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01 あるはずのない出会い

習作です。不備がありましたら失笑ください。

 とある寒々しい北の街。

 そこにある修道院の厨房にて。


「…嘘、でしょ…」

「なんでこんなっ…今更!!!」



「「なんでヒロインがこんな所で芋むいてんのよ?!」」

 2人の美少女は原型を留めない顔で叫び

「頭大丈夫?」

 叫ばれた方は無気力に返した。




『ヒロインに異世界転生してたらしいけどそんなん知らんしとりあえずカマクラつくっとく』




 振り返ってみると、確かに小さい頃から何となく違和感があった。

 手紙じゃなくてスマホでメッセージ打ったらいいのに、みたいに頭にポンと浮かぶ時。

 そんな時は次の瞬間には、いやいやスマホでって何よ、と思ったり。

 やたらと達観してる部分があって、周りの大人達に「随分しっかりしてんな~」と言われたり、同年代からは気味悪がられてちょっと遠巻きにされたり。

 4つで両親が離婚した時も、母が不貞を働いたのを何となく察してしまって、貧乏な父について行ってしまったり。


「「それだーーーーーーーーーー!!!!」」


「ちょ、うるさ…」


「それよ、そこよ!本当はヒロイン母について王都にいくはずじゃ!成長して母の不貞に気づいて苦しんで、攻略対象との絆深めたりとか!!!」


「不貞相手が実は高位貴族で実の父親かも?みたいな匂わせがあったりとか!」


「え~…なにその街でやってそうな劇場展開…ひくわー…」


「「あんったの話しよ!!!!」」


「あはは~ないない…親父が貴族とか。あたしの親父は熊みたいな髭面親父だよ」


「くっ…!話が通じない…!!」


「でも違和感はあったんでしょ?!スマホとか使ってたんだよね?!それ日本「_____そこで何をしているのですかシスターセリアナ、シスタービビア」」


 ぎっ、と油切れを起こした人形みたいに、目の前でギャンギャンきゃんきゃん叫んでた2人が固まった。

 おお、人の顔って短時間でこんなに真っ白に変わるんだな。


「「し、シスターオルミエーヌ…」」


「貴方方は…自制や責任感というものをどう思っていらっしゃるの。それぞれ与えられた仕事をなんだと思っているのです」


 ぴん、とのびた姿勢と厳かな声。

 シスターオルミエーヌは一番古参の厳しい方だ。

 実質の取りまとめ役。厳しいけど、ハッキリ言うこの人あたしは嫌いじゃないんだけどな。むしろ好きな方。

 ただ苦手な子は多いみたいで…目の前の2人はそっちみたい。


「シスターセリアナ、洗濯籠を落として…こんなに中身がこぼれてしまっているではありませんか」


「……っ申し訳ありませんわ…」


 ぎゅっと服の裾をにぎりしめて堪えるように言っている。

 ちょっと煤けてしまっているけど、たっぷりとした綺麗な金髪だ。本来は気が強いんだろうな。菫色なのに燃えてるような目でギラギラしてる。


「シスタービビア、貴方もです。掃除道具をこんなにちらかして…誤って誰かが足をかけてしまったらどうするのです」


「…申し訳ありません…」


 ぶすくれた表情で返している。

 態度と行動は全く可愛くない。

 にも関わらずだ。くりくりとした琥珀の目や、たっぷりつやっとした栗毛を1本に縛っている姿はまるで子りすがふてくされてるようで妙に可愛い。


 つまりだ。


 先程まできゃんきゃん騒いでたこの2人、とびっきりの美少女なのだ。

 ちょっとおじさんぽいと言われる自分は、ういうい可愛いじゃねぇか~反省しろよ~とつい絆されてしまいそうになる。


 だがしかし。


 彼女たちの目の前にいるのはシスターオルミエーヌ。

 鉄を通り越し、岩修道女といわれる御方。

 決してそのような愚行はしない。

 想像通り、ぴくりと眉のあたりを動かし、実際反省していないことを見抜く。


「…お二人共、言葉には真実が、誠実さがなければ全く意味は無いのですよ。それがなければただの音も同じ。貴方方の謝罪は単なる風の音。反省がないようであれば、『祈りの間』での修練に臨んで頂く他ありません。」


 厳かに告げられた一言に2人が揃って「「ひっ!」」と声を引き攣らす。

『祈りの間』と言えば聞こえはいいが、ここは石造りの部屋だ。

 端的に言って滅茶苦茶死ぬほど寒い。

 ただでさえ最北に近い地域の、なんなら冬は雪がめっちゃ降る地帯での石造りの部屋。(暖房器具なし)


 そこでの修練は、死ねる。


 場合によっては本格的に肉体的に死ねる。

 ちなみにこの場合の修練とは、女神の像の前で一心不乱に祈ること。

 ただし時間は最低2時間から。普通に真冬は死ぬ。

 今は秋口だからまだましだけど、石の床にひざをついて何時間…うん、筋肉的に死ぬな。

 シスターオルミエーヌは厳しいけれど無茶を言う人じゃない。

 恐らくこの1件以外にも色々やらかしてんだろうなぁ…

 美少女だけどなんか胡散臭い話してたし、ほっとこ。

 …といつもなら思う所なんだけど。


「失礼、シスターオルミエーヌ。発言をお許しください」


「リーンさん…どうぞ」


「ありがとうございます。あたしは彼女たちを知りません。彼女たちも見慣れないあたしを見てびっくりしたんじゃないでしょうか?勿論だからって仕事道具と仕事投げ出すのは問題外ですけど…先に新人さんに挨拶行ってなかったあたしも問題あるかなって」


 そう、実はあたしはここに来たのは久々だし、新人が2人入ったってのも聞いてた。

 なんなら先に挨拶行ってもよかったんだけど、面倒くさがって先に厨房に来てしまったのはあたし。

 まぁ後でもいいかな、て思っちゃったんだよねー。普段だったらそんな問題も起きないし。


「彼女たちから見たら、部外者がいきなり厨房にいたって状況ですよね」


「…」


「しかも、あたしこんな格好だし」


 ぴらっと自分の服をつまんでみせる。

 その服は修道服ではなく、普通のよれた木綿生地だった。

開始時年齢

リーン(15)

本当はピンクブロンド。手入れもしてないのでくすんだピンクに見える。緑柱石のような瞳。

薄汚れてるのでそれなりだが、手入れすれば美少女、らしい。

乙女ゲーム?やったことないけど?


ビビア・ウォード(15)

ヒロインいないし、私も美少女だしいいじゃん!と成り代わりを計画。大破産。

つやつやな栗毛。琥珀の瞳。

黙ってればロリ美少女。


セナリア・シュレーゼン(16)

元公爵令嬢。じつは記憶を取り戻したのはビビアの攻略が始まってから。セナリアとして生きた記憶と性格の方が強く、見事悪役令嬢ルートを走ってしまった。何故だ!

見事な金髪。菫色の瞳。細いのにグラマラス。

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