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第19話 労働争議

「それではこちらが今回の報酬になります」


 俺は報酬の銀貨50枚を受け取る。

 近隣の牧場の家畜を襲っていた、ワイルドウルフの討伐任務の報酬だ。


「ありがとう、それじゃ……」


「あっ、ちょっとウィルさんに相談があるんですけど」


 なんだろうか。カレンがこんな事を言ってくるのはめずらしい。


「なんでしょう?」


「こちらなんですけど……」


 カレンは受付カウンターに一通の手紙を差し出す。


 見た感じ俺宛ではなく、冒険団宛てとなっている。


 見て良いのだろうか?

 俺はカレンに視線を移す。


 カレンが無言で頷いた為、俺は手紙を開き、中の便箋を確認する。


『きょうだいだん さまへ


 おやかたたちと、りゅうしゅさまたちがけんかしてます。


 なんとかしてください。


 ぼくのおこづかいのどうかをぜんぶあげてもいいです。


 いーのす より』


 明らかに子供の筆跡で書かれている。


「えっと……何ですかこれ?」


「そうなりますよね。私も最初は子供のイタズラかなと思ったのですが、差し出しがビルバオ村からになってまして……」


「確か今、労働争議で揉めてるっていう……」


「そうです。鉱山経営の貴族の領主側と平民の労働者側が揉めにもめてまして。となると安易に無視もできないけど、これをこれだけで正規の依頼として受領するのも難しいという状況でして……」


 なるほど。

 俺に現地までイタズラじゃないか確認しにいって欲しい。可能ならそのまま現地で依頼を解決して欲しいという事だろう。


「分かりました、じゃあ、ちょっとビルバオ村に行ってみます」


「ありがとうございます! イタズラじゃなかったら兄弟団として支援しますので何でも言ってくださいね! スコアポイントは後からでも難易度から適性値を算出しますので」


 カレンには色々融通してもらったり世話になっている。ビルバオ村は王都からそれほど遠くないし、まあいいだろう。


 受領したとしても無償に近い依頼になりそうだが、スコアポイントを獲得できるなら特に問題はない。


 俺は早速移動のための馬の手配に向かう。




「よう、兄さん、食事かい?」


 食堂のカウンターに肩肘をつき、片目に眼帯をしたガタイのいい男。


「ええ、食事も取りたいんですけど、ちょっと聞きたい事もあって」


 俺はカウンターの椅子に腰掛けて尋ねる。


「イーノスという人。たぶん子供だと思いますけど、この村にいますか?」


「イーノス? ああ、おい! フレデリク!」


 店主のその声に細長い顔をした男が反応する。


「あいつが、イーノスの親だ。どうした?」


「なんだ?」


 フレデリクがカウンターまでやってくる。


「息子さんに会わせてもらえますか? 私、こういうものでして」


 俺は兄弟団のペンダントを見せる。


「兄弟団がどうして?」


 俺は手紙を見せた。


「……うちのガキが書いたのかなあ? ちょっと待ってろ」


 フレデリクはそういうと元いた席から子供を一人肩車してつれてきた。


 子供は親指を口に咥えてしゃぶっている。


「イーノス、お前この手紙書いたか?」


「うん、イーノス書いた! ルシアお姉ちゃんに手伝ってもらった!」


 俺は兄弟団のペンダントをイーノスに見せる。

 イーノスはその目を輝かせる。


「イタズラでなければ正式の依頼として受領しますけど」


「おいおい、報酬なんて大した額払えねえぞ。いいのかこんな子供のお願い」


「今、この村の鉱山労働者と領主が揉めているのは事実ですよね。であれば兄弟団としては問題ありません」


 そもそも兄弟団は営利目的の組織ではない。団員たちもほとんどが本業として活動しておらず、こういう所が冒険者ギルドとの最大の違いだ。


 ただ命がかかってくるような依頼もあるので、それが団員に受領されるかどうかは別問題にはなるが。


「はい、お願いします! 僕今、おこづかい50枚の銅貨あります!」


 50枚の銅貨ならここで1食、食べたらそれで無くなるような金額だ。


「じゃあ、兄弟団のウィルの名の元にこの依頼、受領しますね」


 店主とフレデリクは顔を見合わせる。


「なんというか、まあ……物好きだねえ、お兄さん。労働争議を解決に向けて仲裁してもらえるってのはうれしいがね」


「なるべく解決に向けて努力しますよ。それじゃあ、とりあえずランチもらえますか?」


「はいよ!」

【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新頑張って欲しい!」


 と、思って頂けましたら、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価頂けると、作者の大きなモチベになります!


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