崩壊と希望(2)
「痛っつ…!」
目を覚ますと突き出した岩の上にいた。
どうやら火山の壁から突き出した岩に当たった時に体が岩の上に乗ったらしい。
上をみると蟲はもうどこかにいったらしい。
それにしてもどうしたものか。上に登れそうにない。
「どこかに脱出する方法ないかな。」
上を見渡しても行けそうな所はどこにもない。
ただ、後ろを振り向くとバラバラになった空間の中に階段がつながっている。
奇跡を信じて良かった。
問題はその階段が下の火口へとつながっていることだが。
(行くしかないか…)
階段を下っていく。
階段は一方通行のように下ったそばから消えてゆく。
もう、後戻りは出来ない。するつもりもないが。
この階段の先には何か、僕の世界を変えるようななにかがあるような気がするのだ。
火口の周りに着いた。マグマの熱気が顔に当たる。
このままでは熱にやられそうになる。
逃げるように洞窟のなかへと入るその中には…
刀が飾ってあった。鞘は赤く、柄は青い。
その刀を見ると希望に満ち、近づきすぎるとその希望に焼き尽くされそうな錯覚を覚える。
(これは、夢でみた刀とそっくりだな。)
刀に吸い寄せられるように近づく。
この刀の希望の炎には焼かれてもいい。
この希望の炎には僕を焼き尽くし、生まれ変われせてゆくようなエネルギーを感じるからだ。
刀の柄を手にとると僕の世界は炎に包まれ、エネルギーの奔流が渦巻き僕を取り巻く。
目の前の炎が裂け、そこから巨大な竜が出てきた。
(ほう、今回の夢守り人は汝か。)
その竜はルビーのように深紅であり、目はルビーそのもののようだ。
そのまなざしは竜にしては優しく、それでいて威厳がある。
(妾は炎の竜女王。炎と希望の夢守り人となろうとしている者よ。汝の名は?)
「僕はカカ・カプっていいます。炎の竜女王さんは何者なのですか?」
(妾は炎の夢守り人を導き力を貸すもの。世界を守るために封印されたものの一体。カカ・カプよ。汝は世界を救わなければならぬ。さあ!夢をいえ!世界を救った暁に叶えよう。)
「夢…すみません。思いつきません。」
(なに?)
実際僕に夢なんてなかった。
いつか夢を持つことを夢見ているという事でも良いのだろうか?。
(ほう。ははは!汝は夢を持つことが夢か!良いだろう。ヒトの中で最も希望に満ちたものよ!汝と契約しよう!)
ちなみに夢はいつでも変えてもよいぞと最後にいわれた。
もしかして頭の中をのぞかれてるの!?と言おうとする前にまた目の前が炎に包まれた。
気がつくと火口の外に出ていた。
「助かったのかな…。それにしても変な幻覚だったな。」
(幻覚ではない。刀を握っておろう?)
突然頭の中で先ほどの竜女王の声が響く。
それに驚いていたら、竜女王は落ち着いた声でいった。
(のお、カカ。今蟲の大群が向かっておる。このままでは食われてしまうぞ?)
「嘘!?早く逃げなきゃ!」
(何を言っておる。汝の刀は飾りか?その炎の刀には蟲に属する者達を倒す力がある。さあ、刀を抜け!)
言われるがままに刀を鞘から抜く。
刀は炭のように黒かった。
蟲の大群がどんどん近づいていく。
迷っている時間はない。刀を構える。
(さあ、その刀に夢を乗せるのじゃ!希望の焔≪ほむら≫で焼き尽くせ!)
刀に想いを乗せるように集中する。
そうすると、徐々に刀身が熱を帯びてきた。
熱が最大になったと思った瞬間に刀を蟲の大群に向かって斬りつけた。
「炎夢≪フレアドリーム≫―竜火斬!」
大きな炎が蟲達を焼き尽くす。
「やった!」
やはり間違っていなかった。
この刀は僕の世界を劇的に変えていくと確信する。
安心するとなんだか眠くなってきた。
(ふむ、夢力を使いすぎたようじゃな。…他の夢守り人が近くにおるから安心して眠るがよい。)
その言葉とバリバリというヘリコプターのような音を聞きながら僕は眠りについた。