青き風
「なぁ黒木お前だろうなぁ」で、と続ける。
夜の部室「なんでいるんだ?栗橋それも黒木に銃口を向けて、まるで俺たち互いに武器を向けてるみたいじゃないか」すると、栗橋が「あんたじゃなくて、黒木に向けてんのよ」はぁと肩を落とす。「なぁ黒木もうやめねぇか?これ以上猊下ってやらにこいてもいいことないぞ?」
さっきに満ちた目で俺を見て「ダメよ!「真の救済」のためには人類には滅んでもらわないと!そして小泉!あなたは私が復讐する!師匠である藤原兄にかわって!」真の救済、それは猊下と呼ばれる男が執筆した本の名前、それは恋愛小説などではない。
「ま、そうなるわな」すると黒木は、大量の電子を利用して「電磁波結界!展開!」絶対零度気な顔をした栗橋が吹き飛ばされる、結界内には僕と二人のようだ。「僕タイマン嫌いなんだよね」「嘘をつくな!」すごい速度でまっすぐこっちに走ってくる黒木を、交わして、ブラスターを数発浴びせるが、全く効かない。
ならばと結界にとある物をぶっかける、砂糖水だ、解除される結界。
大きく体力を削った。あとはこっちのもんだ!
と思ったのもつかの間、彼女は電磁波結界を三重に張っていて、容易いものではなかった。
一瞬 世界は大きく減速したが、次の瞬間痛みと引き換えに現実の数倍の速度を体感したような気分になる。そして泥臭い戦いは幕を開ける。
砂糖水は、もう効かない。理由は単純相手がその手を知っているからである。だから試したことの無いもうひとつの方法をとる。
僕は走り出す、彼女と対極の方向へ。
その間にまた液をこぼしながら全力で大きく円を描くように逃げる。そうして、強塩酸が入っていたビーカーを先程の砂糖水のようにかけるような動作をすれば、彼女は強力な電気を走らせた………のが罠だ!強力な電解質の物質のせいで、大量の電力を消耗してしまう。
畳み掛けるように、ボルトロックブラスターを取り出して数発 間髪入れずに発車する。
そして電磁波結界を維持するだけの電力を削ぐことに成功したのか、電磁波結界は破られた!しかし接近するも、まったく歯が立たない。
空気壁が僕にぶつかって吹き飛ばされる、コンクリートに打ち付けられる。なかなか痛い、もう一回立ち上がって、空気壁を横に走ってやり過ごす。「あなたたちは私たちを夏に降る雪のように不自然だと言うわね、あなたもそう思うの?小泉」解りきったことを「夏に降る雪なんかねぇーよ」そして走って接近ナイフを振り下ろす。なかなか相手との勝負に決着がつかないまま膠着状態へ持ち込むことに成功する。
しかし僕は自分の体力は言うほど使ってない、そのため少しずつ押していくことに成功した。そしてブラスターとナイフの連鎖攻撃によってついにその護身結界を突破することに成功。(砂糖水でやろうとするととんでもない量が必要なため、護身結界はこうやって破る)
最後の足掻きとでも言うように、大量の空気壁で応戦されてしまう。なので僕は、
それを利用させてもらうことにした。
本来、空気壁とは害のあるものではない。
ただの壁だ。つまり、触ったりするだけでは害がない…なら!
空気壁に乗ってしまえば良いこと。空気壁はその音で場所が判断できてしまう。
それをもとに壁の上に飛び乗りながら相手に今まで無い角度から接近することを可能にした。
黒木は僕の方向に向かって空気壁を撃つが、この方向では、所謂「悪手」というものである。
そうして吹き飛ばされることなく、寧ろ反対側に回り込まれた黒木は動揺を隠せないまま…吹き飛ばされ、意識を失う事となる
さてと……僕は黒木が来たであろう道を辿って地下へと向かう。それには栗原も一緒だ。
そして最後一人しかいなくなった地下施設で、
その男、猊下は居なかった。
誰がいたかと言うと………「たすけてくれ!たすけてくれ!」命乞いをする惨めな騎士だった。「いいや、だめだね」撃ち殺した。何故か栗原はなにも動じていなかった。むしろ嬉しそうでもあった。ここは教会…多分救済教とやらの、なにも神々しくないこの地下施設には、彼らが地下に潜らざるを終えない理由。異能犯罪防止法というものがある。これは日本だけの法律ではなく、国連勲章や国際法にも明記された「能力者を人間として認めない法律」という差別的な内容の法律である。これは大戦前期に定められた。そういったものの改正を目指した努力が見られるが、殆んどが脳筋なのか、武力以外に訴えることを知らないようである。
栗橋はそこら中の物をあらかた漁っていた。
数日後、大潮市国防軍病院。
「よう、不景気な顔してんな」病院で寝かされていたであろう黒木が「そりゃあんなことがあったあとで景気が良さそうな顔はしないわ」そりゃそうだ、そうして黒木はちょっと悲しそうな顔をして、「私は殺されるわ」と言うので「いや、殺されないよ」は?という顔でこっちを見るので僕はここ数日間のことについて語りだした。
二日前
「小泉君、よくやった!」珍しく怖くない笑顔を見せる波崎さん。ところで、と彼は続けて「まさか君の友人だったとはねぇ」押し黙ってしまう。「僕は優しいから君に二つの選択肢をあげよう、一彼女を生かして囮として利用する。二彼女を殺して君の復讐を果たす。さぁ選ぶんだ」
僕の回答は勿論・・・
現在
「というわけで、はい君囮」と告げると「ノリが軽いっ!」涙目で訴えてくる。「てか話のなかにあったあんたの復讐ってなんなのよ!」
「俺の両親はな、代々木事件の時からずっと寝た切りなんだ」
場が凍る。
「まぁ気にすんな、お前だって大事な人が死んでる」ちょっとだけ、場に温度が生まれる。
藤原さんや、.あんた、また俺に宿題を残したな…そう、あのとき最後あいつは「これでいいんだ」といったあとでこういった「生きろ!小泉!お前は俺の分でもお前の両親の分でもいい!人よりも生きろ!」と、半ば強制で約束させられた、たがそのお陰で今自分が生きていることを考えればありがたいもんー でもないな
「なんで私だとわかったの?」黒木が聞く。
「最初から解ってたんだ、君が一年前、僕の病室に入ってきたとき、居るはずもない「幼馴染み」と名乗ったときから」そう、こいつはそんな奴だったし胡散臭かったが、気のいいやつだっただからそうじゃないと信じたかったのだ。
「なんで、そういうことにしたの?」と続けてきく、「殺されると思ったからさ、真っ向に否定するとめんどくさそうだったし、第一記憶喪失だということにしておけば、殺される可能性はぐっと減るからな」もう黒木もすべてわかっていたんだろう、「俺からも質問だ、お前真の救済なんて全く思ってなかっただろ」すると目をそらして「そんなことどうでもいい」とボソッ呟いた後に「旧時代の人間達の後始末が必要だと思ったのよ、またあのままにしておいたら大戦と同じようなことが、遠くない未来に起こるわ」
ああ、そうだなと相づちを打つ
病室を出て廊下を歩くと「なんだぁ、いたのか足利」すると「お前はどうやら悪運だけ強いようだな、戦友」「そういわれて光栄だよ、北京解放戦の英雄さんや」少々小話をして帰った。
「そういえば、某国はよくあの情報をつかみましたね」秘書が波崎に言う「まぁ某国だからねぇ、政治的打算の上だよ。」
その日は栗橋にお茶に誘われていたので中央駅近くのカフェにいった。
「お互い大変だったなぁ」と言えば「そうだったわね」と返す。「それよりも、あの日部室で君は何を探していたの?」と聞いてみると「黒木が首謀者である証拠、つまりはあの本よ」
なんでお前がという前に
「私は英国特務機関MI6よ?今回の情報を政府に流したのも私たちってわけ」諜報員なのかよ…もうなんでもありだな。
ふと紅茶を啜りながら道を見れば、真新しいクレーターとそれを直す工事が進んでいる。
「英国政府の目的は何だ?」と言わないだろうが聞いてみることにした。「これから一世紀の間は旧超大国と私達両国との間での壮絶な覇権獲得競争になると英国政府は予想している。今回の大戦でコモンウェルス各国が疲弊した中で英国は海外派遣軍の軍事的にも政治的にも優秀な将軍達によって、損害どころか利益を被った。だからインドや中国、そしてアメリカでさえも経済的な支配力を深めつつある。一方で日本は大戦の実質的参加が遅れに遅れ、それも米国が過去、そういう憲法を作っていたためだったとあっては参戦要求を出したアメリカ本人が面食った、寧ろそれが功をそうして主要参戦国にしては人的被害20万人という破格の数値を叩き出してしまった。つまり真の意味での大戦の勝者は私達」超大国アメリカそしてロシア
かつて一世紀の間世界を支配した両国にも、終わりが近づき、現在では両国ともに経済破綻に追い込まれている。というか、こんなペチャクチャしゃべっていいものなのか?
「英国政府としては、同じく「返り咲き」しようとしてる国に借りでも作っときたかったんでしょうね」といって、カップを持ち上げ傾ける。彼女は続けた「英国政府は過去のあらゆる事象や奇跡と呼ばれた事を再検証してみた、それもあらゆる観点からね、すると一つの結論にたどり着いた」
「一つの結論…?」と訪ねると
「神の存在よ」ポカーンとしてしまう。
「神は能力人を使って人類に試練を与え続ける。これはきっとこれからも続く、「新しい能力者」によってね。それを英国政府は「神の子」と名付けた、そして神の子は先日インドの赤ちゃんとして発見された。王立海外派遣軍はこれを処理しようとしたんだけど…思わぬ抵抗を受けて、二百人が死亡。その能力は自然災害や超音波となかなかえげつない能力。」もう事例が出ているのか…
「今は転換期、これから先の人類は彼、彼女等を兵器転用しそのあとどうなるか、それを歴史を知るあなたに言えばどういう結末を迎えるか、は、解るんじゃないの?」
そう、つまりは、まず「神の子」をめぐって第四次世界大戦の勃発。そうして今回のような人類に対する反乱としての第五次世界大戦という風に、永遠に争いは続く。その全てに人類は勝利を続けなければならない。
「そこで_最もシンプルで問題を根本的に解決する方法を結論に至った。日英中印米仏独伊露での会議での私達、英国政府の結論は、神殺し。これを達成するため、現在極東での覇権を確立させた日本と関係を持つ。全ては次世代のために。」
すべてを終わらすため、神殺しのための戦いは、人類最長で最後の絶滅戦争はもう終局へと、知らず知らずの内に向かっていた。
そうして、白きカップの金属音が響き渡るだけの平和な日々など端から無かったのだと実感させられた。
「英国政府は何を考えているんだ」素直にそう思った伏見。いまは超大国へ返り咲いた英国に敵はいないだろうに…日本と英国は第三次世界大戦の後力を大きくつけた両国。これから衝突することもあるのに、今回はその衝突することもあろう存在を助けたわけだ。
「首相!」あわてて外務大臣が走ってくる。
「英国政府が緊急首脳会談を要請してきています!」
おわったぁ!