34 この世はクソだ
「まずは…体の具合はいかがですか?リーン」
「ええと…とりあえずは…はい。体はダルいけど」
「それはそうでしょう。血を失っている上に、4日間寝込んでいたのですから」
気遣わしげな視線を向けられる。やっぱりこの方は優しい…そして。
「申し訳ありません、リーン。預かりの身の貴方に、このような怪我をさせることになって…」
「いいえ!私が勝手をしてしまったせいです!シスターオルミエーヌのせいでは…ましてセリアナのせいでは!」
「リーン」
静かな声に制される。
「今回の事件は、私の監督責任です。シスターセリアナが、狙われるかもしれないことを知っていた。それでいて貴方を指導係につけた。冬越の祭り、修道院に人は手薄になる…とはいえ、道中の道も険しくなるような、こんな時期にまさか襲ってくるとは…いいえ、それでも予想しきれなかったはずがない。シスターセリアナを預かってから、驚くくらい何も無かった。それに慢心した、私のせい…私の責任です」
ふ、と息をこぼされる。
「何らかの備えを行うべきだった。にも関わらず怠ってしまった。どうあっても、これは、私の咎なのです」
「シスターオルミエーヌ…」
何かを言いたかった。
でも何も言えなかった。
そんなことないと、誰にも、責任なんてあるはずないと、伝えたいのに。
「今回の件を踏まえて、決まったことがあります」
静かな声が続ける。
この声は。
感情を抑え込んでいる声だ。
とても怒っている時、とても悲しい時、そんな強い感情を制御するための声だ。
その声が告げる。
「シスターセリアナは、教会本部預かりとなることが決まりました」
この方はとても、優しい方だ。
そしてこの方は。
とても、責任感の強い方だ。
誰も。
シスターオルミエーヌも。
セリアナさえ、悪くないはずなのに。
こんなに世の中は、どうにもならない、ままならないものなのか。




