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第24話 ダイヤモンドダスト

 闇夜に土煙を立てながら走る、一台の馬車。


 辺りは暗く、月は雲の間に隠れている。

 道沿いに民家もほとんどないような田舎道。


 運転手は馬車の前方に置かれたランプの灯りのみを頼りに、慎重にスピードを抑えて馬車走らせている。


 森林道を抜け、開けた平野に出て視界が一気に開けた時。雲の間から満月が顔を出す。


 その時、運転手は月灯りに神々しく照らされて、宙に浮き、美しい青髪と青眼とを輝かせる、およそ人間とは思えない存在を垣間見る。


「ひぃ」


 聞こえるか聞こえないかというような悲鳴を上げ、運転手は思わず馬車を止める。


 神か仏か、それとも悪魔か?


 おおよそ人には見えなかったその存在は、目が慣れてくると領主に仕えていたいつぞの冒険者だという事が分かる。


 確か喧嘩別れしたはずだが……。


「どうした?」


 馬車の小窓を開けて、領主が訪ねてくる。


「いえ、夜道の進行方向に突然、人が出てきまして……」


「何ぃ? あっ、あいつは」


 その時、まるで心臓を握りつぶされるのではないかという重圧と、突然、身も凍るような寒さを感じる。


「おい、お前は馬車の馬を連れて逃げろ。お前は見逃してやる」


 氷結の魔術師クレウスにそう告げられると、馬車の運転手は無言でうなずき、馬車から馬を切り離す。


「お、おい、お前何をやっている!?」


 領主のその声を無視して、馬車の運転手は顔を青くしながら馬に乗り、その場から走り去っていく。


「出てこい」


「…………」


 領主は無言で馬車から降りてくる。


 クレウスは月明かりに照らされながらゆらゆらと宙に浮かんでいる。


「な、な、なんのようだ! 言っておくが、俺に手を出したら王国法によりお前は死罪になるぞ!」


 そのバラクの言葉にクレウスは笑みを浮かべる。


「法など俺には関係ない。お前、俺を屑呼ばわりしたよな? まあ、それは許せん事もないのだが。法に手足を縛られて身動きの取れない奴の変わりに、法の超越者たるこの俺が人肌脱いでやろうと思ってな。まあ、一種の気まぐれだ」


「法の超越者だと? そんなのは王ぐらいしかいるはずが……」


「いるんだよ、ここに」


 その時、突然バラクの目に月明かりに照らされたキラキラと小さな結晶のようなものが雪のように降り落ちる。


「美しい……」


 幻想的で神秘的なその光景にバラクは思わずそう呟く。


「見るのは初めてだろう、これはダイヤモンドダストだ。大気の急激な冷却により大気中の水分が細氷化して起こる現象だ。……と言ってもお前の耳にはもう届いていないだろうがな」


 クレウスの目の前のバラクは瞬間冷却されて、まるで地面に石像が倒れるかのようにズシンと音をたてて倒れた。


「よし、これでこの件は終了だ。さて、これからどうするか…………。新しいおもちゃも見つけたし、隣国の炎帝のババアの顔でも久しぶりに見に行くかな」


 そう呟いた後、クレウスはゆらゆらと宙に浮きながら、その場を去っていく。


 その場にはそんなに寒くもない季節にカチコチに凍結された石像のようなバラクが残される。




 その後、武装して領主宅を襲撃しようと移動してきた鉱夫たちによって、少し溶け出したバラクの亡骸が発見される。


 警備局から一度は鉱夫たちにバラク殺害の嫌疑がかかるが、バラクの傷一つない亡骸により、鉱夫たちの証言が正しいと判断される。


 結局バラク殺害の真相は闇の中。


 後になって聞いた話だが、その後、ビルバオ村の領主は新しく任命された領主に変わったそうだ。


 新領主は比較的まともで鉱山の労働環境は改善し、そして過度な税制も改善されたそうである。


 結果として領民のイーノスによって出された依頼は成功したと言っていいだろう。


 俺がそれを知ったのは依頼の成功のスコアポイントが俺に加算されたと兄弟団の受付員から伝えられた時の事だった。

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