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第15話 サーカス団

 その後、順調に依頼をこなし兄弟団に入団して1ヶ月が経過した頃。処刑まで後150日。


 現在の俺の兄弟団の階位は9階位だ。


 その日も本部に足を運び、受ける依頼を探していた所、顔なじみになった受付に声を掛けられる。


「ウィルさん、おはようございます」


「おはようございます、どうしたのカレンさん」


「一件、依頼が舞い込みまして」


 素通りしそうになっていた足を止めて俺は受付のカウンターに踵を返す。


「どんな依頼ですか?」


「行方不明者の捜索とその原因の解明の依頼になります」


 場所は王都北西地区のケルン町の町長からの依頼で毎年同時期、現在くらいの時期に子供が行方不明になっているらしく、その原因の解明をして欲しいとの事だった。


 俺はその依頼を受領し、早速ケルン町の町長の元へと向かった。




「子供が毎年今ぐらいの時期にいなくなるんですほー。我々も近隣の盗賊団や裏稼業の人間たちに目を光らせてはいるのですが、いつも手掛かりが何もないんですほー」


 語尾に特徴ある喋り方をしているのが町長のホイだ。くりっとした目をして禿げ上がった頭部に少し残った白髪を持つ年配の男性で見た感じはフクロウのようにも見えなくもない。


「警備局の方はどうですか?」


 警備局は王族直下の捜査機関だ。だが王が代々階級主義者という事もあって、貴族には捜査の手が及ぶことはほとんどない。


 そういった不満もあってマグレガー王国特有の兄弟団という組織が誕生したという経緯があった。


「警備局も捜査はしてるみたいだけど期待はできないほー」


「なるほど、それではいなくなる子供に何か特徴はありますか?」


「特徴は特にないですほー。男の子に女の子、住んでる場所も親も共通項も何もないほー」


 目についた子供を攫っているという事だろうか。最悪、快楽殺人者とかという線も考えないといけない。


「それではしばらくケルン町で聞き込みを行います。何か協力をお願いする事もあるかもしれませんが」


「なんでも言って下さいほー。ケルン町を上げて協力させてもらいますほー」


 会釈をして町長の執務室を辞そうとした時、


「そうそう、今、町にはサーカス団が来ていますほー。毎年この時期に滞在する一団ですのでよかったら仕事終わりにでも見に行ったら面白いですほー」


「へー、じゃあ行ってみますね。情報ありがとうございます」



 町舎を出ると俺はまず、ケルン町の酒場、商店に住宅街などへ足を運び聞き込みを行う。


 怪しい者を見かけていないか?

 普段と変わったことはないか?

 子供に対して変な目を向けているものはいないか?

 小動物を虐待しているやつはいないか?

 変質者や痴漢者はいないか?


「いやー、これと言って心辺りはないなあ」


 町人たちから返ってくるのは同じような返答ばかり。


 また普段と違うのはサーカス団がケルン町に来ている事くらいで、毎年この時期だがらといって変な奴や怪しい奴が目立つ訳ではないともいう。


 それはそうだろうとも思う。


 そんな証言が今まであればそれを取っ掛かりに捜査をしているはずだし、その情報提供を町長もしてくれるはずだ。


 盗賊団や人攫いなどの組織。

 それについては本部に問い合わせを行っており、返答待ちだ。


 サーカス団目当てに王都中からケルン町に人々が集まっている。もしその中に紛れるように犯人がいるのであれば、見つけ出すのは相当に難しいと思われた。



「はーー」


 一日中歩き回り思わずため息が漏れ出る。

 聞き込みの結果は芳しくはない。


 歩き回った結果、偶然に俺の目の前にはサーカス団の巨大なテントが広がっている。


 カラスが鳴き、空は赤からオレンジの美しいグラデーションで染まり始めている。


 今日はこれくらいにしておこうか。


 おおーーーというどよめきがテントの中から聞こえる。もうサーカス団の営業は始まっているらしかった。


 そんな中サーカス団のテントの外を重そうな荷物を運んでいる小さな子供が目につく。見た感じ6歳くらいの少女に見える。


 あんな小さな子が何してるんだろうか?


 俺はその少女の背格好から同じ年くらいであろう前世の俺の妹のティアナを思い出す。


 ティアナ…………元気にしてるだろうか?

 いや、前世の俺が投獄されていない今はまだ元気にしてるはずだ。


 懐かしさと共にもう会えないのかという強い哀愁を感じる。


 少女はぱっと見、遊んでいるわけでなく労働に従事しているようだ。このサーカス団ではこんな小さな子供を働かせてるのだろうか?


 怪訝そうに少女を眺めているのが傍からでも分かったのだろう。


「兄さんどうした?」


 サーカス団の外に置かれている木箱の一つに腰掛け、煙管からタバコを吸っているサーカス団の団員と思しき若者から声を掛けられた。


「いや、さっき重そうな荷物運んでた少女。サーカス団の子ですよね。あんな小さな子供でもこのサーカス団は働かせるんですか?」


「ああ、ユーナの事だな」


 男は白煙を一つ大きく吐き出す。


「あの子は孤児でな。団長が1年前に引き取ったんだよ。ユーナにはそんな事する必要はないと言っても、どうやら過去にいろんな施設をたらい回しにされた事がトラウマになってるみたいでさ。言うことを聞かねえんだよな」


 なるほど、そういう事情があったのか。


「ここのサーカス団は孤児を引き取ってるんですか?」


「いや、そういう訳でもねえ。あの子は団長がどこからか引き取ってきた子でな。ユーナも今では団長をパパなんて呼んで慕ってるよ。団長も満更でもねえみたいでよ」


 どこか嬉しそうにサーカス団の団員の若者は言う。


「そうかですか、ありがとうございます。ところでサーカス団の観覧はいくらですか?」


「大人は銀貨3枚で子供は1枚。今日のワンステージ目は後少しで終わって、夜の演目は8時から始まる」


 夜の8時だったら今から戻ってエレナを誘っても間に合う。エレナに予定とかなければだけど。


「分かりました、ありがとう、今夜にでもいけたらいってみます」


「ああ、是非。それじゃあ」


 そこで挨拶して俺は帰宅の途につく。


【※大切なお願い】


 少しでも、


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