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第13話 不可視の攻防

 闘技場に俺が姿を見せると観客たちにどよめきが走る。


 事前に聞いた所によると俺とランバートとの試合。


 裏で掛けられているギャンブルの俺へのオッズは50を超えているらしい。


 俺に少しでも掛ければボロ儲けできるオッズだ。


 裏を返せば万が一にも勝てない。

 そう事前予想されているということだ。


 心なしか観客たちの俺を見る目に同情の色が見られる。


 どうせ負けるのに可哀想だとでも思っているのだろうか。


「逃げなかったことは評価してやる。まあ、評価できるのはそれだけだがな」


 先に闘技場入りしていたランバート。


 剣を地面に突き刺す形でその上に両手を置いてそこにもたれかかるような楽な体勢をとっている。


「逃げるって? どこに? 誰が? ……俺の人生に退路などないぞ?」


 前世処刑されてきたこの身の上、本心だった。


 ニヤリとしてランバートは剣を鞘から抜く。


 剣は試合用で両刃がない。俺が合せるようにして抜いた剣も同様だった。


 これに加えて試合にはもう一つ制限がある。

 俺と、ランバートの右腕に光る金属製のリング。


 これは特殊なリングで魔法や闘気術を禁止する封マナが施されたリングだ。魔力や闘気の源泉となるマナを封じる。


 剣術の試合なので表立って魔法を使う奴はいない。

 しかし、身体強化の魔法。


 これについては無意識レベルで扱っている剣士たちもいる。


 身体強化をつかっているかどうか。

 刹那の一瞬の間だけ使用などされたらその見極めは大変だ。


 闘気術についても人が身体内部に貯蔵しているマナをその力の源泉とする術。


 闘気術の習熟度が高い者については身体強化を凌駕するような者もいる。


 なるべく剣術の優劣を争う為、剣士たちは一律で封マナの体具を装着して試合に望む。


 それが極力、公平を期す為の剣術大会のルールだった。


「いいか、負けても気に病むことはない。お前が頑張っていたというのは人伝に伝わっている。だが世の中には決して超えることができない壁というのがあるんだ。それをこれからお前に教えてやる」


 俺に負ける、ということは微塵も頭にないのだろう。


 ランバートはまるで小さな子どもに諭すような口調で俺に語りかけてくる。


「両者、構え!」


 審判員の号令がかかる。


 俺は両手で剣を構える。

 一方、ランバートは片手で剣を持った、自然体のままだ。


「はじめ!」


 両者共に踏み込み一気に間合いを詰める。


 ランバートは無造作に左上段から鈍色の剣身を振り下ろす。


 それを俺が受け流すと続けざま、左下段から右中段への振り上げ。


 横に躱すと更に振り上げた剣を右上段から振り下ろす。


 ガァキイイイイイイーーーンッ


 剣と剣とが弾き合う音が闘技場に響き渡る。


「ふん、前よりは幾分、マシになっているみたいだな」


 今まで俺はランバートと何度か試合をしているが、常に瞬殺されてきた。


 成長を実感すると同時に、ランバートの本気はこんなものではないはずだとも思う。


「じゃあ、少しずつギアを上げていくか」


 ランバートは凶暴そうな笑みを浮かべると先ほどの連撃を更に上回る速度とパワーの連撃を加えてきた。


 激しく剣と剣との打撃音が響き、剣がぶつかり合う時に火花が散発的に生じる。


 ほんの数十秒の内に数十回の打撃が加えられたが俺は一歩も下がらず、その攻撃を受けきった。


 おおーーー、という観客たちの歓声と共に、目の前のランバートもその目を丸くしている。


「……驚いたな、今の攻撃を防ぎ切るか。骨を何本かへし折ってさっさと泣かして終わらすつもりだったんだけどな」


 染み込むような喜びが俺の胸から広がっていく。

 今ので確信できた。俺は確実に強くなっている。


「今の連撃が防げるようなら個人戦に出場してもそこそこの所までいけるぞ。もしかしたら上位に食い込めるかもしれん」


「そんなこと言って、まだお前本気じゃないんだろ。さっさと出してこいよ本気を」


「ははっ! 調子に乗るなよ! 実力差があるという事実に変わりはないんだ。じゃあ、お望み通り――」


 来る!

 ランバートが纏う雰囲気が明らかに変わった。


 右上段からの振り下ろし。


 それを俺の剣が防ごうとした時、不自然にランバートの剣は逆方向に弾かれたようになり、今度は右中段。


 それも俺が反応するとまたランバートの剣は逆方向へ。


 右上段の横払いを俺が屈んで躱すと、また物理法則を無視したように続けざま左中段からの切り落としがされる。


 ランバートの連撃は徐々にスピードを上げていく。


 最初は観客たちもそのスピードを目で追えていた。しかし途中から目で追えなくなり、俺たちの残像が散発的に確認できるだけの状態となる。


 おおおーーーーーーっ!


「何をやっているか目で追えないぞ!」


「こいつらほんとに同じ人間か!」


 目視を不可とする剣士たちの攻防に観客たちの驚愕の声が会場に響く。

【※大切なお願い】


 少しでも、


「面白い!」

「続きが気になる!」

「更新頑張って欲しい!」


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