30 祭りの朝に
いよいよ冬越の祭りがやってきた。
といっても、ここまで来ると緑の組紐未満はやることはない。
修道院でお留守番である。
冬越の祭りの期間は三日間。
院では、初日と二日目が炊き出しと希望者向けの就職斡旋。
最終日が朝から作ったジャムや保存食、刺繍のマーケットと炊き出しだ。(最終日は炊き出しは少し小規模。その代わり食うにこまっている人達に保存食なども分け与えている。)
なお冬越の祭りのクライマックスは、最終日の花火だ。
前世ほど華やかな色が出るわけではないけれど、夜空にぱっとひかる光はやっぱり見てて心が踊る。
といっても修道女のみんなはその前には院に帰ってくるのだけれど。
普段はなかなかお目にかからないホットワインを片手に夜空をみんなで見ることは許される。
それはお互いを労り合う時間なのだ。
「で、私らがここでお留守番の間、アンタは祭りを楽しんでくるってーわけね」
「ずるいですわずるいですわ!」
「…」
「あ〜〜あ私らはここで静かにお祈りを捧げてるってーのに?その間お祭りですかぁ」
「わたくしも行ってみたかったですわ!」
「…」
「いいわねーいいわねー」
「いいですわーいいですわー」
「よし、じゃあ私と同じように荷物持ちとして来るんであれば交渉してやんよ。まずは炊き出し用の芋、人参、燻製肉まとめて30キロ、持ってくれるんだよなぁ??」
「「ごめんなさい無理です(わ)」」
速攻手のひら返された。
そうなのだ。
本日は初日炊き出し日。ただ今時刻、午前三時。
組紐関係ない居候の私は見事荷物持ちとしてついて行くよ!!!
ちなみにこれは第一便に過ぎない…
他にも馬鹿でっかい大鍋とかも持っていくよ…
これを抱えてえっちらおっちら移動するよ…荷馬車あるけど…
修道院は小高い場所に(背面は険しい山と崖で、周りは雑木林になってる)あるから登り下りキッついけど…
ひ、ひとりじゃないからいいもん…
「私はいつも荷物持ちでついてくから知らんのだけど、君たちは今日どうするのかネ?」
「何その話し方…私達は普段と変わらずよ。でもいつもよりは掃除なんかは控えめなんですって。実質休養日みたいなもんらしいわ」
「水色の組紐以下は、年数も少なくて体力ない子も多いですから。ここで休ませる、という温情みたいですわ」
「まーそれでも最低限のことはしろってことみたいだけど!」
「なるほどね〜」
でも、とセリアナが続けた。
「ちょっとやっぱり羨ましいですわ。庶民のお祭りとか、見たことないんですもの。」
口を少し尖らせて拗ねる姿はぶっちゃけ超美少女。
でも以前みたいに壁を感じない。
この秋口から冬に掛けてで、お姫さまはセリアナになって、セーニャになった。
私の大事な友だちだ。
「慌ただしくて祭りどころじゃないけどね。まぁもし少し時間があったら、何かお土産見てくるよ。ビビアもね。」
「え?!」
「おー」
「て言ってもねぇ…大層なものは買えないけどねぇ」
「あ、私あれがいいわあれ」
「ん?なになに?」
「…蜂蜜酒。ちょっと飲んでみたかったのよ。甘いんでしょあれ」
「っふ!わかった!あんま大っきいの買えないけど見繕ってくるよ。セーニャは?」
「わ、わたくし?わたくしは何かしら…あ、じゃあ…もし買えるなら普通のちょっとした焼き菓子を!」
「焼き菓子?そんなんでいいの?堅クッキーと死ぬ程あるじゃん」
冬の間は死ぬほど食べることになるので、ごめんかと思っていたけど。
「そうじゃなくて…蜂蜜酒に合うものって思ったんですわ!もう!」
ぷ!
「ふふっく!そっかりょうかい〜〜じゃあ塩味のあるナッツ系がいいかなぁ〜〜」
「な、何ですの!その反応!」
「いいや〜〜うんうん、買ってくるからみんなで飲んで、みんなで食べようねぇ〜」
「なっ!」
セーニャが真っ赤になる。
当たり前のようにみんなで分け合うこと考えてんだもんね。あー可愛い可愛い。
「もう!なんですのなんですの!いつもからかって!」
「もう…この中身おっさんに揶揄う隙みせるあんたも悪いのよ…」
「わっわたくしのせいだと言うの?!」
「そーよ、だいたいアンタはねぇ…」
ここでビビアとセリアナの小競り合いになる。
ふたりは相変わらず喧嘩ばっかりだし、嫌味の応酬もする。
でも最初の時みたいな険はだいぶとれた。
前世のネコとネズミみたいな。
仲良く喧嘩しな!て感じ。いいな、こういう感じ。
ずっと続けばいいな。
この時は呑気にそう思って…そうなると根拠もなく信じてた。
祭りは色々なものを連れてくる。
それがいいものとは限らなかったのに。
初日の朝が近づいていた。
不穏な空気。
ここから少しシリアスターンに入ります。
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