんいるんですよ」


「地獄の沙汰も金次第、という格言がございます。後、麻薬のせいで不幸に、でしたっけ。それについては私の知ったことではない、という回答になりますね」


 慇懃な態度で答えるジェフリーは冷笑さえ浮かべている。するとぶわっと普段は押さえているであろう、魔力を解放した。


 なるほど、こいつは……。


「アルフレッド、ジェフリーは俺に任してもらっていいか?」


「ああ、やべえんだな? 分かった」


 ジェフリーから感じる潜在魔力の総量は少なく見積もっても上級。俺が王族にいた時に見た、宮廷魔術師クラスはある。


 なんでこんな男がこんな貴族の執事などをやってるんだ?


「はは、ジェフリーはかつて宮廷魔術師まで努めた男! ブルータス様が特別に俺に執事としてつけて下さったんだよ。こうなったらもうお前らには万が一にも勝ち目はないぞ! 頭を垂れて命乞いをしろ!」


 宮廷魔術師。


 上級以上の魔術師の中から更に厳選された魔術師のみがなれる魔術師の一つの高みだ。魔術学園に通っている学生からしたら羨望の的だろう。


 そういえば……前世でブルータスのお付きの魔術師の事を思い出す。


 問題ばかりを起こすブルータスの為にその問題を力づくでもみ消し、解決する腕利きという噂だった。


 同時に重度のサディストで犠牲者たちが酷い目にあっているという噂も。


 ジェフリーという男。おそらくこいつが前世に噂で聞こえてきた男だろう。

【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新頑張って欲しい!」


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