28 司祭の問答がやってくる
定例となった朝の会議。
最近では手短にして、各自の勉強とする時間も増えた。
理由は…
「いよいよ司祭様の問答が行われるらしいわ」
セリアナが厳かに告げる。
「いつ?」
「冬越の祭りのあとですって。シスターオルミエーヌに直接伺ったから間違いなくてよ」
「わ~…」
「いよいよね…」
冬越の祭りとは、本格的な冬が来る前に行われる催しである。
厳しい冬を乗り越えよう!という趣旨の元行われる祭りは賑やかだ。
ここの街は寂れているが、それでもこの祭りは賑やかで楽しい。
色んな屋台が出る他、楽団も出たり、家々は思い思いの掛布を屋根や窓や下げて街を彩る。
勿論修道院なので、全体で何かあるというわけではないが、緑の組紐以上のものは何名かで屋台を出し、ジャムやクッキー、保存食品や刺繍入りのハンカチやタペストリーを売る。
その売上金は院の運営費になる予定だ。
また別働隊もいて、そちらは炊き出しと就職斡旋、場合によっては保護を行うこともある。
要するに冬越の祭り前後は、めっちゃくちゃに忙しいのだ。
「刺繍は出来たし、神聖歌も覚え切ったわ。あとは問答さえ上手く行けば…」
「刺繍、セリアナうまいもんね。歌も上手いし。刺繍の題材は何にしたの?」
「それらしいかと思って『女神アルターシアの慈愛』にしたわ」
「あーなるほど」
女神アルターシアは、月の神だ。
『アルターシアの慈愛』は太陽神ルーアンの求愛からはじまる。
美しい女神アルターシアを見初め、愛を求めるルーアン。
アルターシアも情熱的なルーアンの愛を受け入れ、二柱は夫婦となり、空の神、風の神、雨の神、という三柱の神も生まれた。
だが、月と太陽が側に同時にあることで地上は熱せられ、海は荒れ、地は割れた。
また新しく生まれた三柱の神も一所に留まり、より一層地は荒れた。
これに心痛めたアルターシアはルーアンを説き伏せ、二柱は昼と夜に住み分けることにした。
『御事が愛は我だけのものに在らず。御事の愛は命の巡りを助けるもの』
とはアルターシアがルーアンを説き伏せる時に言ったとされ、主要の説教文句になっている。
ちなみにその後、昼と夜に分かれたルーアンとアルターシアが空の神を支えた。
風の神は空があることで自由に動けるようになり、雨の神と共に世界に恵みをもたらしている。
ルーアンとアルターシアは黄昏時に相見え、ルーアンの惜別の涙が夕暮れ時の色となる、という話だ。
教会での説教としてよく使用されるのは、やはりアルターシアの言葉だ。
『愛は独りよがりではならないもの。真に皆を愛しなさい』というような意味で扱うことが多い。
割と説教としてもよく用いられるポピュラーな一説だ。
「ビビアは?どうした?」
「…タウロの花宴」
「…なるほど」
『タウロの花宴』も、割とポピュラーな題材だ。
冬の間、雪の中に眠っている春の神タウロが、使いの春告鳥の声で目を覚まし、花々が咲き、春が訪れるという話。
シンプルな話である。ただしポピュラーとなっているのが、刺繍のしやすさだ。
春の神タウロは本来、人の手では表すことのできない美しい女神とされているため、刺繍にする際は人型ではなく、代わりに美しい花として表すことも多い。
…つまり、花を散りばめて刺繍にすれば『タウロの花宴』と言える。
刺繍が苦手な修道女たちの救い手の題材なのだ…
お読みいただき、ありがとうございます!
土日は更新できないかと思います…
書き溜めてまたとうこうさせていただきます。
※あげられたら1話ずつくらいはあげたいと思います。
====================================
評価、ブクマ、ありがとうございます。
☆1つでも喜びますので、よければ評価をお願いいたします。
別連載もよければ、よろしくお願いします。
※息抜き分なので、短期連載予定です。
派手顔悪役令嬢はモブ男子に恋してる
https://ncode.syosetu.com/n7951hk/




