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第11話 鍛錬の日々

 教師見習いの今日の担当分の授業が終わった俺はいつものように王都郊外の平原へと向かう。


 城壁に囲まれた安全圏を外れたその場所。


 雑草が生い茂り、ほとんど人が訪れることのないその場所は、一人でひっそりと鍛錬するには好都合な場所だ。


 教科書などを入れたカバンを大きめの岩の上に置き、剣を鞘から抜く。


 まず身体強化を極限まで掛ける。

 その状態で剣を振る。


 ビュンビュン

 剣を振るうたびに強い風切り音が自然と発生する。


 そこに重力魔法のグラビガを自分自身にかける。

 自身の肉体強度の限界まで。


 ズシンと一気に体が重くなる。

 まるで腕と胴体、そして足首にそれぞれ重い重りがつけられているように。


 同じ様に剣を振るうが当然、そのスピードは遅くなる。


 グラビガを自分にかけることにより、重力が魔法強度に応じて何倍にもなる。


 こうすることによって自然と全身の筋力トレーニングが可能だ。


 このグラビガをかけ続けて魔力を消費し続ける状態。その状態で更に魔法剣を行使して、魔力も限界まで使い切る。


 肉体と魔力を限界まで消費して使い切るトレーニング。短い期間で強くなる必要があった、たどり着いた俺なりのトレーニング方法であった。


 ただ単純に剣を奮ったり、魔法を発動したりするより、この方が成長速度に何倍もの差があったのだ。


 重い身体を歯を食いしばって全力で動かす。強力な重力は内臓を押さえつけられているかのような感覚をもたらす。


 振るう炎の魔法剣の剣閃が宙に美しい軌跡を描いているがそのスピードは当然遅い。


 今日も今日とて、敵としてイメージしている魔物はC級のオーク。すでに討伐経験もあり、通常の状態であれば何の問題もない敵ではある。


 しかし、今の素早く動けない状態だと中々の強敵になる。


 イメージではすでに今日、何十体もの魔物を倒している。


 そろそろ俺の体力と魔力とは限界を迎えていた。


 重力魔法のグラビガで重くなった俺の身体が疲労により更に重くなっている。


 魔力も枯渇しかけていて、振るう魔法剣の魔法効果がとぎれとぎれとなってしまっている。


 一息分反応が遅れる。体が思うようについてこない。オークが振るう斧に防戦一方となる。


 強烈な横殴りの一撃を食らった後にバランスを崩して倒れそうになった所を――


 振り上げられたオークの斧に俺の体は両断された。


 ……やられた。


 酸素が足りずに頭は真っ白になり何も考えられない。


 俺は地面に横になり呼吸を整える。


 腕や足はあまりの疲労で若干ピクピクしている。


 …………しばらくして呼吸が整うとフラフラになりながら置いていたカバンを取る。


 そして剣を杖代わりのようにして家までの帰路を歩く。


 疲労が酷すぎて、まるで老人のようにしか歩けない状態であった。


 ランバートとの戦いが決まってから道場での稽古ももちろん行っている。


 だが、より強くなるために俺はこのトレーニングをずっとおよそ半年間ずっと続けていた。





 ようやく家に着き、用意された夕食を食べる。


 少しばかり体が回復した後に今度やるのは魔術大全の読み込みと魔法の習熟だ。


 魔術大全の読み込みに関してはほほ終了している。


 魔術大全に掲載されている、上級までのすべての魔法とその術式は把握していた。


 一般的な魔術書で学ぶことが可能なのは上級までだ。魔帝級以上はオリジナル魔法か、或いは、高度な合成魔法か、後は莫大な魔力を消費したかなどになってくる。


 魔法の発動に必要なのは専用の魔法陣として描かれる術式のイメージングだ。


 術式をイメージして、そこに自身のマナから体内の魔力回路を通じて魔力を抽出する。


 イメージした術式にその魔力を注ぎ込むことによって魔法は発動される。


 そもそもなぜ魔法の発動に詠唱が必要なのか?

 詠唱は術式のイメージングの補助に必要になる。


 詠唱を行うことで術式が自然とイメージとして立ち上がってくるのだ。


 補助なので詠唱せずに完璧に術式のイメージングができれば詠唱は当然必要ない。


 自室に積み上げられたいくつかの紙の山。

 俺は無詠唱で魔法が扱えるように術式の写経を行っている。


 紙に術式を書き写しながら、無意識に脳内イメージができるくらいまで、繰り返し、繰り返し、脳に術式のイメージを刷り込んでいくのだ。


 上級以上、魔帝級の魔術師ともなるとほとんどが無詠唱の使い手と聞く。


 魔術師としてもなるべく高みに登れるようにするための鍛錬だ。


 これもおそらく一般的な魔術師の鍛錬方法ではない。


 教科書に載っているような方法でもないし、俺自身聞いたことがないからだ。


 その日も俺は机に突っ付して寝落ちするまで、術式の写経をやり続けた。

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