崩壊と希望(1)
ハッ、といつもの自分の部屋で目が覚める。
(何だったのだろう?何か渡されたような気がするんだけど…)
自分の手を見たが、何もない。
(当たり前だよな。夢だし。)
夢なんてそんなものだ。何か意味ありげな夢は混沌としていて本当は意味なんてない。
ふと、時計を見るともう出かける時間だ。用意を済まして朝食のために階段を下る。
「おはよう。母さん。」
「おはようカカ。今日も朝練?頑張ってね。」
「うん頑張るよ。ありがとう。」
何気ない会話を交わす。
母さんが食器の洗い物をしているから、兄さん二人は既に出かけたのだろう。
いつもの日常。大きな事件は身近になく、ニュースの中の事件を対岸の火事のように見るそんな日常だ。朝食を済ませ、家を出て、学校で部活の朝練をする。これが僕、カカ・カプの日常だ。なのに…
「えっ…」
―玄関の先には破れて、めちゃくちゃに貼り付けられたような世界が広がっていた。
道路の先がいきなり砂漠になっていたり、上空に逆さまのどこかのビルのロビーが映っていたりしている。
そして所々が何もない真っ暗な空間が広がるのみの場所がある。
そして往来するヒトビトが何事もないようにどこかに行っており、途切れたところでヒトが消える。
僕が見ている世界は気の触れたヒトの幻覚なのか。それとも世界は元々このようなものだったのか。
一番恐ろしいのは上空に飛び交う蟲だ。
まるで本で見たトンボのような見た目だが頭はなく、大きな目がくっついている。
それらは音もなくヒトに近づき頭に張り付き頭の中に目を入れている。
ヒトビトはそれに気づかず、蟲が食べたあとの頭には傷一つついていない。
(アァ、ミタサレルナァ、ミタサレルナァ。ダガタリヌ。アナガフサガラナイ。)
蟲の声らしきものが頭に響く。その後に飛んでいた蟲が一斉に見てきた。
(アノエモノハ、キボウガタップリダ!アハ、アハ、キャハハハハ!)
一斉に大勢の蟲がこちらに向かってくる。
(嘘だろ!?)
蟲から逃げる。
あいつらに頭の中を食われてしまうと大事なものがポッカリと落としてしまうことが直感的にわかった。走ることしかできない。
砂漠の方向に走る。道は途切れているが飛び込むといつもの通学路に行くはずだ。
「あっつ!」
どういうわけか砂漠の中へと出た。
どうやら僕だけは見えている世界準拠らしい。そして蟲も砂漠に入ってくる。
(アハハハハハハ!キャハハハハ!)
―煩い笑い声が頭の中に響く。もう、足は既に限界だ。
このままだと追い付かれる。
それでも諦めまいと必死に足を動かす。目もかすんできた。
体は既に休息を欲していたが諦めるなと鞭を打つ。
また自分の信条によって苦しむこととなっている。
それでも自分にはこの苦しみから解放されるとための選択肢は思い浮かばず、頭の中では走らなきゃという使命感じみたものに支配されていた。
(…!?)
体が宙に浮く。どうやら足を踏み外してしまったらしい。
目の前にはマグマが広まっており、希望なんてないと大きな口を開いているように見える。
壁から突き出した岩に体をぶつけて僕は意識を失った。
ゆっくりと投稿する予定です。