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第21話 最終決戦直前!:揃ってくださいっ!勇者パーティー!!

 《魔皇サトラレ》と画面上の表示が出ているのがまさに魔王であったが、その出立からして一目瞭然である。

 王冠こそ被っていないが、頭から生えた黒鉄に光る一対の捩れた山羊角は勇壮な形を描き、皇帝の威厳を体現している。

 魔族特有の青い肌に真紅の瞳。その美貌は10年以上も前に人気を博した海外の俳優、スタントから操縦まで自分でこなしてしまうあの人の若い頃がモデルであろうと推測された。

 背には翼竜の翼持つが、コートのようにたなびく黒い外套を身につけていた。

 

「”ブラックサンライズ”の魔王がベースだな、あれは」

 

 敵を観察していた熟練プレイヤーのガガガが呟く。

 ”ブラックサンライズ”は『クリハン』の拡張パックの名前だ。


「それだけじゃねえ! 左の暗黒竜アスコットは”バハムート戦役”の竜王だし、右の淫魔女帝コフレは”地下大墳墓”のやべぇ奴じゃん!」

 

 堕天皇ゼロが取り乱しながら悪態をついている。

 ”バハムート戦役”も”地下大墳墓”は期間限定で公開されたイベント名である。


「3体とも倒す必要などないんじゃない?」

 

 その声は抑えられていて大声ではなかったが、レイドの全員がハッキリと聞こえる美しい声だった。

 指揮を担当する†てぃふぇす†だ。

 

「両翼にいる竜と女帝はヘイトをとって引き剥がし、中央の魔皇の核に停止コードのついたレーヴァテインの一撃を打ち込めば我らの勝利だ」


「け、賢者か! そうか、さすがは《賢者》の称号持ち」

 

「なんてドライな。いや、それしか出来ないのは確かだ。まともにぶつかれば、このメンバーでもあっさりとやられるだろうしな」

 

 ゼロとガガガが並んでそう評していた。

 仲が悪いのか良いのか、よくわからない二人だ。

 

「左の《暗黒竜》には仏素ふっそ指揮で3パーティー、右の《淫魔女帝》にはHartz指揮で3パーティー。中央の《魔皇》には黒丸零式が先陣を切り、私らが後詰めする」


「戦力の分散は悪手じゃない?」

 

 第五帝釈天のパーティーで指揮を取っていたあぶにゃんが疑問を口にする。


「第五帝釈天との戦闘を分析するに、Xは1キャラしか操作できていないわ。《魔皇サトラレ》を操作するなら、左右のレイドボスはAI操作に指示出しがやっとでしょう」

 

 そのまま、パーティーの割り振りの指示を出す。視覚的に割り振りが見えるのでわかりやすい。

 

「左右で押さえている間に《魔皇》の核に停止コード付きのレーヴァテインを打ち込むことが勝利条件よ。レイドボスのように倒さなくていい」

 

 黒丸零式や堀内涼(本人)、そしてあぶにゃんらをまず見る。

 

「中央先手に黒丸らお願い。《魔皇》への道を切り開いて。あなたたちが攻守共に私らのトップパーティーだから」

 

「でも、《魔皇》に彼女らを入れた2パテで挑めるというの?!」

 

 あぶにゃんがツバサ໒꒱とすとらいかぁを見ながら聞いてきた。

 

「心配ない。もう1パテの不足分はもう補充される」

 

 †てぃふぇす†がそういうや否や、階段を上がって人影が現れた。

 

「バッドさん!!」

  

 その人を見て、両翼から声が上がる。

 ツバサ໒꒱が見ると、小剣を両手に持った黒尽くめの怪しい人物だ。ザ・忍者といった感じか。

 

「バッドガイね。一級建築士で手堅い戦いをする実力者だけど、リスク嫌ってここには来なかったはず……」

 

 ツバサ໒꒱とすとらいかぁの横でリカエルがそう説明してくれた。

 

 その後にも人は続いた。

 メガネをかけたロリロリなドワーフの女の子、白銀の装備の大楯の聖騎士、いかにも魔法使いといった出立の紫のトーガを纏った女性、背の低いハーフフットの戦士……そして、最後に現れたのがとしひこだった。

 

 ツバサ໒꒱がニンマリとする。

 彼らは間に合ったのだ。最終決戦を前に。

 

「ほらほら、同時並行でデータをバックアップするっスよ!」 

 

 眼鏡ドワーフの少女がみんなにそういうと、全員の体が光り始める。彼女の名前を見るとルドラとあった。

 ドワーフの少女は小さく当たり判定が少ない上に、敏捷で頑丈で死ににくい。現場に足を運ぶ彼女が選んでいたのは合理性がある。ドワーフは技術の象徴でもあった。

 

「カクオン技術顧問のルドラっス。外付け分子メモリーにここにいる全員のアバターのバックアップが取れるようにしたっス」

 

 その言葉を引き継ぐように、紫衣の魔法使いネーネが全員に言った。


「アバターの再読み込みには少し時間がかかるけど、対象となるアバターが破壊されたままのうなってまう事象は、これでのうなった。みんな存分に戦うてや」

 

 声だけは鎗田部長のものだ。彼のクリハンでのアバターは女性であった。エクスカリバーをアーサー王に与えたマーリンのような立場を狙っていたと事前に鎗田部長はつばさと俊彦に話している。

 

 そう、つばさが俊彦に提案したのは、鎗田部長と会わせて協力を仰ぐことであった。

 夕食も早々につばさは家に帰ると、YAMATOに入り、俊彦と待ち合わせをした。

 当然、魔王としひこがくまぽん(女子)と接触したことは鎗田部長とルドラの知ることとなり、すぐに例の白い部屋で彼らは会うこととなった。

 

 そこで提案されたのが、ハッカーXに対抗しうる俊彦の優れたプログラミングでアバターのバックアップを取れるようルドラと体制を組むことで、ここまで時間がかかって遅れていたのである。

 

「クリハンのようにリスポンスポットで即復活とはいけへんが、現実世界に悪影響を与えんと再生可能や」


 となれば、各人の動きが変わってくる。よりギリギリを攻めることができるのだ。

 今までの萎縮した戦い方では無く、真の実力が発揮できると知り、レイド参加者全員から歓声が上がる。


 前線にはバッドガイと白銀の聖騎士が加わった。白銀の聖騎士は第五帝釈天と表示されている。彼くらいになると、さまざまな状況でのデバグ作業に携わるため、予備のアバターがクリハンにいくつもあったのだ。YAMATOでのアバターのデータは破壊されたため、再申請やら紐付けやらで時間がだいぶかかっての復活であった。

 第五帝釈天は黒丸零式やあぶにゃんらとハイタッチして最前線の位置に着いた。


 一方、ツバサ໒꒱とすとらいかぁの横にはハーフフットの戦士フェリンスが来た。小柄ながらも渋い顔立ちだ。

 

「つばさと綾音ちゃんはぼくが守るよ」

 

 その声を聞いてつばさは驚いた。

 

「お父さん!?」


「心強いやろ? 貴義は†てぃふぇす†の守護で鳴らしたクリハンの猛者やさかい呼んどいた」

 

 女魔導師ネーネこと鎗田部長がそう言う。

 そういえば、鎗田部長はつばさのお父さん貴義の学生時代の親友であった。

 しかし、その父が†てぃふぇす†と繋がっていたという意外な事実につばさはクラクラした。

 

「久しぶりだから上手くやれるかわからんけどね」

 

 フェリンスはそう言うが、振り回す小剣の軌道は青く光り輝き、只者とは思えない。

 構える盾は冷気を伴い、周囲に白い靄を生じていた。

 

「敵意あるものが近づくと青う光る剣の噛み付き丸オルクリストに、竜のブレスをも防ぐ太陽の前に立ちし冷やす楯スヴァリン」

 

 ネーネが感心したようにフェリンスを見ながらぼそりという。

 

「その昔フェリンスがかき集めた厨二妄想的強力装備は今では修正されて手に入らへん逸品揃いやさかいな」

 

「厨ニ言うなよ」

 

 フェリンスがネーネに肘鉄を入れる。

 この二人は学生時代の親友であるという言葉は本当のようだ。

 

 そんな中、指揮を執る†てぃふぇす†が珍しく満足そうに笑みを浮かべた。

 

「勇者パーティーも揃ったし、そろそろ安全地帯を出て魔王攻略といこう」

 

 クールビューティーから放たれたその言葉に周囲が驚いた。

 

「何言っていやがる。《勇者》は現れてないし、《義賊》は逝っちまっただろうが!」

 

 横から堕天皇ゼロが食いついてきた。

 飛びかかりそうな勢いだったので、その肩にガガガが手をかけて止める。

 †てぃふぇす†はそれに怯むような態度は全くせず、むしろ先生のように穏やかな口調で返した。

 

「あなたこそ気がついていないの?」

 

 困ったような顔を†てぃふぇす†は見せたが、すぐに納得したように表情が変わる。

 

「確かに私も最初は気が付かなかったわね。別にピロリンと音が鳴って知らせてくれるわけでもなかったから」

 

 そう言ってネーネの方を†てぃふぇす†は見た。

 

「せや。《魔王》が出現したさかい相対する者たちも出現することになる。それが『このすべ』の仕様や」

 

 外観は美女魔導師なのに、声だけ男の鎗田部長なのだから違和感がある。


「すなわち、《勇者》、《聖騎士》、《聖女》、《賢者》、《義賊》、ほんで《戰乙女》の6人がYAMATOのシステムから選出され、《魔王》顕現中におることになる」

 

「何が言いたいんだ? そんなことは知ってるぜ。そこらの嬢ちゃんとは違うんだよ、俺様は」

 

 ゼロの悪態にネーネは大人な対応で落ち着いていた。

 

「つまりやな、通常の復活でのうてアバターが消滅する現在、欠員が出来たら新たに別な者に称号が移るんや。第五帝釈天が消滅した時にガガガ君に《聖騎士》が移ったように」

 

「だから、何言ってやがんだって」

 

「待て!ゼロよ、自分のステータスを確認しろ」

 

 ネーネに食いつきそうな堕天皇ゼロの肩にガガガがまた手をかけて引き戻す。

 

 舌打ちしながらゼロは自分の眼前にステータスのウインドウを開き、そして目を見開いた。


「なんだと? ……この俺様に《義賊》の称号が!?」

 

 悪態ばかりのゼロだったが、このときばかりは嬉しさに顔が緩んでいる。

 

「やっと気がついたのね」

 

 †てぃふぇす†が美少女の顔でほくそ笑む。

 

「そして、魔王を倒す《勇者》も揃った」

 

 一同に驚きが走る。

 

 レイドの全員に聞こえるよう回線の中で†てぃふぇす†は紹介した。

 喜んだツバサ໒꒱がしがみつくように腕を回している後から合流してきた最後の男を。

 

「《勇者》の勇者としひこ君よ」

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